浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

アジアの安全保障最前線

2015-08-13 00:16:06 | 資料

アジアの安全保障:小さな岩礁、大きな問題
最前線で中国を抑えようとする沿岸警備隊の闘い

2015.7.31 The Economist JB PRESS

(英エコノミスト誌 2015年7月25号)

アジア諸国の沿岸警備隊は中国を阻止する闘いの最前線にいる。

米軍の偵察機が捉えた、中国が南シナ海で建設を進めている人工島の空撮映像〔AFPBB News〕

中国の沿岸警備隊はほぼ10日ごとに、日本の外相が昼食時までに中国外相に正式な抗議を申し入れるのに間に合うよう、午前8時に現地に到着する。週末に現れることは、あまりない。最近、これはちょっとした儀式になっている。

 中国の艦船は、中国が領有権を主張し、釣魚島と呼ぶ日本の尖閣諸島から12カイリの領海線内に侵入する。

 そして、中国船が国の名誉が満たされたと判断し、領海内から立ち去るまで、日本の海上保安庁の小型船が中国艦船を用心深く追尾するのだ。

 このちょっとしたダンスを改善と呼ぶといい。何しろ2012年には、反日熱が最高潮に達し、尖閣諸島の海域への攻撃的な侵入が、中国が無人の岩礁を巡って隣国・日本に戦争まで仕掛けるのではないかというリスクを浮き彫りにしていたからだ。

尖閣諸島周辺でのダンス

 こうしたダンスを繰り広げているのが、白く塗られ、最小限の武器しか持たない沿岸警備隊の艦船であるために、双方は比較的簡単に撤退できる。だが、暗灰色の軍艦が近くでうろついている。中国がここ数カ月手を緩めている1つの理由は、水平線のすぐ向こうに日本の海上自衛隊の確かな存在があることだ。

 そして、両国が尖閣を巡って衝突するようなことになれば、米国は、日本の援護に駆けつけることを明確にしている(米国は領有権問題に関する見解を一切主張していないが、戦後の日本占領時代には爆撃訓練のために尖閣諸島を使っていた)。

 東アジアで抵抗に遭った中国は、もう少し簡単な標的に目を向けた。南シナ海の島嶼、岩礁、環礁である。これらの島嶼や岩礁は長い間、沿岸諸国、特にフィリピンとベトナムが関与する領有権問題の対象になってきた。だが、中国はこの1年、急激に緊張を高めている。

 第1に、中国は協議もせずに、ベトナムが主張する排他的経済水域(EEZ)に石油掘削装置を運び入れた。もっと問題なのは、中国の海岸からはるか遠く離れた係争中の岩礁や島嶼で巨大な埋め立て工事が確認されたことだ。

 日本とは対照的に、中国の南側の隣国は比較的貧しくて弱く、米国の安全保障上の厳格な保証もない。1992年にフィリピンから米軍が撤退して以来、南シナ海には空白が存在してきた。

影のゲーム

 中国の近隣諸国は、中国が軍事費を急増していること、特に外洋海軍を持とうとしていることに不安を覚えている。

 各国は、中国の力を誇示することをはばからない習近平国家主席に注目している。習氏は好んで、中国の「平和的台頭」や「新型大国関係」――小国のための余地がほとんど残っていないように見える関係――について話す。

 中国と米国の両政府内では、戦略家らが長い間、米中が「トゥキディデスの罠」に陥る運命にあるのかどうか好んで論じてきた。トゥキディデスの原作では、アテナイの勢力拡大に対するスパルタ人の不安が戦争を避けられないものにした。現代の類似点は、既存の大国(米国)が台頭する大国(中国)と衝突する運命にあることを示している。

 日本では、この点は違ったふうに指摘されている。現代の中国は海上で、第2次世界大戦前の帝国日本が地上で見せたような妄想的攻撃性を持って行動しているというのだ。「彼らは、我々が犯したのと同じ間違いを犯そうとしている」と日本のある当局者は言う。

 今のところ、これは外交、法的な作戦、ポジショニング、足元の既成事実(むしろ海上の事実と言うべきか)の創造のゲームだ。このゲームは、主に非軍事的な力と組織によって行われている。浚渫船やはしけ、海洋学その他の調査船、そして何よりも沿岸警備隊だ。

 中国は、自国の埋め立て工事は、灯台や漁船のための台風避難所、測候所、捜索救助施設といった公共財を提供することを目的にしていると主張する。だが、米国の防衛当局者らは、その目的が実際には軍事的なものであると確信している。

 ファイアリークロス礁では、長さ3キロの新たな滑走路が中国のどのような軍用機でも受け入れられるようになっているし、戦闘機の格納庫のように見えるものも建設されている。別の前哨地では、迫撃砲も観測されている。

 米国の計画立案者たちは、これらの要地は脆弱であり――ある人の言葉を借りるなら「動くことのできない空母」――、何か紛争が起きた場合には、すぐに戦闘能力を失うだろうと言う。

 だが、戦争に至らない状態なら、人口島は中国の戦力を投射する有益な前進基地としての役割を果たすだろう。

 中国は、明確に定義されていないU字型の「九段線」を主張する。その中には南シナ海の大部分が含まれ、いくつかの近隣諸国の領有権主張とぶつかる(地図参照)。

 ここでも米国は、誰が何を所有しているのかについて立場を明らかにしないふりをしている。米国は、自国の優先事項は、航空機と船舶両方の自由通行権を守ることだと言う。

 米国は、この点を強調するために、新しく作られた島の近くに定期的に軍事用偵察機を飛ばしている。

 中国は、南シナ海で建設を行った最初の国ではないが、今は群を抜いて精力的な国だ。

 中国の行動は、南シナ海で権利を主張する国々との信頼関係をズタズタに引き裂くことによって、長年約束されてきた領有権問題に対処するための行動規範の実現をより一層困難にしている。

 中国の強硬姿勢は、いくつかの東南アジア諸国を米国に近づけており、米国のアジアへの「ピボット(旋回)」を正当化する理由を与えている。中国の強硬な姿勢に不安を感じている国々は、大挙して軍装備品を購入している。

 日本の安倍晋三首相は、国内で強い反対に直面する中で、日本が同盟国米国を支援する際の制限を緩和する新たな安全保障法案を国会で強引に通過させようとしている。

 安倍氏は、例えば、南シナ海の巡廻で日本が米国海軍と合流することを望んでいる。日本はフィリピンとベトナムに、沿岸警備隊の艦船をそれぞれ新たに10隻と6隻建造する資金も提供している。それらはすべて共同の「反威圧戦略」の一環だ、と東京の政策研究大学院大学の道下徳成教授は言う。

 一方、ベトナムの米国との関係は、ますます強力になっている(ベトナムはロシアからの武器購入も増やしている)。フィリピンは、米国がスービック湾のかつての基地やその他基地に帰還するのを認める新防衛協定に調印した。

 そしてフィリピンは、なおざりにされている自国軍を増強することを計画している。買い物リストの中には、新たな戦闘機、フリゲート艦、海上偵察機が含まれている。だが、この国の汚職の規模を考えると、追加の投資によってどれほどのパンチが放たれるのか疑問に思う向きもある。

 多くの国は今、国連が支援するハーグの仲裁裁判所の手続きを注視している。ここではフィリピンが、水面下の岩礁の上に築いた中国の建造物が国連海洋法条約(UNCLOS)の下で領海とEEZに対する権利を与えるのかどうかの判断を求めている。

 仲裁裁判所は所有権の問題を決着させることはできないが、フィリピンは、曖昧だが広範囲に及ぶ中国の主張を弱める道義的な勝利を期待している。中国はこのプロセスに参加することを拒んでいるが、否応なく法的議論に引き込まれている。

一つの中国、一つの主張

 東シナ海と南シナ海が交差する場所に、中国が主権を主張する台湾がある。台湾海峡を挟んだ緊張は、台湾の馬英九総統と同氏が率いる国民党が本土の共産党との和解を模索しているため、近年大きく和らいだ。

 だが、より独立志向の強い民主進歩党の蔡英文氏が馬氏に取って代わる可能性が高い総統選が迫っているため、対中関係に試練の兆しが出ている。

 蔡氏は、安定的で予測可能な本土との関係を維持するという希望を口にすることで、台湾海峡危機に対する米国の懸念を和らげようとしている。だが、中国は蔡氏の党を信用していない。

 加えて、南シナ海の論争は、台湾と中国との間で新たな争いのもとになる可能性を秘めている。台湾は、東シナ海と南シナ海で中国と同じ主張をしている。実際、九段線は最初、1946年に国民党によって引かれた(当時は線の数は11本だった)。国民党がまだ中国を支配しており、日本の降伏を受けて島々を取り戻すことを目指していた時のことだ。

 同一の主張は、実は中国にとって都合がいい。「一つの中国」しか存在しないという表向きの言い分を強化するからだ(正確に一つの中国が何なのかという点については、中国と台湾は意見を異にしている)。だが、米国は最近、中国の主張の呆れるほど広範な性格を弱める手段として、台湾の主張を明確にするよう馬氏に圧力をかけた。

自主建造のミサイル艇と補給艦が就役、台湾
台湾南部・高雄の左営海軍基地で行われた軍艦2隻の就役式で、海軍部隊を閲兵する馬英九総統〔AFPBB News〕

 ハーバード大学で教育を受けた法律家で、台湾が国際法を支持していると見られることを熱望している馬氏は、台湾はUNCLOSの下で、九段線内の全海域ではなく、その中の島々の周辺12カイリの領有権だけを主張していると述べた。

 民進党政権は、それよりさらに狭い立場を取るかもしれない。蔡氏は、台湾は自国が保持するスプラトリー(南沙)諸島最大の島、太平島を守ると主張しているが、それ以外の点についてはもっと曖昧だ。

 外交上のニュアンスが、アジアのパワーバランスで起きている容赦ない変化を変えることはないだろう。軍事専門家らは、次のような大まかな見通しを示している。台湾は数年前に自力で中国の侵略を食い止める能力を失った。日本は、あと10~15年しか最も遠方の島々を守ることができないかもしれない。

 このため、より長期的な問題は、以下のようなものとなる。台湾と日本は、中国に攻撃するのを思いとどまらせるだけの十分な打撃を与えられるか。そしてより重要な点として、米国はどこまで一方の肩を持つ意志や能力があるのか。中国が台湾の近くにミサイルを発射した台湾海峡危機から20年が経過した今、米国は警告として再び近くに空母を配備するだろうか。

 こうした問題に対し、無条件の「イエス」と答える人はほとんどいない。

 軍の考え方は大きく変わりつつある。米国は中国が増強している「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力を打ち破ろうとして、新たな武器を探し求めている。この能力には、例えば、恐らく「第一列島線」(日本から台湾、フィリピン、インドネシアを通る)で米軍を食い止めるよう設計された対艦ミサイルが含まれる。

 軍事的な不均衡が非常に大きいため、近隣諸国は今、中国を撃退するための独自のA2/AD戦略を計画している。

 米国海軍大学のトシ・ヨシハラ教授は、日本は陸上配備型の対艦ミサイルや潜水艦、高速ミサイル艇での「海上ゲリラ戦」、機雷戦のような事柄に焦点を当てるべきだと考えている。米国は密かに、台湾に同様の戦術を取るよう圧力をかけている。そして日本の当局者は内々には、台湾の安全保障が日本の安全保障にとって不可欠だと認めている。

 ワシントンのシンクタンク、米国戦略予算評価センター(CSBA)のアンドリュー・クレピネヴィッチ氏は、米国は同氏が「列島線防衛」と呼ぶものをフィリピンに広げる手助けをすべきだと言う。

打ち負かせなければ、封じ込めよ

 そうした助言は、東シナ海と南シナ海は中国の湖になる運命であり、でき得る最善のことは中国をその中に封じ込めることだと認めるあきらめの言葉なのかもしれない。

 緊張が世界の繁栄に及ぼす危険性を考えると、誰もそのような考えを試したいとは思わない。今後数年間の目的は、悪い行いを防ぐ一方で、台頭する中国を近隣諸国との協力的な関係に引き込むことでなければならない。

 中国はとてもではないが、国内問題がないわけでも、外圧に無関心なわけでもない。北京の専門家の中には、自国が最近海上で自己主張を強めすぎていると考える者もいる。中国は、南シナ海での埋め立てが終わりつつあると言っている。習氏は、9月の訪米を前にして、過剰な論争は避けたいと思うだろう。

 今のところ、アジアにおける競争が紛争に変わるのを避けられるかどうかは、中国周辺の海域で軽武装した沿岸警備隊の艦艇の乗組員たちが冷静さを保てるかどうかにかかっているのかもしれない。


© 2015 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44438

「自分から攻撃するような事をすると争いが絶えない。だから、専守防衛に徹して、攻撃の意思はない。平和を尊重しているという態度を世界に示さなければならない」ということだろう。

その点に異論はない。第一次大戦後にパリで締結された不戦条約は、その精神で誕生し、現在の国連もそれを受け継いでいる。

しかし、攻撃的な国やテロ集団がなくなるわけではないので、各国が協力して軍事的にその乱暴者を制圧する。それが集団安全保障だが、米ソ中などの常任理事国の拒否権によって集団安全保障が成立しない場合が多い。

そのため、国連憲章は自ら自衛する個別的自衛権を有すると定めた。さらに自分だけでは防衛できない事態に備えて利害の一致する国同士が同盟を築いて他国の攻撃を防ぐ仕組みも設けた。それが集団的自衛権である。

これまでは、日米同盟で一方的に米国に守ってもらえた。しかし今後、米国は軍事予算を削減する一方、中国は過去10数年、飛躍的に軍事力を高め、かつ東シナ海や南シナ海で覇を唱えている。北朝鮮も核武装に乗り出している。

日本も米国と一緒になって戦わない限り、米国だけでは日本を守りにくいと米国はほのめかしている。そこで共同して防衛に当る体制を整備する。それが今議論している安保法案である。

◆米海軍トップ、米国は台湾を防衛する「責任がある」

2014/11/05 フォーカス台湾

(ワシントン 5日 中央社)米海軍制服組トップのジョナサン・グリナート作戦部長は4日、ワシントンで行われたシンポジウムで、中央社の記者に対し、米国は「台湾関係法」に基づき、台湾を防衛する責任があり、その約束もしていると述べた。 

台湾が自国での製造と米国からの購入を並行で検討している潜水艦については、現在、米台間で話し合いが行われており、米国側も台湾側に必要な支援を提供できるよう期待しているとしながらも、今のところ公表できる情報はないと答えた。 

グリナート氏はこの日行った演説の中で、中国大陸は米国のアジア回帰政策において「重要」ではあるが、同政策は中国大陸に対してのみ行うものではないと語った。 

また、米国は自国の安全問題以外にも、国際社会の秩序と規範の維持にも責任を負うとして、インド洋、東シナ海、南シナ海などを含む地域の安全についても、同盟国や中国大陸の周辺国と提携して目標を達成したいとの考えを示した。

(鄭崇生/編集:杉野浩司)

http://japan.cna.com.tw/news/apol/201411050005.aspx

◆【世界を斬る】米海軍、新トップに“戦いの素人” 中国と対決できない「オバマ氏の暴挙」

2015.06.10 zakzak

 南シナ海の人工島をめぐって、中国が「米国が介入してきたら戦争だ」とわめいているとき、オバマ大統領は米海軍の最高指揮官に技術担当の海軍大将を任命した。海軍の新トップは、中国と戦うことなど全く考えていない。

 日本では、なぜか、「海軍作戦部長」と翻訳されている海軍総司令官に就任したジョン・リチャードソン海軍大将は海軍原子力推進局長で、海軍総司令官への昇進順位でいえば5番目だった。だから、今度の人事は大抜擢で、誰もが驚き、海軍関係者の間では懸念と不安が高まっている。

 米海軍を退役したばかりの元提督の友人は、こう言った。

 「オバマ大統領の今度の決定は、米海軍に魚雷攻撃をかけて沈没させてしまうようなものだ。海軍が中国と対決することはとてもできなくなる」

 オバマ大統領は2012年にも、太平洋防衛の最高指揮官である太平洋軍司令官に、中国に対する弱気で懸念されていたサミュエル・ロックリア海軍大将を任命した。ロックリア氏は、中国が米空母キラーとよばれるクルージングミサイルDF21を実戦配備しようとしたとき、いち早く西太平洋から米海軍を撤退させようとした超本人だ。

 私の知るかぎり米海軍の最高指揮官は長い間、第一線で活躍した提督ばかりだった。ブッシュ前大統領が任命したゲイリー・ラフヘッド海軍総司令官は長い間、駆逐艦の艦長として活躍し、私は仕事の上で何度も会ったことがある。戦う意志に溢れた海の男で「必要なら、米海軍はどこにでも乗り込んでいく」といつも言っていた。

 その後任のジョナサン・グリナート海軍大将も優秀な潜水艦乗りで、私とのインタビューでも、「中国の潜水艦などは米国の技術をもってすれば敵ではない」と中国をのんでかかっていた。

 一方、リチャードソン新海軍総司令官は、原子力エンジンの開発や整備に関しては世界的に知られている。空母や潜水艦を含む米海軍艦艇の原子力エンジンが過去64年間、事故を起こしたことがないのは、彼の功績とされている。

 だが、南シナ海では今、中国が不法な軍事行動をとり、核戦力を使ってでもアメリカと対決しようとしている。そんな現状で、原子力エンジンだけを仕事にしてきた技術担当の提督を、海軍の総司令官にする人事は、オバマ大統領の暴挙としか言いようがない。

 米海軍は現在、原子力空母を3隻、攻撃型原子力潜水艦を10隻あまり建造中で、潜水艦や機雷の能力を急速に向上させている。だが、肝心の最高指揮官が“戦いの素人”とあっては、米海軍と協力してアジア西太平洋の安全を維持しなければならない日本には、まことに気がかりなことだ。

 ■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150610/dms1506101550007-n1.htm

◆米海軍があ然、中国「新鋭巡視船」の驚きの戦法とは
「我々はどう対処すべきなのか・・・」

2015.8.6(木) 北村 淳 JB PRESS

日本の海上保安庁の大型巡視船「しきしま」。中国がさらに大型の1万2000トン級巡視船を建造しているという(写真:海上保安庁)

「中国海警の新型巡視船は強力である」という人民日報(英文ウェブ版7月29日 )の記事に、アメリカ海軍関係者たちの話題が集中している。

人民日報が衝突戦法を誇示

 人民日報が紹介したのは中国海警の新鋭1万2000トン級巡視船である。その巡視船自体の情報は以前から明らかになっていた。

 これまで世界の沿岸警備隊が用いる巡視船(アメリカでは「カッター」と呼ばれる)のなかで最大の船体を誇っていたのは、日本の海上保安庁が運用している「しきしま型巡視船」(PLH-31しきしま、PLH-32あきつしま)であった。その満載排水量は9300トンであり、アメリカ沿岸警備隊が運用している巡視船のなかでも最大の「バーソロフ級カッター」の満載排水量が4500トンであるから、巡視船としては突出して巨大なものである。

アメリカ沿岸警備隊の「バーソロフ」(写真:アメリカ沿岸警備隊)

 その巨大な「しきしま型巡視船」よりさらに大型(中国当局が公表している1万2000トンという数字は総トン数であり、満載排水量はさらに大きい数字となる)の巡視船を中国が建造しているということで、海軍関係者などは気にしていたところであった。ちなみに、アメリカの沿岸警備隊が第2海軍的な役割を負っている以上に、中国海警は第2海軍としての地位を与えられているため、アメリカ海軍が中国海警の動向に関心をもつのは当然と言える。

 このように超巨大な中国海警巡視船の記事が問題となっているのは、何もその船体の大きさのためではない。国営メディアである人民日報による新鋭巡視船の紹介内容が“国際的スタンダード”とは全く乖離した、以下のような“中国独特”な説明となっているからである。

「軍艦構造の船体である中国の新鋭1万2000トンクラス海警巡視船は、2万トンを超える船舶へ体当りするパワーを持っており、9000トン以下の船舶との衝突では自らはダメージを受けないようになっている。そして、5000トンクラスの船舶に衝突した場合は、相手を破壊して海底の藻屑としてしまうことができる」

 中国以外の“普通の国”であるならば、巡視船や軍艦を紹介する場合には、船体の寸法やエンジン性能、それに搭載武器などを列挙することになる。にもかかわらず、中国当局は新鋭巡視船の性能を「どのくらいの船を体当りして沈められるか」によって誇示している。これには、さすがのアメリカ海軍関係者たちも度肝を抜かれてしまったのだ。

中国海警の1万2000トン級巡視船(中国のインターネットより)

軍艦の領海侵犯にも巡視船が立ち向かうのが原則

 中国の海洋侵出政策に対して腰が引けているオバマ政権は、中国が人口島まで建設して軍事拠点化を強化しつつある南沙諸島周辺海域にアメリカ海軍艦艇を派遣してパトロールをする方針を、最近になりようやく打ち出した。そして、中国によるフィリピンなどに対する軍事的圧迫の強化に対応して、場合によっては中国の人口島周辺12海里の“中国領海内”にも軍艦を乗り入れて中国側の「勝手な領海主張」をアメリカは決して認めないという姿勢を具体的に示すことになっている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44462

◆【石平のChina Watch】習政権が谷内氏を厚遇した理由 抑止力あってこその外交

2015.08.03 zakzak

 7月中旬、訪中した国家安全保障会議(NSC)の谷内正太郎局長に対し、中国側は「ハイレベル」な連続会談で対処した。

 同16日には外交を統括する楊潔●国務委員が夕食を挟み、5時間半にわたって会談し、翌日午前には、常万全国防相が会談に応じた。そして、その日の午後、会談に出てきたのは党内序列ナンバー2で首相の李克強氏である。

 外交上の格式を重んじる中国で外国の「事務方官僚」へのこのような厚遇は前代未聞である。

 それは谷内氏が単なる「一官僚」にとどまらず、安倍晋三首相の信頼が厚く、日本外交のキーマンであることを、中国側がよく知っているゆえの対応であろう。

 そのことは、中国の指導部が今、安倍首相を非常に丁重に取り扱おうとしていることの証拠だ。安倍首相を粗末にできないと思っているからこそ、「腹心官僚」の谷内氏を手厚く歓待したのである。

 昨年11月、習近平政権下の最初の日中首脳会談が北京で行われたとき、習主席は客である安倍首相を先に立たせて、自分が後になって出てくるという無礼千万な態度を取った。

 今回の対応ぶりとは雲泥の差である。この間、日中の間で一体何が起きたのか。

 日本側の動きから見れば、まずは今年4月下旬、安倍首相が訪米し、オバマ大統領との間で日米同盟の強化で合意した。

 5月21日には、安倍首相が今後5年間、アジアに1100億ドルのインフラ投資を行う計画を表明した。そして谷内局長訪中の当日、東京では、安保法案が衆院を通過して成立のメドが立った。

 この一連の動きは、中国側の目から見れば、まさに習政権が進めるアジア太平洋戦略に「真っ向から対抗する」ものである。

 今、南シナ海問題をめぐって米中が激しく対立する中、日米同盟の強化は当然、両国が連携して中国の南シナ海進出を牽制(けんせい)する意味合いがある。

 実際、常にアメリカと共同して中国の海洋拡張を強く批判しているのは安倍首相だ。そして、集団的自衛権の行使を可能にする安保法案が成立すれば、今後日本は、同盟国や準同盟国と連携して、中国の南シナ海支配を実力で封じ込めることもできるようになるのだ。

 その一方、安倍首相が表明した「1100億ドルのアジア投資計画」は、誰の目から見ても、まさに中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)計画への対抗措置であり、安倍首相による「AIIB潰し」ともいうべきものであろう。

 つまり、習政権が進めるアジア太平洋戦略の要となる南シナ海進出とAIIB計画に対し、日本の安倍政権は今や「大いなる邪魔」となっているのである。

 そして、安倍政権の今後の出方によっては、習政権肝いりのこの2つの「目玉戦略」は大きく頓挫してしまう可能性もあるのだ。

 したがって習政権としては、安倍政権をそれ以上「野放し」にすることはもはやできなくなった。だからこそ、安倍首相と真剣に向き合って対話しなければならないと思ったのであろう。

 今回、中国指導部は安倍首相の「腹心官僚」の谷内氏をあれほど厚遇して、9月の安倍首相訪中を積極的に働きかけた。楊国務委員が谷内氏と5時間半にもわたって会談したことは、まさに中国側の本気さの表れである。

 対話から何かが生まれるかは今後次第だが、少なくとも、中国への日本の対抗力が強化されたことが、習政権を日本との真剣対話に引き出したといえるであろう。「抑止力あっての外交」とは、まさにそういうことではないのか。

                   ◇

【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

●=簾の广を厂に、兼を虎に

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150803/frn1508030842002-n1.htm