弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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残業代込みの賃金ということで誰からも文句が出ていない場合は,残業代を支払わなくてもいいのか

2014-07-28 | 日記

残業代(割増賃金)込みの賃金ということで社員全員が納得しており,誰からも文句が出ていないのですから,別途残業代(割増賃金)を支払わなくてもいいのではないですか。

 残業代 (割増賃金)込みで月給30万円とか,日当1万6000円と約束しており,それで文句が全く出ていないのだから,残業代(割増賃金)に相当する金額を特定していなくても,未払残業代(割増賃金)の請求を受けるはずはない,少なくともうちは大丈夫,と思い込んでいる会社経営者がいらっしゃいますが,甘い考えと言わざるを得ません。現実には,解雇などによる退職を契機に,未払残業代(割増賃金)を請求するたくさんの労働審判,訴訟等が提起されており,残業代(割増賃金)の請求に必要な情報はインターネットを検索すれば簡単に見つかります。
 また,訴訟になれば,労働者側は必ず,「月給30万円(日当1万6000円)に残業代(割増賃金)が含まれているなんて話は聞いたことがない。」といった主張するに決まっており,そうなってから使用者側が後悔しても後の祭りです。
 現時点で在籍している社員から文句が出ていないのは,社長の機嫌を損ねて職場に居づらくなるのが嫌だからに過ぎず,解雇されるような事態が生じた場合は,躊躇なく,会社に対して未払残業代(割増賃金)の請求をするようになります。
 最近では,問題社員 に辞めてもらおうと思って退職勧奨をした途端,社員の態度がそれまでとは全く変わってしまい,「それだったら,これまでの未払残業代を支払って下さい。」と強硬に言われたり,素直に業務指示に従わなくなってしまったりして困っているといった相談も散見されるところです。勤務を続けさせてもらえるのなら未払残業代(割増賃金)の請求はしないが,辞めさせられそうになったら未払残業代を退職金代わりに請求しようと考えながら勤務している問題社員もいるようです。
 残業代(割増賃金)の請求を受けてから,「文句があるんだったら,最初から言ってくれればよかったのに。」と嘆く会社経営者が大勢いるのは残念なことです。

 しかし,採用前に会社経営者に文句を言ったら採用してもらえませんし,在職中に会社経営者に文句を言ったら事実上会社にいられなくなってしまいますから,労働組合の支援でもない限り,退職を決意する前に会社経営者に文句を言う社員など,そう多くはいるはずがありません。
 本来であれば,全ての会社が,すぐにでも賃金制度を変更して,通常の労働時間・労働日の賃金にあたる部分と残業代(割増賃金)にあたる部分を判別できるような形で残業代(割増賃金)を支払うようにすればいいのですが,一度,痛い目にあってからでないとなかなか,対策が採られないというのが実情です。
 そういった無防備な会社をターゲットにした残業代(割増賃金)請求が,一部の弁護士の「ビジネスモデル」として確立しつつある印象ですので,ご注意下さい。


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残業代(割増賃金)に当たる部分を特定せずに月例賃金には残業代が含まれている旨の合意は有効か

2014-07-28 | 日記

残業代(割増賃金)に当たる部分を特定せずに月例賃金には残業代が含まれている旨の合意は有効ですか。

 残業代 (割増賃金)に当たる部分を特定せずに月例賃金には残業代が含まれている旨合意し,合意書に署名押印させていたとしても,時間外・休日・深夜割増賃金に当たる部分の額が労基法及び労基法施行規則19条所定の計算方法で計算された金額以上となっているかどうか(不足する場合はその不足額)を計算(検証)することができず,残業代(割増賃金)を支払わないのと変わらない結果となるので,労基法37条の規定する時間外・休日・深夜割増賃金の支払があったとは認められません。
 モルガン・スタンレー・ジャパン(超過勤務手当)事件東京地裁平成17年10月19日判決では,割増賃金に相当する金額が特定されていないにもかかわらず,基本給に残業代(割増賃金)が含まれているとする会社側の主張が認められていますが,労働者が自らの判断で営業活動や行動計画を決めることができ,基本給だけで月額183万円超えている(別途,多額のボーナス支給等もある。)等,追加の残業代の請求を認めるのが相当でない特殊事情があった事案であり,通常の事例にまで同様の判断がなされると考えることはできません。


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同業他社よりも高額の基本給・手当を払っている場合,残業代を別途支払う必要はないのか

2014-07-28 | 日記

当社は,同業他社よりも高額の基本給・手当・賞与を社員に支給し,毎年,昇給もさせるなどして社員の残業に対して十分に報いていますから,残業代(割増賃金)を別途支払う必要はないですよね。

 それなりに高額の基本給・手当・賞与を社員に支給し,昇給までさせているにもかかわらず,残業代 (割増賃金)は全く支給しない会社が散見されます。社員の努力に対しては,基本給・手当・賞与の金額で応えているのだから,それで十分と,経営者が考えているからだと思われます。
 しかし,高額の基本給・手当・賞与の支給は残業代の支払の代わりにはなりませんし,毎月の基本給等の金額が上がれば残業代の単価が上がることになり,かえって,高額の残業代の請求を受けるリスクが高くなります。賃金総額に対する月例給与の比率を下げ,賞与の比率を上げることは,残業代算定の基礎賃金を不必要に上げないという意味では残業代請求対策になりますが,高額の賞与の支給それ自体を残業代の支払と考えることはできません。
 したがって,同業他社よりも高額の基本給・手当・賞与を社員に支給し,毎年,昇給もさせるなどして社員の残業に対して十分に報いている場合であっても,残業代(割増賃金)を別途支払う必要があります。


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年俸制の社員に残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要がありますか。

2014-07-28 | 日記

年俸制の社員に残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要がありますか。

 年俸制の社員も労基法上の労働者であり,労基法上,年俸制社員について残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)の支払義務を免除する規定はありません。また,時間外・休日・深夜に労働させた場合でも労基法37条に定める残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わない旨の合意は無効となります。
 したがって,労働契約や就業規則の定め如何にかかわらず,年俸制社員を時間外・休日・深夜に労働させた場合には,残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要があります。


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残業代を支払わない旨の就業規則の定めは有効か

2014-07-28 | 日記

 

時間外・休日・深夜に労働させた場合でも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わない旨の就業規則の定めは有効ですか。

 

 就業規則は労基法に違反してはならず(労基法92条1項),労基法違反の就業規則はその部分に関しては無効となり(労契法13条)労基法が適用されます。
 したがって,就業規則で時間外・休日・深夜に労働させた場合であっても労基法37条に定める残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わない旨の就業規則の定めは無効となります。

 


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残業代を支払わなくても異存ない旨の誓約書に署名押印させている場合でも,支払わなければならないのか

2014-07-28 | 日記

時間外・休日・深夜に労働させた場合でも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなくても異存はない旨の誓約書に署名押印させている場合であっても,時間外・休日・深夜に労働させた場合には残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなければなりませんか。

 時間外・休日・深夜に労働させた場合であっても労基法37条に定める残業代 (時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わない旨の合意は無効となりますので,時間外・休日・深夜に労働させた場合でも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなくても異存はない旨の誓約書に署名押印させている場合であっても,時間外・休日・深夜に労働させた場合には残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなければなりません。


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時間外・休日・深夜に労働させた場合でも残業代を支払わない旨の合意は有効か

2014-07-28 | 日記

時間外・休日・深夜に労働させた場合でも残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わない旨の合意は有効ですか。

 労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める部分についてのみ無効となり,無効となった部分は労基法で定める労働基準となります(労基法13条)。
 時間外・休日・深夜に労働させた場合の残業代 (割増賃金)の支払は労基法37条で義務付けられていますので,時間外・休日・深夜に労働させた場合であっても労基法37条に定める残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わない旨の合意は無効となります。


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既存の社員のために賃金の内訳を変更する場合の注意点

2014-07-28 | 日記

残業代(割増賃金)込みだった月給の内訳を明確にするため,既存の社員に関し,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(割増賃金)に当たる部分とを判別できるようにするために賃金の内訳を変更する場合の注意点を教えて下さい。

 残業代 (割増賃金)込みだった月給の内訳を明確にするため,既存の社員に関し,通常の労働時間・労働日の賃金と残業代(割増賃金)に当たる部分とを判別できるようにするために賃金の内訳を変更する場合は,労働条件の不利益変更と判断される可能性が高いと思われます。基本的には使用者が一方的に社員の賃金の内訳を社員に不利益に変更することはできませんので,社員から賃金内訳変更に関する同意書,賃金規定変更に関する同意書を取る作業を行う必要があります。
 「賃金内訳の変更について,全社員に説明したところ,誰からも異議が出ず,不平不満も言わずにそのまま働き続けている。」というだけで,賃金内訳変更に社員の同意があったと思い込むようなことがないようにして下さい。


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残業代(割増賃金)を支払済みにするための賃金原資はどのように確保すればいいか

2014-07-28 | 日記

残業代(割増賃金)を支払済みにするための賃金原資はどのように確保すればいいでしょうか。

 残業代 (割増賃金)を支払えなくなる一番大きな原因は,本来,残業代(割増賃金)の支払に充てるべき金額を基本給,諸手当,賞与等に充ててしまっていることにあります。つまり,賃金の内訳を間違えているわけです。
 残業代(割増賃金)の支払は労基法で義務付けられているわけですから,残業代(割増賃金)は必ず支払わなければならないことを前提として,基本給,諸手当,賞与等の金額を逆算して決定して下さい。その結果,賃金額が最低賃金を下回るようだとビジネスモデル自体が破綻していることになってしまいますが,そうでなければ工夫の余地があることになります。


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自己申告制を採用して自己申告された労働時間をチェックすれば,想定外の残業代請求対策になるか

2014-07-28 | 日記

自己申告制を採用して自己申告された労働時間をチェックし,自己申告された労働時間に基づいて残業代(割増賃金)を支払えば,不必要な残業時間の抑制,想定外の残業代(割増賃金)請求対策になりますか。

 自己申告された労働時間が実際の労働時間と合致しているのであれば,自己申告された労働時間をチェックすることで不必要な残業時間の抑制につなげることができますし,自己申告された労働時間に基づいて残業代(割増賃金)を支払えば,想定外の残業代(割増賃金)請求対策になります。
 しかし,自己申告された労働時間が実際の労働時間に満たない場合は,自己申告された労働時間をチェックしても不必要な残業時間の抑制につなげることができませんし,自己申告された労働時間に基づいて残業代 (割増賃金)を支払っても想定外の残業代(割増賃金)請求がなされる可能性があります。
 自己申告制を採用する場合は,パソコンのオンオフのログで在社時間をチェックし,自己申告の労働時間と在社時間の齟齬が大きい場合には当該社員から事情説明を求める等の工夫をして,自己申告された労働時間が実際の労働時間と合致するようにする必要があります。


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タイムカードの打刻時間が実際の労働時間の始期や終期と食い違っている場合の対応

2014-07-28 | 日記

タイムカードの打刻時間が実際の労働時間の始期や終期と食い違っている場合,どのように対応すればよろしいでしょうか。

 タイムカードにより労働時間又は勤怠を管理している場合,タイムカードに打刻された出社時刻と退社時刻との間の時間から休憩時間を差し引いた時間が,その日の実労働時間と認定されることが多いところです。
 タイムカードの打刻時間が実際の労働時間の始期や終期と食い違っている場合は,それを敢えて容認してタイムカードに基づいて残業代 を支払うか,働き始める直前,働き終わった直後にタイムカードを打刻させるようにするかを選択する必要があります。


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残業の事前許可制を採用すれば,不必要な残業時間の抑制,想定外の残業代請求対策になるか

2014-07-28 | 日記

残業の事前許可制を採用すれば,不必要な残業時間の抑制,想定外の残業代(割増賃金)請求対策になりますか。

 残業の事前許可制は,残業する場合には上司に申告してその決裁を受けなければならない旨就業規則等に定めるだけでなく,実際に残業の事前許可なく残業することを許さない運用がなされているのであれば,不必要な残業の抑制や想定外の残業代 (割増賃金)請求対策になります。
 しかし,就業規則に残業の事前許可制を定めて周知させたとしても,実際には事前許可なく残業しているのを上司が知りつつ放置しているような職場の場合は,不必要な残業時間の抑制になりませんし,黙示の残業命令により残業させたと認定され,残業代(割増賃金)の支払を余儀なくされることになります。
 残業の事前許可なく残業している社員を見つけたら,直ちに残業を止めさせて帰らせるか,許可申請するよう促すようにして下さい。就業規則を整備しても,実態が伴わなければ,不必要な残業時間の抑制にも想定外の残業代(割増賃金)請求対策にもなりません。


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残業するように指示していないのに残業代を支払う必要があるのか

2014-07-28 | 日記

残業するように指示していないのに残業した時間についてまで労働時間として取り扱い,残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。

 明示の残業命令を出していなくても,部下が残業していることを上司が知りながら放置していた場合は,残業していることが想定することができる時間帯については,黙示の残業命令があったと認定されるのが通常です。
 具体的に何時まで残業していたのかは分からなくても,残業していること自体は上司が認識しつつ放置していることが多い印象です。部下が残業していることに気付いたら,上司は,残業を止めさせて帰宅させるか,残業代 の支払を覚悟の上で仕事を続けさせるか,どちらかを選択する必要があります。


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本人の能力の低さや,不真面目さが原因で残業をした場合でも,残業代を支払わなければならないのか

2014-07-28 | 日記

本人の能力が低いことや所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことが残業の原因の場合でも,残業代(割増賃金)を支払わなければなりませんか。

 本人の能力が低いことや所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことが残業の原因の場合であっても,現実に残業している場合は,残業時間として残業代 (割増賃金)の支払義務が生じます。
 本人の能力が低いことや,所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことは,注意,指導,教育して改善させるとともに,人事考課で考慮すべき問題であって,残業時間に対し残業代(割増賃金)を支払わなくてもよくなるわけではありません。


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仕事の合間に食事したり喫煙したり居眠りしたりしている時間を労働時間から差し引けないのか

2014-07-28 | 日記

仕事の合間に食事したり喫煙したりおしゃべりしたり居眠りしたりしている時間を労働時間から差し引いてもらうことはできないでしょうか。

 仕事の合間に,食事したり,喫煙したり,おしゃべりしたり,居眠りしたり,仕事とは関係のない本を読んだりしていた場合であっても,まとまった時間,仕事から離脱したような場合でない限り,所定の休憩時間を超えて労働時間から差し引いてもらえないのが通常です。
 居眠り等が目に余る場合は,その都度,上司が注意指導して仕事をさせるのが本筋です。上司が部下の注意指導を怠っていたのでは,無駄な残業はなくなりません。


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