くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(97)

2019-07-06 21:30:26 | 「機械仕掛けの青い鳥」


 キューイ――  

 と、はじめて耳にする青い鳥の鋭い鳴き声が、空気を切るようにこだました。
 二人は、頭上を飛び去っていく飛行機の機体を、目の当たりにしていた。緑色をした小さな機体は、やはり戦闘機に違いなかった。

 バツン!――。

 三浦少尉は、目もくらむばかりの光が、閉めたばかりの風防ガラスに映ったのを見た。
「雷か……」
 そんなはずはなかった。ゼロ戦が順調に飛んでいる空には、消えそうなほど小さなちぎれ雲が、ぽつりぽつりと漂っているだけだった。
 透きとおった海に浮かぶ黒い影が、ひとつ、またひとつと姿を現し始めた。ブルン、ブルルン……というエンジン音に合わせて、少尉の耳には、「一緒に帰ろう」と言ったウミの声が、繰り返し聞こえてきた。
 遠くから見る限り、本隊の姿はどこにもなかった。どうしてなのか……ふと疑問がよぎったが、もはや確かめている時間はなかった。命令された任務を果たせないとわかったいま、できる限りの事をやり抜くしか、ほかになにも残されていなかった。

「ワァー!」

 少尉は叫び声を上げると、ゆったりと波を蹴立てて近づいてくる艦隊に向かって、振り向くことなく、ゼロ戦を飛ばしていった。

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