労基法に基づく残業代(時間外割増賃金)計算の基礎となる時間外労働時間とは,どのような時間のことをいいますか。
労基法に基づく残業代 (時間外割増賃金)計算の基礎となる時間外労働時間とは,労基法32条の規制を超えて労働させた時間のことをいいます。
1日8時間,週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)を超えて労働させた時間は,原則として時間外労働時間に該当することになります。
労基法に基づく残業代 (時間外割増賃金)計算の基礎となる時間外労働時間とは,労基法32条の規制を超えて労働させた時間のことをいいます。
1日8時間,週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)を超えて労働させた時間は,原則として時間外労働時間に該当することになります。
労基法違反の合意は無効となり,労基法で定められた労働条件が適用されます(労基法13条)。
労基法32条2項は,1日の労働時間の上限を8時間としていますので,変形労働時間性を採用しているなどの例外的場合でない限り,1日の所定労働時間を9時間と合意しても無効となり,所定労働時間は8時間となります。
通常の労働時間・労働日の賃金が1500円/時の正社員の場合,
時間外割増賃金=1500円/時×1.25=1875円/時
休日割増賃金=1500円/時×1.35=2025円/時
深夜割増賃金=1500円/時×0.25=375円/時
となります。
深夜の時間外労働の時間単価は,
1875円/時+375円/時=2250円/時
深夜の休日労働の時間単価は,
2025円/時+375円/時=2400円/時
となります。
時給1000円のアルバイトの場合,
時間外割増賃金=時給1000円×1.25=1250円/時
休日割増賃金=時給1000円×1.35=1350円/時
深夜割増賃金=1000円/時×0.25=250円/時
となります。
深夜の時間外労働の時間単価は,
1250円/時+250円/時=1500円/時
深夜の休日労働の時間単価は,
1350円/時+250円/時=1600円/時
となります。
労基法上の残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の時間単価の計算方法は,以下のとおりです。
① 時間外割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金×1.25(中小事業主を除き1月60時間超の場合は×1.5)
② 休日割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金×1.35
③ 深夜割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金×0.25
毎月一定額の基本給と成績に応じた出来高払の給料がある場合,残業代 算定の基礎となる通常の労働時間・労働日の賃金は,以下の計算式により算出されます(労基則19条1項7号・4号・6号)。
通常の労働時間・労働日の賃金
=基本給÷一年間における一月平均所定労働時間数
+出来高払制によって計算された賃金の総額÷当該賃金算定期間における総労働時間数
出来高払制その他請負制によって定められた賃金(歩合給)は,除外賃金(労基法37条5項・労基則21条)に該当しませんので,出来高払(歩合給)制の場合であっても,残業させれば残業代 (割増賃金)を支払う必要があります。
出来高払(歩合給)制における残業代(割増賃金)算定の基礎となる通常の労働時間・労働日の賃金は,以下の計算式により算出されます(労基則19条1項6号)。
出来高払(歩合給)制における残業代の基礎となる賃金
=出来高払(歩合給)制によって計算された賃金の総額
÷当該賃金算定期間における総労働時間数
出来高払(歩合給)制の給料(歩合給)部分については,月給制を採っている場合であっても,一月平均所定労働時間数ではなく,「総労働時間数」で割るのが特徴的です。
所定労働時間内に160時間働き,40時間残業した場合は,総労働時間数が160時間+40時間=200時間ですから,出来高払制における残業代(割増賃金)の基礎となる通常の労働時間・労働日の賃金は,出来高払制によって計算された賃金の総額を200時間で割って計算することになります。
労基法27条は保障給の具体的な金額については何ら規定していませんので,保障給の定めがない場合は,民事上,労働者は,同条に基づいて保障給の支払を請求することはできず,使用者は同条に基づく保障給の支払義務を負うものではないと考えられます。
民事上,労働者に対する支払義務を負うとすれば,労働時間に応じた最低賃金か,慰謝料あたりではないでしょうか。
労基法27条は,「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については,使用者は,労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」としており,本条に違反して賃金の保障をしない使用者は,30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条1号)。
したがって,労働者の給料を,全く保障給がないという意味での完全出来高払制にすることはできません。
労基法37条5項,労基法施行規則21条には残業代 (割増賃金)が掲げられていませんが,残業代(割増賃金)の趣旨で支給する手当については,これを残業代(割増賃金)の基礎に算入すると,趣旨が重複するため,残業代(割増賃金)の基礎賃金から除外することになります。
労基法37条5項,労基法施行規則21条に残業代(割増賃金)が掲げられていないせいか,残業代(割増賃金)の趣旨で支給する手当についてまで基礎賃金に含めて残業代(割増賃金)を計算したり,基準内賃金扱いにしたりしている賃金規程が散見されます。しかし,残業代(割増賃金)の趣旨で支給する手当を割増賃金計算の基礎に算入したり,基準内賃金扱いにしたのでは,当該手当が残業代(割増賃金)請求対策のために形式的に残業代(割増賃金)の趣旨と規定しているだけであって,実質は残業代(割増賃金)の趣旨を有していないと認定される方向に作用する一事情となってしまいます。
就業規則は労基法に違反してはならず(労基法92条1項),労基法違反の就業規則はその部分に関しては労働契約の内容とはならず(労契法13条),労基法が適用されます。
したがって,除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず,賃金規程で基本給のみを残業代 (割増賃金)算定の基礎賃金とする旨定めて周知させたとしても当該規定は労働契約の内容とはならず,基本給以外の除外賃金に当たらない手当についても残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に加える必要があることになります。
労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効となり,無効となった部分は労基法で定める基準によることになります(労基法13条)。
したがって,除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず,労働契約書で基本給のみを残業代(割増賃金)算定の基礎賃金とする旨定めて合意したとしても当該合意は無効となり,基本給以外の除外賃金に当たらない手当についても残業代 (割増賃金)算定の基礎賃金に加える必要があることになります。
除外賃金としての性質を有する「住宅手当」とは,住宅に要する費用に応じて算定される手当のことをいいます。
したがって,全社員に一律に定額で支給することとされているようなものは,除外賃金としての性質を有する「住宅手当」には該当せず,残業代 (割増賃金)算定の基礎賃金に入れるべきこととなります(平成11年3月31日基発170号)。