沢木耕太郎の最新作「凍」。山野井泰史・妙子夫妻の、ヒマラヤ・ギャチュンカンとの壮絶な闘いをえがいたドキュメンタリー小説です。期待を裏切りません。
■「凍」
盆地で育ちながら山のことをほとんど知らないYHに、高峰登山の厳しさを教えてくれました。登山テクニック、立ちはだかる雪と岩と傾斜、機能を麻痺させる薄い酸素そして寒さ。それを克服するための普段の生活、順化。
沢木さんの冷静で優しい筆が、読者をヒマラヤの壮絶な舞台に引き込みます。
ヒマラヤは恐ろしく寒い。だから「凍」。
-妙子は雪崩で飛ばされ、流され落ちながら、頭の片隅で考えていた。「このまま死ぬのかな」
(中略)
気がつくと、体が逆さまになっていた。わずかに張り出している岩からロープにつながれたままぶら下がっている。
ほっとして上を見て、これは参ったなと思った。岩の角でロープが切れそうになっている-
「凍」は、「痛」。
-同じ病院に小指を詰めた暴力団員が入院していた。あまり痛い、痛いと大騒ぎするので、看護士が言ったという。
「小指の一本くらいなんです。女性病棟には手足十八本の指を詰めても泣き言をいわない人がいますよ」
しばらくしてその暴力団員が妙子の病室に菓子おりを持ってたずねてきた、という。-
300ページのうち、頂上を極めるシーンはわずか1ページ。
ヒマラヤの切り立った地形、自然の厳しさに挑む山野井夫妻の壮絶な格闘が、読者に伝わります。
今月のBESTです。
沢木 耕太郎 凍
■沢木耕太郎
沢木さんの書を通じて、多くの人を知りました。
「敗れざる者たち」で極限に挑む輪島功一や榎本喜八を、
「一瞬の夏」で素質十分のカシアス内藤が期待に応えてくれないもどかしを感じるジムの人たちを、
「テロルの決算」で浅沼稲次郎を暗殺した山口音矢の凶器にも似た純粋さを、
「馬車は走る」でトップに立つことのできない石原新太郎の限界や逮捕直前の三浦和義を知るとこができました。
そして最高峰「深夜特急」を。
沢木さんの、冷静にやさしく人物をえがくタッチが好きです。
「判官びいき」の人物選びも、共感できます。
■20年前
YHは、20年前、沢木さんに会ったこと(見た、というほうが正しい)が、あります。
熊本の民放労組主催の講演会があるのを知り、わくわくしながら講演会に行ったことを覚えています。観衆30人。
「マスコミに出たり、講演会をすることは殆どありません。ある仕事がひと段落して、旅にでも出ようかと開放感に浸っている時にこのお話をいただいたんです。高揚していたせいか、『やります』って返事したんです」
《いいぞ、よく来てくれました》
「『深夜特急の3部は、まだ出版しないのですか』と、よく聞かれます。実は、ある女性(たしか中近東の女性だったと記憶しています。YH注)の了解を得なければ書けないんです」
《律儀な方です。第3部が出版されたのは、10年後でした。待ちましたよ!!》
-何年も前のことを、どうして克明にかけるんですか?
「私は、使ったお金をメモする癖があるんです。フォー:○○ドン、バンコクからのバス代:△△バーツという具合に。メモを見返すと、その日の記憶が蘇るんです」
《参考にしています。YHの11月20日のブログで、「丸石自転車。7700円」と使わせてもらいました。》
講演終了後、廊下で主催者と打ち合わせる沢木さん。憧れの目で、YHは見ていました。
長身、ゆっくり控え目な口調、声をかけたくなる雰囲気。
以来、憧れの講演で、期待どおりだったのは、昨年、福岡で聴いたカルロス・ゴーンさんの講演だけです。
■「凍」
盆地で育ちながら山のことをほとんど知らないYHに、高峰登山の厳しさを教えてくれました。登山テクニック、立ちはだかる雪と岩と傾斜、機能を麻痺させる薄い酸素そして寒さ。それを克服するための普段の生活、順化。
沢木さんの冷静で優しい筆が、読者をヒマラヤの壮絶な舞台に引き込みます。
ヒマラヤは恐ろしく寒い。だから「凍」。
-妙子は雪崩で飛ばされ、流され落ちながら、頭の片隅で考えていた。「このまま死ぬのかな」
(中略)
気がつくと、体が逆さまになっていた。わずかに張り出している岩からロープにつながれたままぶら下がっている。
ほっとして上を見て、これは参ったなと思った。岩の角でロープが切れそうになっている-
「凍」は、「痛」。
-同じ病院に小指を詰めた暴力団員が入院していた。あまり痛い、痛いと大騒ぎするので、看護士が言ったという。
「小指の一本くらいなんです。女性病棟には手足十八本の指を詰めても泣き言をいわない人がいますよ」
しばらくしてその暴力団員が妙子の病室に菓子おりを持ってたずねてきた、という。-
300ページのうち、頂上を極めるシーンはわずか1ページ。
ヒマラヤの切り立った地形、自然の厳しさに挑む山野井夫妻の壮絶な格闘が、読者に伝わります。
今月のBESTです。
沢木 耕太郎 凍
■沢木耕太郎
沢木さんの書を通じて、多くの人を知りました。
「敗れざる者たち」で極限に挑む輪島功一や榎本喜八を、
「一瞬の夏」で素質十分のカシアス内藤が期待に応えてくれないもどかしを感じるジムの人たちを、
「テロルの決算」で浅沼稲次郎を暗殺した山口音矢の凶器にも似た純粋さを、
「馬車は走る」でトップに立つことのできない石原新太郎の限界や逮捕直前の三浦和義を知るとこができました。
そして最高峰「深夜特急」を。
沢木さんの、冷静にやさしく人物をえがくタッチが好きです。
「判官びいき」の人物選びも、共感できます。
■20年前
YHは、20年前、沢木さんに会ったこと(見た、というほうが正しい)が、あります。
熊本の民放労組主催の講演会があるのを知り、わくわくしながら講演会に行ったことを覚えています。観衆30人。
「マスコミに出たり、講演会をすることは殆どありません。ある仕事がひと段落して、旅にでも出ようかと開放感に浸っている時にこのお話をいただいたんです。高揚していたせいか、『やります』って返事したんです」
《いいぞ、よく来てくれました》
「『深夜特急の3部は、まだ出版しないのですか』と、よく聞かれます。実は、ある女性(たしか中近東の女性だったと記憶しています。YH注)の了解を得なければ書けないんです」
《律儀な方です。第3部が出版されたのは、10年後でした。待ちましたよ!!》
-何年も前のことを、どうして克明にかけるんですか?
「私は、使ったお金をメモする癖があるんです。フォー:○○ドン、バンコクからのバス代:△△バーツという具合に。メモを見返すと、その日の記憶が蘇るんです」
《参考にしています。YHの11月20日のブログで、「丸石自転車。7700円」と使わせてもらいました。》
講演終了後、廊下で主催者と打ち合わせる沢木さん。憧れの目で、YHは見ていました。
長身、ゆっくり控え目な口調、声をかけたくなる雰囲気。
以来、憧れの講演で、期待どおりだったのは、昨年、福岡で聴いたカルロス・ゴーンさんの講演だけです。
スティービー・ワンダーの紹介もありますね。昨年末、福岡でライブに行ったのですが、2時間ノン・ストップで歌いっぱなしでした。すごいパワーに脱帽でした。
今後とも,よろしくお願いします。<(_ _)>
かんねん