7
シックシック――と、ウミが涙をこぼしながら、鼻をすすっていた。
ヒックヒック――と、ソラが唇を噛みながら、溢れ出る涙をこらえていた。
真っ白い光が、背中合わせの二人をすっぽりと覆っていた。
ここがどこなのかも、今がいつなのかも、二人にはわからなかった。
広い大空を、たった一機で飛んでいくゼロ戦の後ろ姿が、目をつぶっても目を開けていても、いつまでも頭から離れなかった。
「ここからは、一人でお帰り――」
笑いながら言った少尉の顔が、忘れられなかった。どうして、助けられなかったんだろう。どうして、引き返してくれなかったんだろうか。何度自分に問いかけても、ただ悲しくなるばかりで、まるで答えは出てこなかった。
チチッ、チチッ――と、どこからか青い鳥の鳴き声が聞こえた。
固い床に腰を下ろし、膝を抱えていた二人は、そろって顔を上げた。
ティチッチ、チチッ――。
青い鳥の鳴き声が、今度ははっきりと聞こえてきた。
立ち上がったソラが、
「おーい!」
と、大きな声で叫んだ。
涙を拭いたウミが、周りを見ながらゆっくりと立ち上がった。
「ここ、どこなの……」
ソラの後ろに立ったウミは、震えるような声で言うと、ソラが着ているシャツの裾をぎゅっとつかんだ。
ソラは黙って首を振ると、背中にぴったりと離れないウミをかばいつつ、青い鳥の鳴き声が聞こえた方に向かって、一歩ずつ、足下を確かめるように進んでいった。
「――なにか、見える?」と、ソラが目をこらしながら言った。
「ううん……」と、ウミは小さく首を振った。
チチッ――と、青い鳥の短い鳴き声が、二人のすぐ後ろから聞こえた。
はっとして足を止めた二人は、急いで後ろを振り返った。
と、白一色で覆われていたはずの世界が、霧が晴れるように一変した。
シックシック――と、ウミが涙をこぼしながら、鼻をすすっていた。
ヒックヒック――と、ソラが唇を噛みながら、溢れ出る涙をこらえていた。
真っ白い光が、背中合わせの二人をすっぽりと覆っていた。
ここがどこなのかも、今がいつなのかも、二人にはわからなかった。
広い大空を、たった一機で飛んでいくゼロ戦の後ろ姿が、目をつぶっても目を開けていても、いつまでも頭から離れなかった。
「ここからは、一人でお帰り――」
笑いながら言った少尉の顔が、忘れられなかった。どうして、助けられなかったんだろう。どうして、引き返してくれなかったんだろうか。何度自分に問いかけても、ただ悲しくなるばかりで、まるで答えは出てこなかった。
チチッ、チチッ――と、どこからか青い鳥の鳴き声が聞こえた。
固い床に腰を下ろし、膝を抱えていた二人は、そろって顔を上げた。
ティチッチ、チチッ――。
青い鳥の鳴き声が、今度ははっきりと聞こえてきた。
立ち上がったソラが、
「おーい!」
と、大きな声で叫んだ。
涙を拭いたウミが、周りを見ながらゆっくりと立ち上がった。
「ここ、どこなの……」
ソラの後ろに立ったウミは、震えるような声で言うと、ソラが着ているシャツの裾をぎゅっとつかんだ。
ソラは黙って首を振ると、背中にぴったりと離れないウミをかばいつつ、青い鳥の鳴き声が聞こえた方に向かって、一歩ずつ、足下を確かめるように進んでいった。
「――なにか、見える?」と、ソラが目をこらしながら言った。
「ううん……」と、ウミは小さく首を振った。
チチッ――と、青い鳥の短い鳴き声が、二人のすぐ後ろから聞こえた。
はっとして足を止めた二人は、急いで後ろを振り返った。
と、白一色で覆われていたはずの世界が、霧が晴れるように一変した。