少尉は、チッと舌打ちをしながら言うと、すぐに後ろを向いた。まぶしい光をキラキラと反射させている敵機が、みるみるうちに近づいてきた。もしも青い鳥が飛び上がらなければ、そのまま逃げ遅れ、確実に銃弾が撃ちこまれていたはずだった。
「イタタタタ……」と、ソラは操縦桿とは別のレバーに抱きつきながら、頭をさすった。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
と、ソラの後ろからウミの声が聞こえた。うつ伏せにレバーに抱きついたソラが後ろを見ると、距離は離れていたが、ウミの顔が同じ目の高さに見えた。
「また、戻って来ちゃったみたい」と、ソラはにが笑いをしながら言った。
「お兄ちゃん、青い鳥が、助けてって言ってるの」と、ウミが眉をひそめて言った。
「聞こえるの? 鳥の声」ソラが言うと、ウミがうなずいて言った。
「何度も何度も、このままじゃ危ないって、繰り返し言ってる――」
「それでさっき、パイロットに飛びかかっていったんだ」と、ソラは少尉を見上げた。
青い鳥は、片方の翼をだらりとさせたまま少尉の足下に倒れ、ぐったりと横になっていた。
座席の前に出て来たウミは、少尉がペダルを操作している足の下をくぐり、不安定に揺れる飛行機に足下をふらつかせながら、青い鳥の元に駆けて行った。
「――でも、どうすればいいんだろう」
ソラは、くやしそうに言った。目指していた計器もスイッチも、遠く離れてしまっていた。飛行機が揺れ始めた今となっては、もう一度挑戦したところで、すぐに振り落とされてしまうのは目に見えていた。
スタン、とレバーに両手を掛けて下に降りたソラは、ハッと顔を上げた。レバーのひんやりとした鉄の感触が、手の平から伝わってきた。床から斜めに伸びたレバーは、小さくなっているソラでも、なんとか動かす事ができそうだった。
「よしっ、こいつを持ち上げてやれば……」
と、ソラはレバーがどんな働きをしているのかわからないまま、下に潜って「うんしょっ」と、歯を食いしばりながら持ち上げた。
――ガックン
という振動が、金属音を響かせて床から伝わってきた。
「ぬあっ!」と、少尉が叫び声を上げた。
少尉は、飛行機の後ろにピッタリと張りついたまま、離れようとしないグラマンをなんとか振り切ろうとしていた。機体重量のせいで、思うように高度を上げられない飛行機は、平泳ぎしかできない空飛ぶカエルのようだった。
飛行機が単機で飛んでいたためか、グラマンは近づいては来るものの、致命的な攻撃はしてこなかった。なにか秘密を隠しているのではないか、とこちらの様子を探っているようだった。装備の重量が足かせになり、機体が持っている本来の性能を、単純に発揮できないだけだとわかれば、すぐにでも激しい攻撃が加えられるはずだった。
「イタタタタ……」と、ソラは操縦桿とは別のレバーに抱きつきながら、頭をさすった。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
と、ソラの後ろからウミの声が聞こえた。うつ伏せにレバーに抱きついたソラが後ろを見ると、距離は離れていたが、ウミの顔が同じ目の高さに見えた。
「また、戻って来ちゃったみたい」と、ソラはにが笑いをしながら言った。
「お兄ちゃん、青い鳥が、助けてって言ってるの」と、ウミが眉をひそめて言った。
「聞こえるの? 鳥の声」ソラが言うと、ウミがうなずいて言った。
「何度も何度も、このままじゃ危ないって、繰り返し言ってる――」
「それでさっき、パイロットに飛びかかっていったんだ」と、ソラは少尉を見上げた。
青い鳥は、片方の翼をだらりとさせたまま少尉の足下に倒れ、ぐったりと横になっていた。
座席の前に出て来たウミは、少尉がペダルを操作している足の下をくぐり、不安定に揺れる飛行機に足下をふらつかせながら、青い鳥の元に駆けて行った。
「――でも、どうすればいいんだろう」
ソラは、くやしそうに言った。目指していた計器もスイッチも、遠く離れてしまっていた。飛行機が揺れ始めた今となっては、もう一度挑戦したところで、すぐに振り落とされてしまうのは目に見えていた。
スタン、とレバーに両手を掛けて下に降りたソラは、ハッと顔を上げた。レバーのひんやりとした鉄の感触が、手の平から伝わってきた。床から斜めに伸びたレバーは、小さくなっているソラでも、なんとか動かす事ができそうだった。
「よしっ、こいつを持ち上げてやれば……」
と、ソラはレバーがどんな働きをしているのかわからないまま、下に潜って「うんしょっ」と、歯を食いしばりながら持ち上げた。
――ガックン
という振動が、金属音を響かせて床から伝わってきた。
「ぬあっ!」と、少尉が叫び声を上げた。
少尉は、飛行機の後ろにピッタリと張りついたまま、離れようとしないグラマンをなんとか振り切ろうとしていた。機体重量のせいで、思うように高度を上げられない飛行機は、平泳ぎしかできない空飛ぶカエルのようだった。
飛行機が単機で飛んでいたためか、グラマンは近づいては来るものの、致命的な攻撃はしてこなかった。なにか秘密を隠しているのではないか、とこちらの様子を探っているようだった。装備の重量が足かせになり、機体が持っている本来の性能を、単純に発揮できないだけだとわかれば、すぐにでも激しい攻撃が加えられるはずだった。