弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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専門業務型裁量労働制の対象社員に対し,残業代を支払う必要がありますか。

2014-07-20 | 日記

専門業務型裁量労働制の対象社員に対し,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要がありますか。

 専門業務型裁量労働制とは,業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため,当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち,労働者に就かせることとする業務(対象業務)として労使協定で定めた業務に労働者を就かせたときは,実労働時間と関係なく,労使協定で定めた時間労働したものとみなす制度です(労基法38条の3)。
 使用者は労働者の労働時間を把握し,把握した時間に応じて算定した賃金を支払う義務を負うのが原則ですが,専門業務型裁量労働制の適用により,労働時間把握義務を免除されることになります(平成13年4月6日基発339号)。
 本制度は,みなし労働時間の決定を労使自治に委ねるものである以上,専門業務型裁量労働制の適用要件を充足する限り,みなし労働時間と実労働時間が乖離している場合であっても,みなし労働時間労働したものとみなされることになります。
 本制度は,労働時間をみなす制度であり,労働時間に関する労基法の規制の適用を除外する制度ではありませんので,休憩(労基法34条),休日(同法35条),時間外及び休日の労働(同法36条),時間外,休日及び深夜の割増賃金(同法37条)などの規定は原則どおり適用されます。したがって,みなし時間が法定労働時間(労基法32条)を超える場合や法定休日に労働させる場合には時間外・休日労働に関する労使協定の締結・届出(同法36条)や時間外・休日割増賃金の支払(同法37条1項)が必要となりますし,深夜(22時~5時)に労働させた場合には,深夜割増賃金の支払(同法37条4項)が必要となります。


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営業社員に対し具体的な指揮命令をしたい場合,事業場外労働のみなし労働時間制を採用すべきか

2014-07-20 | 日記

営業社員に対し具体的な指揮命令をしたり,営業社員が営業中に仕事をサボっていないかチェックしたりしたいのですが,事業場外労働のみなし労働時間制を採用すべきでしょうか。

 事業場外労働のみなし労働時間制は,営業社員に対し具体的な指揮命令をすることを予定する制度ではなく,営業社員が営業中に仕事をサボっていないかチェックすることも困難です。
 このような要望が強い場合は事業場外労働のみなし労働時間制を適用せず,営業日報等により実労働時間を把握して残業代 (割増賃金)を支払うことを前提とした賃金制度を採用する方が合理的と思われます。


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営業社員からの残業代(割増賃金)請求対策で最も重要なこと

2014-07-20 | 日記

営業社員からの残業代(割増賃金)請求対策で最も重要なことは何だと思いますか。

 事業場外労働のみなし労働時間制の適用がない場合に,実労働時間に応じた残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要があるのは当然ですが,事業場外労働のみなし労働時間制を適用できたとしても,当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要がある場合には,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなされ,みなし労働時間に基づき算定された時間外労働時間に対応する残業代(時間外割増賃金)の支払が必要となります。したがって,通常は所定労働時間内に事業場外労働が終わらず,1日8時間を超えて労働することが必要となるケースでは,事業場外労働のみなし労働時間制を適用するだけでは残業代(割増賃金)請求対策として不十分であり,何らかの形で残業代(時間外割増賃金)を支払済みにしておく必要があります。休日・深夜に労働させれば,残業代(休日・深夜割増賃金)の支払が必要なことは,通常の場合と何ら変わりありません。
 また,最高裁は,様々な要素を総合的に考慮して「労働時間を算定し難いとき」に当たるかどうかを判断しており,「労働時間を算定し難いとき」に当たるかどうかを的確に予測することは難易度が高いといわざるを得ません。したがって,「労働時間を算定し難いとき」には当たらないとして事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定された場合であっても,会社が支払わなければならない残業代(割増賃金)を最小限にとどめることができる制度設計が必要となります。この点,みなし労働時間に基づき計算された残業代(時間外割増賃金)を支払済みにしておけば,万が一,事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定された場合であっても,使用者が追加で支払わなければならない時間外割増賃金の金額を抑制することができます。
 このような事業場外労働のみなし労働時間制の構造からすれば,営業社員からの残業代(割増賃金)請求に対するリスク管理としては,事業場外労働のみなし労働時間制の適用があるかどうかよりも,実態に適合した金額の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払がなされているかどうかの方が重要とさえいえると思います。


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事業場外労働のみなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代請求のリスクが高いのは

2014-07-20 | 日記

事業場外労働のみなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代(割増賃金)請求のリスクが高いのは,どのような場合でしょうか。

 業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるにもかかわらず所定労働時間労働したものとみなしているような場合は,事業場外労働のみなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代 (割増賃金)請求のリスクが高いと言わざるを得ません。
 所定労働時間労働したものとみなしていますので,当然,残業代(時間外割増賃金)は支払っていません。他方,業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるわけですから,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなされ,1日10時間とか11時間といった時間労働したものとみなされてしまいます。その結果,みなし労働時間に基づき算定された残業代(割増賃金)の支払を余儀なくされることになります。


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営業社員に営業手当さえ支払っていれば,残業代を支払わなくてもいいの

2014-07-20 | 日記

営業社員に営業手当さえ支払っていれば,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなくてもいいのですよね。

 営業手当を支払っていても,時間外・休日・深夜労働をさせれば残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要があることに変わりありません。
 営業手当の支払により残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の支払がなされていると認めてもらえることができれば,当該金額で不足する残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を追加で支払えば足りることになりますが,営業手当の支払を残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払と認めてもらえない場合は,営業手当も残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に加えた上で残業代(割増賃金)を算定し,その全額を支払う必要があります。


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営業社員であれば残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなくてもいいのですよね。

2014-07-20 | 日記

営業社員であれば残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなくてもいいのですよね。

 営業社員も労基法上の労働者ですから,週40時間(小規模事業場の特例が適用される場合には週44時間)又は1日8時間を超えて労働させた場合,1週1休の法定休日(労基法35条)に労働させた場合,深夜(22時~5時)に労働させた場合には,原則として労基法37条所定の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要があります。当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要とならない事案(通常は所定労働時間内に仕事が終わる事案)において,事業場外労働のみなし労働時間制が適用され,所定労働時間労働したものとみなされた結果,時間外労働がなかったことになり,残業代(時間外割増賃金)の支払を免れることがあるに止まります。
 事業場外労働のみなし労働時間制が適用される場合であっても,当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる事案(通常は所定労働時間内に仕事が終わらない事案)においては,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」(例えば,1日10時間とか11時間といった時間)労働したものとみなされます。みなし労働時間を元に労働時間を算定した結果,労働時間が週40時間(小規模事業場の特例が適用される場合には週44時間)又は1日8時間を超える場合には,残業代 (時間外割増賃金)の支払が必要となります。
 労基法35条所定の法定休日や深夜に労働させた場合には,休日割増賃金や深夜割増賃金の支払が必要となることは,通常の場合と何ら変わりありません。


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営業社員の残業代を「営業手当」といった一見して残業代だと分からない名目で支払いたい場合

2014-07-20 | 日記

営業社員の残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を「営業手当」といった一見して残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当とは分からない名目で支給したい場合は,どうすればいいですか。

 「営業手当」といった一見して残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当とは分からない名目での支払を希望する場合は,最低限,営業の精神的負担や被服・靴などの消耗品に対する金銭的負担を補填する趣旨の手当(通常の労働時間・労働日の賃金)に当たる部分と残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)に当たる部分が判別できるよう金額を明示するようにして下さい。両者が判別できない場合は,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払があったとは認めてもらえません。


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残業代(割増賃金)の支払名目はどういったものがお勧めですか。

2014-07-20 | 日記

残業代(割増賃金)の支払名目はどういったものがお勧めですか。

 営業社員に対しては残業代 (割増賃金)を「営業手当」等の名目で支払われていることが多いようですが,「営業手当」では,実質的に残業代(割増賃金)の支払と評価できるのかどうか争いが生じる可能性があります。したがって,残業代(割増賃金)の支払名目は,「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」といった残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の趣旨で支払われる手当であることが一見明白な名目とすることをお勧めします。


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事業場外みなしの適用がある営業社員の残業代について

2014-07-20 | 日記

 

事業場外みなしの適用がある営業社員について,当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合(通常は所定労働時間内に仕事が終わらない場合)は,どのように残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払えばよろしいでしょうか。

 

 当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合(通常は所定労働時間内に仕事が終わらない場合)は,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」のうちの時間外労働時間に対する残業代 (時間外割増賃金)を支払う必要があります。「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が何時間かは認定が難しく,事前に決めておかないと後から争いになりますので,労働者代表等との間で労使協定を締結して営業社員のみなし労働時間を定めておくとよいでしょう。例えば,所定労働時間が1日8時間の事業場において,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が1日10時間の場合は,労働者代表等との間の労使協定で「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を1日10時間とする旨定め,1日2時間分の残業代(時間外割増賃金)を支払うことになります。
 具体的には,残業代(時間外割増賃金)の時間単価を算出し,当該賃金計算期間におけるみなし労働時間における時間外労働時間数を乗じて,残業代(時間外割増賃金)額を算定します。毎月一定額の基本給等の賃金のほか,営業成績に応じた歩合給がある場合,通常の労働時間の賃金は,「基本給等の月額で定められた賃金÷一年間における一月平均所定労働時間数」だけでなく,これに「出来高払制によって計算された賃金の総額÷当該賃金算定期間における総労働時間数」を加算して算出されること(労基則19条1項7号・4号・6号)に注意が必要です。
 例えば,労使協定で営業社員は1日10時間労働したものとみなす旨定められている事業場で,通常の労働時間の賃金が1000円/時,当該賃金計算期間における労働日数が21日の場合は,
 時間外割増賃金単価=1000円/時×1.25=1250円/時
 時間外労働時間=2時間/日×21日=42時間
 時間外割増賃金=1250円/時×42時間=5万2500円
となります。
 給料日には,算定した時間外割増賃金額を「時間外勤務手当」等,時間外割増賃金の支払であることが明白な名目で支払って下さい。上記の例でいえば,時間外割増賃金5万2500円を「時間外勤務手当」等,時間外割増賃金の支払であることが明白な名目で支払うことになります。
 休日・深夜労働がある場合は,休日・深夜労働時間に応じて,休日・深夜割増賃金を,「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,休日・深夜割増賃金の支払であることが明白な名目で支払って下さい。

 


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「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とは

2014-07-20 | 日記

「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」に労働したものとみなされる「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とは,どのような時間をいいますか。

 「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とは,通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間のことであり,平均的にみれば当該業務の遂行にどの程度の時間が必要かにより,当該時間を判断することになります。


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事業場外労働のみなし労働時間制と残業代(割増賃金)支払義務との関係

2014-07-20 | 日記

事業場外労働のみなし労働時間制と残業代(割増賃金)支払義務との関係を教えて下さい。

 事業場外労働のみなし労働時間制は,労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときに,所定労働時間又は当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす制度であり,残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の支払義務を免除するものではありません。当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要とならない事案(通常は所定労働時間内に仕事が終わる事案)において,事業場外労働のみなし労働時間制が適用されて所定労働時間労働したものとみなされた結果,時間外労働がなかったことになり,残業代(時間外割増賃金)の支払を免れることがあるに止まります。
 事業場外労働のみなし労働時間制が適用される場合であっても,当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる事案(通常は所定労働時間内に仕事が終わらない事案)においては,「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」(例えば,1日10時間とか11時間といった時間)労働したものとみなされます。みなし労働時間を元に労働時間を算定した結果,労働時間が週40時間(小規模事業場の特例が適用される場合には週44時間)又は1日8時間を超える場合には,残業代(時間外割増賃金)の支払が必要となります。
 労基法35条所定の法定休日や深夜に労働させた場合には,休日割増賃金や深夜割増賃金の支払が必要となることは,通常の場合と何ら変わりありません。


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事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定される具体例

2014-07-20 | 日記

事業場外で業務に従事する場合であっても使用者の具体的な指揮監督が及んでいるために事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定される具体例を教えて下さい。

 事業場外で業務に従事する場合であっても使用者の具体的な指揮監督が及んでいるために事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定される具体例としては,昭和63年1月1日基発第1号が以下のように述べているのが参考になると思います。
(昭和63年1月1日基発第1号)
 事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは,事業場外で業務に従事し,かつ,使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって,次の場合のように,事業場外で業務に従事する場合にあっても,使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については,労働時間の算定が可能であるので,みなし労働時間制の適用はないものであること。
 ① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で,そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
 ② 事業場外で業務に従事するが,無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
 ③ 事業場において,訪問先,帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち,事業場外で指示どおりに業務に従事し,その後事業場にもどる場合


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