瀬尾まいこさんの「掬(すく)えば手には」(講談社)を読了しました。なんか、瀬尾まいこさんの小説って、読んでいて心地いいから好きなんですよね。根っからの悪人が登場しないってのも魅力のひとつです。
まずは、amazonの紹介文をどうぞ。
私は、ぼくは、どうして生まれてきたんだろう?
大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。
まさに、瀬尾まいこにハズレなし。 いつ読んでも何を読んでも優しい気持ちになれるってすごい作家だと思います。
何をやっても平均的、平凡で能力がないと思い込んでいる主人公の梨木匠が、中学や高校で経験したことがきっかけで“人の心がよめる”能力があるのでは?と気づきます。あれ?ちょっと現実離れした話なのか?と思ったけど、実は人間らしくて温かい物語でした。人の気持ちを想像しようとすること、そこから迷わず手を差しのべられる梨木くんはすばらしい人だと思います。そんな梨本くんに感情移入して読み進めました。
梨木くんのおかげで、河野さんも常盤さんも大竹店長も、いい風が吹いたなぁ…って感じ。でもそういうこときっと気づいてないのも梨木くんの良さなんですよね。ぶっきらぼうでイヤミまみれの大竹店長が、小説の終盤ではとてもいい人に思えてくる。彼の人を見る鋭さはすごいな…なんて思っちゃうんですよ。う〜ん、心が穏やかになるいい小説です。
ただね。ボクに理解できていないことが1つ。この本のタイトルの「掬(すく)えば手には」って、いったいどういう意味なんでしょう?作者の瀬尾さんは、この本で何を言いたかったんだろう?一番肝心なことが理解できていないボクは、まだまだ修行が足りない感じです。