古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン

2022-03-09 08:16:20 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー
巡回して、あべのハルカス美術館で開催中


事前情報なし、当日でも入館可ということで、大した事はないだろうと高を括っていましたが…

会場は押すな押すなの
大盛況!!

ロスチャイルド家など世界中のユダヤ系富豪から寄贈された名品を収蔵するイスラエル博物館

モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン、セザンヌなどがさり気なく展示されています

特に印象に残った作品は…
(写真はネット画像借用です)


ルノワール 「マントノン郊外」

写真はくすんでますが、実際見ると非常に明るい風景画
ルノワールの風景画って珍しくないですか…



ポール・ゴーガン 
「ウパウパ(炎の踊り)」1891年


ゴーガンのタヒチシリーズの一枚ですが初見です

「ウパウパ」とはタヒチ語で音楽あるいは楽器を意味するそうですが、いわゆるファイアーダンスですね

19世紀になってキリスト教がタヒチに入ると、キリスト教に馴染まないとしてダンスは禁止になったそうです
特にこのファイアーダンスは煽情的と思われたようです

画面の右に幼子を抱く白人の男(に見えた)はゴーガン自身でしょうか?


撮影可能エリア
もあります 



クロード・モネ 「睡蓮の池」
1907年

ポスターにもなっているこの絵は、蓮池に光が射している情景ですが、平面的画面に時間が止まったような不思議な感覚を覚える



フィンセント・ファン・ゴッホ 「プロヴァンスの収穫期」1888年



フィンセント・ファン・ゴッホ
「麦畑とポピー」 1888年


ポール・セザンヌ 
「湾曲した道にある樹」 
 1881〜1882年


ポール・セザンヌ 
「陽光を浴びたエスタックの朝の目覚め」1882〜1883年


ギュスターブ・クールベ 
「岩のある風景」 1872年



レッサー・ユリィ 「風景」
1900年頃

今回衝撃を受けた、レッサー・ユリイの作品です

夕暮れ時、川でしょうか、池でしょうか、揺れる水面に映る人家の灯り

しっとりとした情感が漂い感性をしげきします…

この作品は本来展示予定は無かったようですが、ユリイに対する日本人の反応で追加展示されたそうです


その反応を
引き起こしたのが…


「夜のポツダム広場」1920年

この作品は、生で見ないとその衝撃は伝わりません

雨に濡れた舗道のしっとりとした質感、お店の灯りが舗道で揺れている…



「冬のベルリン」1920年代

モード画のようなスタイリッシュな画面



「赤い絨毯」1889年

後ろ向きに縫い物をしているご婦人
窓の光よりなんといっても画面の3分の1を占める赤が鮮烈な印象を残します


作者のレッサー・ユリイ(1861〜1931年)は、プロイセン王国(ポーランド)に生まれベルリンで亡くなった、ユダヤ系ドイツ人です。

「レッサー・ユリイの肖像」
ポール・シュレンサー

ユリイは、内向的で人間不信、晩年は隠者のような生活だったそうです



19世紀末にドイツ、オーストリアの各地で起こった「分離派」という芸術革新運動があり、ユリイはミュンヘン分離派に参加した。
クリムトのウィーン分離派が有名ですね。
ミュンヘン分離派はフランス印象派の影響が強かったようです。

さて、「夜のポツダム広場」はゴッホの「ローヌ川の星月夜」に触発されたものだと思いますが…
(まったくの直感です)


ゴッホ 「ローヌ川の星月夜」
1888年

この作品を見た時、川面に映る灯りが特徴的でしたが、水の質感が無く乾いた印象でした…

ユリイの「夜のポツダム広場」は、雨に濡れ、しっとりた舗道に揺らめく灯りがなんとも艶っぽい
傘をさす紳士方の行方が気になる



「夜のポツダム広場」は、1926年に発表され、1933年ベルリンに設立されたユダヤ博物館に収蔵されました。
ナチスの弾圧により1938年に博物館が閉鎖され、以降ナチスドイツの帝国文化院地下室に眠っていました。
1945年に再発見され、1965年イスラエル博物館に収蔵されました。

数奇な運命をたどった「夜のポツダム広場」

この一枚を見るだけで展覧会の価値があります。



空也上人と六波羅蜜寺

2022-03-08 16:53:16 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー
画像では何度も観てきた、空也上人立像。

実際に拝観したのは初めてです。




会場は本館の特別5室。
東大寺の戒壇堂を二周りくらい大きくしたスペースかな。

空也上人立像をメインに、地蔵菩薩、薬師如来、四天王、閻魔大王、運慶、湛慶、平清盛などの仏像が並ぶ。



空也上人立像は高さは120cm程度ですが、その、リアルな表現と少し腰を折って、「南無阿弥陀仏」と唱える臨場感から他力本願の真摯な宗教性に心をうたれる。

四天王像は、天平の東大寺四天王に比べると下半身がボッテリとした表現。



運慶像


伝平清盛


空也上人立像は、一度はお会いするべきです。

常設展示と復元複製


雛人形スペースの犬筥(いぬばこ)
いい味出してます





「花下遊楽図屛風」は、江戸時代前期の絵師、狩野長信(かのう・ながのぶ/1577-1654)によるもので、国宝に指定されている。
復元複製が展示されています。


お昼は、上野駅のエキュートの台湾スウィーツの店でサッサッと…




台北式魯肉飯セット
意外に美味しかった(◔‿◔)


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絵画の復元修復

2022-03-07 22:27:33 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等カテゴリー

絵画の復元修復により、思わぬ画像が浮かび上がり話題になった作品がある。


ルネサンス芸術がフェレンツェで花開いていた15世紀、ネーデルラント地方(現ベルギー・オランダ)ではその後のルネサンスに多大な影響を与えた、油彩画技法の発明により、精緻な表現をもつ「ゴシックの写実主義」が頂点を迎えていた。


その最高傑作の一つが、ファン・エイク兄弟の「ヘント祭壇画」(1432年頃)です。


北方ルネサンスはサークルで解説


中央下が有名な「神秘の子羊と礼拝者たち」でイエス・キリストを表す神秘の子羊が生贄になっている。
2020年1月に修復された絵が公開された。


修復前の神秘の子羊
修復後の神秘の子羊


羊の顔を拡大すると…


顔のフォルムが
変わっています!!

実際の羊

写実的なのは、当然修復前の羊です。
しかし、ファン・エイク兄弟が生きていたネーデルラントの写実主義は、神秘主義的側面があるゴシック美術のそれです。


キリストを表す子羊が人面羊なのは神の化身だからでしょうか…


そういえば、もののけ姫のシシ神さまも人面です…



『復元プロジェクトを統括するエレーヌ・デュボワ氏は専門紙の取材に、子羊の本来の姿が明らかになり「皆が衝撃を受けた」と説明。本来の子羊は上塗り後の絵よりも「濃密なやり取りを見物人と交わしていた」としている。
ベルギー王立文化財研究所は声明で、プロジェクトによって「本来の鮮やかさ、細部の豊かさ、秀逸な色使いがよみがえり、あらゆる人が目にできるようになった」と称賛した。』そうです。


美術品の修復作業について

2022-03-07 22:17:26 | 日記風&ささやかな思索・批評カテゴリー


スペインパレンシアの

とある銀行。


建物の顔であるファサード

に刻まれた彫刻は1923年の制作。


家畜に囲まれた

笑顔の少女の彫刻。


一部が破損していた。




修復前
修復後



・・・・・・・




・・・・・・ヾ(*’O’*)/

子牛も変!!



タイトル画像は、
ヨハネス・フェルメール 
「窓辺で手紙を読む女」1657〜59年頃

復元修復前に、キューピットを塗りつぶした人物の審美眼は確かです…