つれづれの・・

ほほえみ
-　谷川俊太郎　-

ほほえむことができぬから
青空は雲を浮かべる
ほほえむことができぬから
木は風にそよぐ


ほほえむことができぬから
犬は尾をふりーーだが人は
ほほえむことができるのに
時としてほほえみを忘れ


ほほえむことができるから
ほほえみで人をあざむく

*　*　*　*　*　*　*　*　*　*　*　*　*

たった数年の回顧録

毎日　誰かが　叫ぶから

毎日　心に　届くから



回顧録と名付けるほど

分厚い記録が　書き記され



苦しみも　悲しみも

凝縮されて　残るようだ



誰かの声が残るのに

自分の声は　何処へ行った



誰かの思いが　浮かぶのに

自分の想いは　何処へ消えた



いつの間にか

新しい記憶に書き換えられて

新しい想いと　連れ添って

新しい回顧録を　記し始める

立ち直りの早い　心たち

オーニソガラム
花言葉　純粋、才能