「そんなに怖がらなくてもいいよ」と、二人の前にやってきた男の人が、わずかにおびえているウミを見て、困ったように言った。「ちょっと雑然としている所だけれど、技術室(ラボ)は新しい装置の開発や修理を専門にするところで、普段から人の出入りはそれほど多くないんだ。きみ達の方こそ、びっくりするような体験を色々してきたんじゃないのかい」
ウミは、男の人の顔を見ながら、小さくうなずいた。
「そうだろうな」と、男の人が言った。「故障した鳥が、きみ達と一緒に飛びこんできたときは、こっちもさすがに驚いてしまったよ。ちょっとした事故があってね、きみ達の時代にジャンプしてしまったんだけれど、時空間移動装置を内蔵した鳥が、ちょうど同じ時代に迷いこんでいるのを見つけて、助けてやろうとしたんだけど、回収するのに手間取って、ようやく基地港(ベース・ポート)に戻ってきたところだったから、なおさらさ」
「あっ――」と、ウミが男の人を指さして言った。「あの時、会った人だ」
「えっ、誰……」ソラが、ウミと男の人の顔を交互に見ながら言った。
「フフッ」
と、男の人は笑いながら言った。
「やっぱりそうだったのかい。もしやとは思ったんだけど、あのとき鳥を持って逃げていた子が、きみ達だったんだね」
ソラはきょとんとしていたが、ウミは大きくうなずいた。
「鳥を助けてくれて、ありがとう。ぼくは“トラベラー”、って言ってもわからないよね。そうだなぁ――タイムパトロールって言えば、わかるかな」と、男の人は言った。「きみ達の時代で言うところの、まぁ、おまわりさんってところだよ……。もっとも、仲間うちじゃあ“瞬(しゆん)”って、名前で呼ばれてるけどね」
「わたし達、元の世界に帰れますか?」と、ウミが瞬の顔をのぞきこむように言った。
「ああ、もう心配いらない。鳥はもとどおり以上に修理しておいたから、いつでも一緒に帰れるよ」
「よかった――」と、ウミがほっと息をついた。
「青い鳥は、どこに行ったんですか」
と、ソラが周りを見ながら、疑うように言った。
「鳴き声は確かに聞こえていたけど、どうして姿が見えないんですか」
ソラは、まだがくがくしている膝を手で押さえながら、立ち上がった。
「ここがどこかも、いつの時代なのかも知らないけど、ぼく達は、自分達がいた場所に帰ります」ソラはふらつきながら言うと、ウミの肩に手を乗せた。
ウミは、ソラの顔を見上げながら、肩に乗せられた手をしっかり握ると、勢いをつけて立ち上がった。
「きみは、未来を信じるかい」と、瞬が言った。
「――はい」と、ウミの手を握ったソラが、瞬を見ながらうなずいた。
「それじゃあ、未来と過去は行き来することができるって、本当だと思うかい」
「思います」ソラは、迷わずに答えた。
「そりゃあよかった」と、笑みを浮かべた瞬が、くるりと背を向けて歩き始めた。
「もう気がついていると思うけど、きみ達が見つけたこの鳥は、本物の鳥じゃないんだ」
ウミは、男の人の顔を見ながら、小さくうなずいた。
「そうだろうな」と、男の人が言った。「故障した鳥が、きみ達と一緒に飛びこんできたときは、こっちもさすがに驚いてしまったよ。ちょっとした事故があってね、きみ達の時代にジャンプしてしまったんだけれど、時空間移動装置を内蔵した鳥が、ちょうど同じ時代に迷いこんでいるのを見つけて、助けてやろうとしたんだけど、回収するのに手間取って、ようやく基地港(ベース・ポート)に戻ってきたところだったから、なおさらさ」
「あっ――」と、ウミが男の人を指さして言った。「あの時、会った人だ」
「えっ、誰……」ソラが、ウミと男の人の顔を交互に見ながら言った。
「フフッ」
と、男の人は笑いながら言った。
「やっぱりそうだったのかい。もしやとは思ったんだけど、あのとき鳥を持って逃げていた子が、きみ達だったんだね」
ソラはきょとんとしていたが、ウミは大きくうなずいた。
「鳥を助けてくれて、ありがとう。ぼくは“トラベラー”、って言ってもわからないよね。そうだなぁ――タイムパトロールって言えば、わかるかな」と、男の人は言った。「きみ達の時代で言うところの、まぁ、おまわりさんってところだよ……。もっとも、仲間うちじゃあ“瞬(しゆん)”って、名前で呼ばれてるけどね」
「わたし達、元の世界に帰れますか?」と、ウミが瞬の顔をのぞきこむように言った。
「ああ、もう心配いらない。鳥はもとどおり以上に修理しておいたから、いつでも一緒に帰れるよ」
「よかった――」と、ウミがほっと息をついた。
「青い鳥は、どこに行ったんですか」
と、ソラが周りを見ながら、疑うように言った。
「鳴き声は確かに聞こえていたけど、どうして姿が見えないんですか」
ソラは、まだがくがくしている膝を手で押さえながら、立ち上がった。
「ここがどこかも、いつの時代なのかも知らないけど、ぼく達は、自分達がいた場所に帰ります」ソラはふらつきながら言うと、ウミの肩に手を乗せた。
ウミは、ソラの顔を見上げながら、肩に乗せられた手をしっかり握ると、勢いをつけて立ち上がった。
「きみは、未来を信じるかい」と、瞬が言った。
「――はい」と、ウミの手を握ったソラが、瞬を見ながらうなずいた。
「それじゃあ、未来と過去は行き来することができるって、本当だと思うかい」
「思います」ソラは、迷わずに答えた。
「そりゃあよかった」と、笑みを浮かべた瞬が、くるりと背を向けて歩き始めた。
「もう気がついていると思うけど、きみ達が見つけたこの鳥は、本物の鳥じゃないんだ」