東京の桜は終わりを告げ、
騒がしかった街は落ち着きを取り戻しました。
年に一度、限られた時、
一番美しい姿を見逃してはいけない…
桜を観上げることなく宴会に没頭する人たち、
敷き詰められるブルーシートに
まったく、もぉ…
と思いながらも、
その上で咲き誇るその姿をどうしても目に焼き付けたくなるのです。
あそこの桜を観よう、あそこの桜も…
焦る気持ちと期待に満ちあふれ、せわしないこの季節。
その時が終わったことに、少しホッとしている自分がいます。
この時期の空気は独特。
春の暖かさの中に、まだ冬の冷たい空気が潜んでいて
冷た暖かい空気の中に花の匂いが混じります。
甘く爽やかな匂いではなく、植物の表皮が放つような土っぽい匂い。
2つの季節の狭間で押し合っている不思議な匂い。
そんな匂いを感じたくて、時折マスクをはずし、
思いっきり吸い込んでみます。
よからぬものが鼻炎の鼻をくすぐるけれど、
どっちつかずなその匂いは体中を駆けめぐり、
蕾の開花とともに何か新しいことが始まる期待感と
新たな何かに臨む面倒くさい感覚を呼び起こします。
~東京・四谷の土手より西の空を望む~
仕事帰り、四谷の土手に立ち寄ると、
桜越し、西の空にきれいな夕焼けが見えました。
遠くに見える茜色の空は一日の終わりを告げ、
激しく放つオレンジ色は、最後の力を振り絞って輝いているように見えました。
哀愁漂うその姿と、まだ少し肌寒くせつない夕方の空気の匂いが
花の終わりの時が近いことを知らせているようでした。
私の生活も落ち着きを取り戻し、
またいつもと変わらぬ時が流れています。