瞬は、小さくうなずいた。
「魔女ってのはちょっと信じられないけど、時空間移動の真偽を確かめようとして、鳥を追いかけていたらしいね。もっとも、きみ達の時代の人達じゃあ、鳥を捕まえるのはまず不可能だろうけど」
「――でも、青い鳥は怪我をして、道路にうずくまっていたんです」と、ウミが訴えるように言った。「わたし達と一緒に戻ったら、今度こそ壊されて、連れて行かれちゃうかもしれません」
「心配いらないよ」と、瞬は笑顔を浮かべて言った。「修理の前に詳しいチェックをしてもらったんだけれど、羽根を怪我した原因は、攻撃されたからじゃなかった。胸の奥にある装置が故障したせいで、高温を発して振動するエネルギー体のコアが制御できず、燃焼を起こしたからだった。うずくまっていたのは、オーバーヒートした装置が冷却するのを待って、この技術室(ラボ)に戻るつもりだったからだろうね。もしも、きみ達が先に鳥を見つけてくれなかったとしても、鳥はバラバラに分解される前に、捕まえた人達を記憶の中の世界に閉じこめて、危機を脱していただろうよ」
「ここは、未来の世界なの?」と、ソラが瞬の顔をのぞきこむように言った。
ふふん――と、瞬は笑いながら立ち上がった。
「いいや、ここはまだまだ未来の入り口さ」
瞬は言うと、手にしていた青い鳥の胸を、もう一方の手でなでるようにさわった。青い鳥は、身にまとった青い羽毛を、胸を張るようにふっくらと逆立てると、バサバサッと、舞い上がるように羽ばたいた。
「言ったろう、ここは、トラベラー達が、あらゆる時間の中に乗り出していく港なんだ。残念だけど、きみが知りたいと思っている未来は、この施設の外にあるんだよ」
青い鳥の胸が、黒に統一された室内で、ぼんやりと輝き始めた。まるで、夜明け前に見られる群青の光のようだった。
「――ほんとうに、未来は来るの」と、ソラは不安そうな顔をして言った。
「おいおい、疑っちゃいけないよ」と、困ったように言った瞬の手から、青い鳥が飛び上がった。その場にいた三人の姿が、まったく見えなくなるほど、室内が白い光であふれかえった。
「それが証拠に、ほら、ぼくがここにこうしているじゃないか。どんな未来をつくるかはきみ達次第だけれど、間違いなく、未来はやってくる――」
なにも見えない中、瞬の声だけが、ソラとウミの耳に聞こえていた。
「魔女ってのはちょっと信じられないけど、時空間移動の真偽を確かめようとして、鳥を追いかけていたらしいね。もっとも、きみ達の時代の人達じゃあ、鳥を捕まえるのはまず不可能だろうけど」
「――でも、青い鳥は怪我をして、道路にうずくまっていたんです」と、ウミが訴えるように言った。「わたし達と一緒に戻ったら、今度こそ壊されて、連れて行かれちゃうかもしれません」
「心配いらないよ」と、瞬は笑顔を浮かべて言った。「修理の前に詳しいチェックをしてもらったんだけれど、羽根を怪我した原因は、攻撃されたからじゃなかった。胸の奥にある装置が故障したせいで、高温を発して振動するエネルギー体のコアが制御できず、燃焼を起こしたからだった。うずくまっていたのは、オーバーヒートした装置が冷却するのを待って、この技術室(ラボ)に戻るつもりだったからだろうね。もしも、きみ達が先に鳥を見つけてくれなかったとしても、鳥はバラバラに分解される前に、捕まえた人達を記憶の中の世界に閉じこめて、危機を脱していただろうよ」
「ここは、未来の世界なの?」と、ソラが瞬の顔をのぞきこむように言った。
ふふん――と、瞬は笑いながら立ち上がった。
「いいや、ここはまだまだ未来の入り口さ」
瞬は言うと、手にしていた青い鳥の胸を、もう一方の手でなでるようにさわった。青い鳥は、身にまとった青い羽毛を、胸を張るようにふっくらと逆立てると、バサバサッと、舞い上がるように羽ばたいた。
「言ったろう、ここは、トラベラー達が、あらゆる時間の中に乗り出していく港なんだ。残念だけど、きみが知りたいと思っている未来は、この施設の外にあるんだよ」
青い鳥の胸が、黒に統一された室内で、ぼんやりと輝き始めた。まるで、夜明け前に見られる群青の光のようだった。
「――ほんとうに、未来は来るの」と、ソラは不安そうな顔をして言った。
「おいおい、疑っちゃいけないよ」と、困ったように言った瞬の手から、青い鳥が飛び上がった。その場にいた三人の姿が、まったく見えなくなるほど、室内が白い光であふれかえった。
「それが証拠に、ほら、ぼくがここにこうしているじゃないか。どんな未来をつくるかはきみ達次第だけれど、間違いなく、未来はやってくる――」
なにも見えない中、瞬の声だけが、ソラとウミの耳に聞こえていた。