駅 STATION 1981年 日本
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監督 降旗康男
出演 高倉健 倍賞千恵子 いしだあゆみ
烏丸せつこ 古手川祐子 根津甚八
名古屋章 大滝秀治 八木昌子 池部良
潮哲也 寺田農 宇崎竜童 北林谷栄
藤木悠 永島敏行 田中邦衛 小松政夫
小林稔侍 橋本功 室田日出男 阿藤海
村瀬幸子 佐藤慶 武田鉄矢 竜雷太
ストーリー
--1967年1月 直子--
警察官の英次は雪の降り続く銭函駅ホームで、妻の直子と、四歳になる息子義高に別れを告げた。
苛酷な仕事と、オリンピックの射撃選手に選ばれ合宿生活が続いていたことも離婚の原因であった。
その頃、英次の上司、相馬が連続警察官射殺犯“指名22号”に射殺された。
中川警視の「お前には日本人全ての期待がかかっている」との言葉に、犯人を追跡したい英次の願いは聞き入れられなかった。
テレビが東京オリンピック三位の円谷幸吉の自殺を報じていたが、英次にはその気持が痛いほどわかった。
--1976年6月 すず子--
その頃、英次はオリンピック強化コーチのかたわら、赤いミニスカートの女だけを狙う通り魔を追っていた。
増毛駅前の風侍食堂につとめる吉松すず子の兄、五郎が犯人として浮かんだ。
すず子を尾行する英次のもとへ、コーチ解任の知らせが届いた。
すず子は、刑事たちの張り込みに気づいていながらも、愛する雪夫を兄に会わせたく、隠れている町へ案内し、そして、英次の前に吉松が現れたとき、すず子の悲鳴がこだました。
--1979年12月 桐子--
英次のもとに旭川刑務所の吉松五郎から、刑の執行を知らせる手紙が届いた。
風待食堂では相変らず、すず子が働いていた。
雪夫は結婚したらしく、妻と子を連れてすず子の前を通り過ぎて行く。
舟の欠航で所在無い英次は、赤提灯「桐子」に入った。
自分と同じく孤独の影を背負う桐子に、いつしか惹かれる英次。
英次は、初詣の道陰で桐子を見つめる一人の男に気づく・・・。
寸評
北海道の冬景色を切り取る木村大作のカメラがいい。 この映像無くしてという気がする映画である。
その冬景色の中で繰り広げられる物語が切なく胸を打つ。
オムニバス形式の作品だが、それぞれはわずかなつながりを持って描かれていく。
1話の直子は3話の中では一番短いが非常にインパクトのあるものになっていた。
タイトルが出るまでの短い時間だが、その時に見せるいしだあゆみの表情がピカイチだ。
どうやら家庭を顧みることが出来なかった英次との生活の中で妻の直子が一度だけ過ちを犯したようで、それを許せない英次と別れていくシーンだ。
悲しみを押さえ、明るく敬礼をするいしだあゆみの表情が脳裏から離れない。
印象に残るシーンが多い映画だが、その中でもこの別れのシーンは秀逸だった。
英次のオリンピック選手として期待を寄せられる苦悩が、東京オリンピックの銅メダリストで自殺した円谷幸吉の遺書の朗読によって伝わってくる。
高倉健のセリフは少なく寡黙な男を演じ続けるのだが、高倉健はこの様な役をやるとがぜん輝きを見せる俳優である。
2話のすず子では兄妹のゆがんだ愛情物語が描かれるが、その姿は高倉健と古手川祐子の兄妹愛にかぶさるように描かれている。
妹の冬子に思いを寄せる青年はいるのだが、冬子はその思いを振り切って別の男へと嫁いでいく決心をする。
妹に思いを寄せる男の兄は英次の幼馴染であり親友でもある田中邦衛だ。
兄は妹に本当にいいのかと確認するが、妹はいいのだとうなづく。
何かあったようだし、何かありそうなのだが、しかし兄弟、兄妹4人の間には何も起こらない。
すず子に引き寄せられるようにやってきた兄五郎の逮捕シーンはなかなかいいのだが、そこに高倉健と古手川祐子の話がうまく絡んでこないところが少々不満な2話になっていた。
3話の桐子になってくると、高倉の無言の演技がより一層引き立ってくる。
高倉健も倍賞千恵子も描かれたようなラブシーンが似合わない俳優だ。
倍賞は「私、大きな声を出さなかった」と高倉に聞くと、高倉は「ださなかった」と答えるのだが、心の声は「樺太まで聞こえるかと思ったぜ」と言っている。
激しく求めあったことの表現なのだろうが、全くもって二人には似合わない会話だった。
大みそかの夜、桐子の居酒屋で二人して紅白歌合戦を見るシーンがあるのだが、ここで倍賞千恵子が高倉健にもたれかかった時の高倉健の様子はまるで棒立ちといった感じで、とても情感を出しているとは言い難かった。
しかしそれが高倉健なのだ。
寡黙にぎこちなく倍賞千恵子を抱き寄せるだけで高倉健なのだ。
兎に角この映画では、高倉健の表情だけを捉えるシーンが多い。
しかも寡黙にじっと耐えている姿で、雪の降るシーンが良く似合う。
雪+高倉健の映画だった。
三つの話が微妙につながる倉本聰の脚本も良かったと思う。
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監督 降旗康男
出演 高倉健 倍賞千恵子 いしだあゆみ
烏丸せつこ 古手川祐子 根津甚八
名古屋章 大滝秀治 八木昌子 池部良
潮哲也 寺田農 宇崎竜童 北林谷栄
藤木悠 永島敏行 田中邦衛 小松政夫
小林稔侍 橋本功 室田日出男 阿藤海
村瀬幸子 佐藤慶 武田鉄矢 竜雷太
ストーリー
--1967年1月 直子--
警察官の英次は雪の降り続く銭函駅ホームで、妻の直子と、四歳になる息子義高に別れを告げた。
苛酷な仕事と、オリンピックの射撃選手に選ばれ合宿生活が続いていたことも離婚の原因であった。
その頃、英次の上司、相馬が連続警察官射殺犯“指名22号”に射殺された。
中川警視の「お前には日本人全ての期待がかかっている」との言葉に、犯人を追跡したい英次の願いは聞き入れられなかった。
テレビが東京オリンピック三位の円谷幸吉の自殺を報じていたが、英次にはその気持が痛いほどわかった。
--1976年6月 すず子--
その頃、英次はオリンピック強化コーチのかたわら、赤いミニスカートの女だけを狙う通り魔を追っていた。
増毛駅前の風侍食堂につとめる吉松すず子の兄、五郎が犯人として浮かんだ。
すず子を尾行する英次のもとへ、コーチ解任の知らせが届いた。
すず子は、刑事たちの張り込みに気づいていながらも、愛する雪夫を兄に会わせたく、隠れている町へ案内し、そして、英次の前に吉松が現れたとき、すず子の悲鳴がこだました。
--1979年12月 桐子--
英次のもとに旭川刑務所の吉松五郎から、刑の執行を知らせる手紙が届いた。
風待食堂では相変らず、すず子が働いていた。
雪夫は結婚したらしく、妻と子を連れてすず子の前を通り過ぎて行く。
舟の欠航で所在無い英次は、赤提灯「桐子」に入った。
自分と同じく孤独の影を背負う桐子に、いつしか惹かれる英次。
英次は、初詣の道陰で桐子を見つめる一人の男に気づく・・・。
寸評
北海道の冬景色を切り取る木村大作のカメラがいい。 この映像無くしてという気がする映画である。
その冬景色の中で繰り広げられる物語が切なく胸を打つ。
オムニバス形式の作品だが、それぞれはわずかなつながりを持って描かれていく。
1話の直子は3話の中では一番短いが非常にインパクトのあるものになっていた。
タイトルが出るまでの短い時間だが、その時に見せるいしだあゆみの表情がピカイチだ。
どうやら家庭を顧みることが出来なかった英次との生活の中で妻の直子が一度だけ過ちを犯したようで、それを許せない英次と別れていくシーンだ。
悲しみを押さえ、明るく敬礼をするいしだあゆみの表情が脳裏から離れない。
印象に残るシーンが多い映画だが、その中でもこの別れのシーンは秀逸だった。
英次のオリンピック選手として期待を寄せられる苦悩が、東京オリンピックの銅メダリストで自殺した円谷幸吉の遺書の朗読によって伝わってくる。
高倉健のセリフは少なく寡黙な男を演じ続けるのだが、高倉健はこの様な役をやるとがぜん輝きを見せる俳優である。
2話のすず子では兄妹のゆがんだ愛情物語が描かれるが、その姿は高倉健と古手川祐子の兄妹愛にかぶさるように描かれている。
妹の冬子に思いを寄せる青年はいるのだが、冬子はその思いを振り切って別の男へと嫁いでいく決心をする。
妹に思いを寄せる男の兄は英次の幼馴染であり親友でもある田中邦衛だ。
兄は妹に本当にいいのかと確認するが、妹はいいのだとうなづく。
何かあったようだし、何かありそうなのだが、しかし兄弟、兄妹4人の間には何も起こらない。
すず子に引き寄せられるようにやってきた兄五郎の逮捕シーンはなかなかいいのだが、そこに高倉健と古手川祐子の話がうまく絡んでこないところが少々不満な2話になっていた。
3話の桐子になってくると、高倉の無言の演技がより一層引き立ってくる。
高倉健も倍賞千恵子も描かれたようなラブシーンが似合わない俳優だ。
倍賞は「私、大きな声を出さなかった」と高倉に聞くと、高倉は「ださなかった」と答えるのだが、心の声は「樺太まで聞こえるかと思ったぜ」と言っている。
激しく求めあったことの表現なのだろうが、全くもって二人には似合わない会話だった。
大みそかの夜、桐子の居酒屋で二人して紅白歌合戦を見るシーンがあるのだが、ここで倍賞千恵子が高倉健にもたれかかった時の高倉健の様子はまるで棒立ちといった感じで、とても情感を出しているとは言い難かった。
しかしそれが高倉健なのだ。
寡黙にぎこちなく倍賞千恵子を抱き寄せるだけで高倉健なのだ。
兎に角この映画では、高倉健の表情だけを捉えるシーンが多い。
しかも寡黙にじっと耐えている姿で、雪の降るシーンが良く似合う。
雪+高倉健の映画だった。
三つの話が微妙につながる倉本聰の脚本も良かったと思う。