見ると、ウミは眉をひそめ、耳元で叫ぶ声を嫌がって、
「ウウン……」
と顔をそむけた。
と、後部座席のドアが開き、杖をついた着物姿の老婦人が、ゆっくりと外に降りてきた。
「うみ? ちゃん――」
「――大変」少し震えるようなような声で、老婦人が言った。「容体はどう。意識はあるの? 動かせるのなら、このまま病院に急ぎましょう」
老婦人の顔をちらりと見上げた運転手が、申し訳なさそうに小さくうなずいた。
ぴくり、とウミの目蓋が動いた。
「――ウミ、大丈夫か、ウミ」
ソラが言うと、ウミの目がうっすらと開いた。
「お兄、ちゃん……」
つぶやくように言ったウミの顔を見て、老婦人がほっと胸をなで下ろした。
「会長。これから病院に走らせてもらっても、よろしいでしょうか」
運転手が言うと、会長と呼ばれた老婦人は、深々とうなずいた。
「ええ。見たところ外傷はないようですけど、念のためドクターに診てもらわなければいけませんね」
申し訳ありません――。頭を下げた運転手の手から、老婦人はウミを受け取り、そっと抱き上げた。
「ほら、きみも、早く乗りなさい」老婦人にうながされるまま、ソラは車の前を回ると、後部座席に乗りこみ、老婦人と並んで座った。
「――環状通沿いにあった総合病院に向かいます」
運転手が言うと、車は静かに走り始めた。
「お兄、ちゃん……」と、ウミが小さな声で言った。「青い鳥、早く捕まえなきゃ、また逃げちゃうよ」
「旅をしているんだもの、仕方がないよ」と、ソラがウミの顔をのぞきこみながら言った。「そんなことより、痛いところはあるかい」
ウミは、黙って首を振った。
「心配いらないわ。すぐ病院に着きますからね」と、老婦人が励ますように言った。
ソラは助手席に手をかけ、やきもきしながら、身を乗り出すようにして、車が向かう先をじっと見据えていた。
「――えっ」
なにを見つけたのか、ソラが驚いた声を上げると、
キキ――ッ。
車が甲高いタイヤの音を響かせ、ガクンと急停止した。
「ウウン……」
と顔をそむけた。
と、後部座席のドアが開き、杖をついた着物姿の老婦人が、ゆっくりと外に降りてきた。
「うみ? ちゃん――」
「――大変」少し震えるようなような声で、老婦人が言った。「容体はどう。意識はあるの? 動かせるのなら、このまま病院に急ぎましょう」
老婦人の顔をちらりと見上げた運転手が、申し訳なさそうに小さくうなずいた。
ぴくり、とウミの目蓋が動いた。
「――ウミ、大丈夫か、ウミ」
ソラが言うと、ウミの目がうっすらと開いた。
「お兄、ちゃん……」
つぶやくように言ったウミの顔を見て、老婦人がほっと胸をなで下ろした。
「会長。これから病院に走らせてもらっても、よろしいでしょうか」
運転手が言うと、会長と呼ばれた老婦人は、深々とうなずいた。
「ええ。見たところ外傷はないようですけど、念のためドクターに診てもらわなければいけませんね」
申し訳ありません――。頭を下げた運転手の手から、老婦人はウミを受け取り、そっと抱き上げた。
「ほら、きみも、早く乗りなさい」老婦人にうながされるまま、ソラは車の前を回ると、後部座席に乗りこみ、老婦人と並んで座った。
「――環状通沿いにあった総合病院に向かいます」
運転手が言うと、車は静かに走り始めた。
「お兄、ちゃん……」と、ウミが小さな声で言った。「青い鳥、早く捕まえなきゃ、また逃げちゃうよ」
「旅をしているんだもの、仕方がないよ」と、ソラがウミの顔をのぞきこみながら言った。「そんなことより、痛いところはあるかい」
ウミは、黙って首を振った。
「心配いらないわ。すぐ病院に着きますからね」と、老婦人が励ますように言った。
ソラは助手席に手をかけ、やきもきしながら、身を乗り出すようにして、車が向かう先をじっと見据えていた。
「――えっ」
なにを見つけたのか、ソラが驚いた声を上げると、
キキ――ッ。
車が甲高いタイヤの音を響かせ、ガクンと急停止した。