古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

鳥獣人物戯画 やまと絵展

2023-09-08 17:00:52 | 日本美術の特徴

日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第ニ弾は、やまと絵の系譜
嗚呼絵『鳥獣人物戯画』です


鳥獣人物戯画は、甲乙丙丁の四巻からなる白描絵巻で、甲乙は平安時代の12世紀中頃、丙丁は鎌倉時代のものとされている
鳥獣戯画は画僧や絵仏師の白描図像の筆法と宮廷絵師の絵巻の要素も取り入れている


 
鳥獣人物戯画(甲巻)

誰もが一度は”本“で見たことがある甲巻、擬人化された動物が遊んだり葬式までやりだす
卓越した筆使いで、カエルやうさぎに命を吹き込み、動き出す驚嘆!!
カエルの口から吐き出された”気”のかすれた線、秋草の繊細な線を見よ




鳥獣人物戯画(乙巻)

乙巻は動物(空想も含め)を動物としてそのまま描き、描写は精緻で博物誌的、動きのある甲巻との対照が面白い





鳥獣人物戯画(丙巻)

丙巻はカエルと猿が主人公で甲巻をオマージュした前半と人間が遊ぶ様子を描く後半




鳥獣人物戯画(丁巻)

丁巻には人間だけが登場し、奔放な筆致で即興的に描かれている
丙巻丁巻は、「ばかげたおどけた」戯画、嗚呼絵(おこえ)の特徴が見られる


甲巻乙巻は、平安時代後期の高僧、覚猷(かくゆう)鳥羽僧正(1053〜1140)といわれてきたが何ら確証はない

同じく、鳥羽僧正の作品といわれる
『勝絵絵巻』は「陽物比べ」「放屁合戦」からなる、原物は既になく模倣が残されている
『勝絵』とは、勝負を競うさまを描く画題または春画(武士が武運のため春画を鎧の裏に貼った)の異称




放屁合戦絵巻 室町時代
15世紀 文安6年(1449)

『鳥羽僧正覚猷の筆と伝へらるゝ二巻の絵巻で一巻は放屁の巻、一巻は陽物くらべである、素画きの絵で人物鳥獣生々活動の趣きを写して筆致洒脱軽妙を極めてゐる、勝絵の名は、亀山院の皇后絵合せの時、勝つた方の画に名づけられたものといふ、然し今伝はるもの原本でなく模しである。』参照元『東洋画題綜覧』金井紫雲



『鳥獣人物戯画』四巻はぜひ
実見したいですね


平安時代前期は、岡倉天心によると『空海時代』で唐の密教文化を伝えた、その後『延喜時代』和風文化が起こり「やまと絵」が誕生する


その「やまと絵」が一同に会す『やまと絵』が10月11日から東京国立博物館で開催される


『鳥獣人物戯画』全四巻、『源氏物語絵巻』『信貴山縁起』『伴大納言絵巻』、『伝源頼朝像』の神護寺三像、『平家納経』を含めた三大装飾経など空前絶後の出展です








日本美術の特徴

2023-09-06 17:05:31 | 日本美術の特徴

日本美術の特徴を作品を通じて
見てみようシリーズ
第一弾は、水墨画から派生した
『禅画』です

仙厓義梵 ○△□ 19世紀


仙厓義梵 野雪隠図 19世紀

賛文の「人ハこんそふな」は、「人は来ないようだ」の意
細川護熙は、この絵を一番好きな仙厓にあげている


仙厓義梵 牛図 19世紀

賛文は「此牛妙妙」
お腹に仙厓印、牛は禅宗では悟りの象徴
それにしても妙妙です(⁠・⁠o⁠・⁠)


仙厓義梵 犬図 19世紀

「きゃふんきゃふん」とキャプションが…
子犬を繋ぐ杭は、浅くすぐに引き抜ける
『我々もすぐ引き抜いて自由になれる浅い杭に縛られているのでは』


文殊菩薩像 建武元年(1334)

仙厓が描くと
仙厓義梵 文殊師利菩薩図 19世紀
いや〜 すごいですね(⁠☉⁠。⁠☉⁠)⁠!
仙厓義梵(せんがいぎぼん)は、江戸時代後期(1750〜1837)岐阜県の農民出身で、美濃国臨済宗古月派の空印円虚について得度。武蔵国東輝院で印可。栄西創建で日本最古の禅林「博多聖福寺」の住持となり博多禅の伝統をまもる。
「厓画無法」(世の中の絵には法があるが、自分の絵には法がない)を標榜し、親しみやすい禅画を描いた。

仙厓義梵の前に、臨済禅中興の祖といわれる白隠慧鶴(はくいんえかく)がいる。白隠は、江戸中期(1686〜1769)静岡県沼津市に商家の三男として生まれた。当時、黄檗宗、曹洞宗におされていた臨済宗を復興し、現在も、臨済宗十四派は全て白隠を中興としているため、彼の著した「座禅和讃」を座禅の折に唱える。

白隠慧鶴 半身達磨図 18世紀
白隠慧鶴 慧可断臂図 18世紀

白隠は生涯一万点以上の禅画を描き「拙によって巧を超える」を標榜した。
ユルカワな禅画は日本独自です。
禅画は江戸時代以降の禅僧が描いた絵画を指します。
白隠、仙厓のユルカワ禅画の元は、室町時代の雪舟、雪村、祥啓などが描いた軽妙洒脱な水墨画ですが、平安時代に生まれた大和絵、そして画技の優れた僧侶が描いた戯画『嗚呼絵(おこえ)』とよばれる白描画にある。
さらに言えば、日本美術の最底流に流れる『縄文文化』があるような気がする。

続く

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泉屋博古館東京とオムライス

2023-09-06 11:31:23 | 絵画(レビュー感想)

泉屋博古館東京『楽しい隠遁生活』鑑賞

隠遁生活を楽しいと感じるのは東洋(中国)独自の思想で、道教の神仙思想の考えですね。
中国化した仏教『禅』にもその影響があり、『山水画』の誕生に繫がっています。
現代中国の『今だけ、金だけ、自分だけ』の拝金主義からは想像できませんが…


伝周文 山水図 室町時代15〜16世紀

周文は雪舟の師
書斎で瞑想?する人物が描かれている
周文の弟子の作品の可能性が高いらしい


長吉 観瀑図 室町時代 16世紀

長吉は、狩野元信の高弟
滝を観る二人のうち一人とこちら(鑑賞者)の目が合う
室町時代とは思えない鮮やかな色彩


田能村竹田 梅渓閑居図 文政10年(1827)

南画山水はどうも苦手です…



橋本雅邦 許由図 明治33年(1900)

『許由(きょゆう)は、中国古代の三皇五帝時代の人と伝わる、伝説の隠者である。 伝説によれば、許由は陽城槐里の人でその人格の廉潔さは世に名高く、当時の堯帝がその噂を聞き彼に帝位を譲ろうと申し出るが、それを聞いた許由は潁水のほとりにおもむき「汚らわしいことを聞いた」と、その流れで自分の耳をすすぎ、箕山に隠れてしまったという。』引用元ウェキペディア


岸田劉生 塘芽帖 昭和3年(1928)頃

池大雅の『十便十宜図(十便図)』
をオマージュしたと思われる
岸田劉生(1891〜1929)のほぼ絶筆です
 
【参考】

池大雅 十便十宜図(十便図)
明和8年(1771)



★★★☆☆

なかなかシブい展覧会
ぐるっとパスで入場



さて、ランチへ

洋食『麻布食堂』は高樹町ICの
西麻布側住宅地にあり、
分かりにくい場所でしたが、
汗をふきふき到着


平日、1時すぎは空いてる時間のようです

老舗の洋食屋さんらしい落ち着いた店内

グリーンサラダとビール
私はいいのだが、サラダの塩味が強い


ケチャップソースのオムライス


柔らかすぎない卵、ケレン味のない中身
真っ当なオムライス、最後まで飽きずに食べられます

★★★★☆
私は、
三福亭ハンバーグ>麻布食堂オムライスかな…
一度は食べておきたいオムライス



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おわら風の盆

2023-09-04 16:26:35 | 日記風&ささやかな思索・批評カテゴリー
 
NHKで中継した「おわら風の盆」
を観ました 

9月1日から9月3日の3日間、
富山県富山市八尾地区で行われる
300年続く伝統行事




”ぼんやりした“とも言えるゆったりしたリズムと抑揚で奏でられる「越中おわら節

三味線の音をたゆたうように包む胡弓のヴィブラート、男性と女性が交互に七五調の唄をのせていく



力強い「男踊り」と妖艶な「女踊り」

どこか、夢ごこちで、艶っぽい風情が町を包んでいる


2022年の映像



『「女踊り」は、昭和初めに初代花柳吉三郎が芸者さんに振り付した艶やかな踊り。

当時「女踊り」は花街鏡町の芸者さんが踊り、「男踊り」は「甚六会」が踊りました。』なるほど艶っぽいはずです。






『おわら節』艶っぽい歌詞


「見送りましょうか峠の茶屋まで

人目がなければあなたの部屋まで」


「虎は千里の藪さえ越すに 障子一重が オワラ ままならぬ」


「逢えば泣く 逢わにゃなお泣く 泣かせる人に 何で泣くほど オワラ 逢いたかろ」



日本の祭りは、血が騒ぐ系の博多山笠、神田祭…

山車を楽しむ、ねぶた祭、祇󠄀園祭り、天神祭…

踊りを愉しむ、阿波おどり、よさこい祭り…


「おわら風の盆」は、ゆく夏を惜しみ、秋の実りを待つ、八尾の風情と情を愛おしむ、夏の夜の夢


「恋の礫か 窓打つ霰 明けりゃ身に染む オワラ 夜半の風」



いつか「夜流し」を観ながら、酒を交わしてみたいですね




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白・黒・モノローム 五島美術館

2023-09-01 23:37:20 | 絵画(レビュー感想)

展示は、
展示室1ー白・黒・モノローム
絵画、墨跡、近代書画、版本、拓本、考古、陶磁、文房具
展示室2ー日本の陶芸
(国宝 紫式部日記絵巻 五島本は10/7〜10/15特別展示)
(会場は一切撮影禁止のため、写真はネット画像を借用しました)

白・黒・モノロームから

尹大納言絵巻断簡(いんだいなごんえまきだんかん) 鎌倉時代 14世紀

『白描(はくびょう)』は墨の線と塗りだけ描かれたもの。
写真ではわかりにくいですが、細い線で衣服を書いています。6人の男性と1人の女性。詞書が無いのでどのような場面かは不明。 

【参考】
尹大納言絵巻(女巻) 鎌倉時代 
14世紀 福岡市美術館蔵
『白描絵巻』は白描画と詞書を画面の中に意匠的に配置し、2次元の平面性を最大限に楽しむ日本独自の様式

蘭竹図 伝鉄舟徳済筆 室町時代
15世紀

布袋図 愚中周及筆 見心来復賛 室町時代 15世紀 

梅画賛 一休宗純筆 室町時代
15世紀

白釉黒花牡丹文梅瓶 中国宋時代 12世紀

日本の陶芸より
黒織部沓形茶碗 銘 わらや
桃山時代 17世紀
織部好みの沓形茶碗、銘 “わらや”は高台脇に千宗旦が書いたため
伯庵茶碗 銘 冬木 江戸時代 
17世紀
枇杷色がなんとも言えない、胴部の海鼠釉が美しい
伯庵茶碗は、医官會谷伯庵が所持し、材木商冬木家が所有した、と小堀遠州の箱書にある

長次郎赤楽茶碗 銘 夕暮 
桃山時代 16世紀
銘の夕暮は宗旦が名付けたもの

光悦赤楽茶碗 銘 十王
江戸時代 17世紀
光悦の赤楽茶碗はどれも大変 ”色っぽい“ 乙御前、熟柿… 十王は地獄の閻魔様、怒った赤い顔

見たことのない茶碗を堪能しました
ぐるっとパスで入場
★★★✫☆

駅の反対は飲食ゾーン
ラーメン、カフェ、イタリアン、天麩羅、中華とどれも美味しそうでしたが…
強烈な日差しと、庭園散策から体が『肉』を求め、ネットで調べた『神戸屋レストラン』へ
始めて入ります…
焼き立てのパン食べ放題です

お得なビールプラスイタリア野菜のフリッター(これ美味しかった)

ちょこっとしたステーキ
次々にパンを勧められて、お腹が一杯に…
イチヂクの入った黒パンが好き
クルミとかオレンジとかブドウとかフォカッチャとかフランスパンとか色々
サラダバーも有りましたよ

神戸屋レストランは、大阪で1918年に創業したパンの『神戸屋』レストラン部門。パン屋さんのファミレスですね。

焼き立てパン、食べ放題を考えるとコスパは普通のファミレスより

良いかも

関西では人気なんでしょうか?

★★★✫☆

コスパ良好

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