「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」 1980年 日本
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監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 浅丘ルリ子 下絛正巳
前田吟 三崎千恵子 太宰久雄 佐藤蛾次郎
中村はやと 新垣すずこ 金城富美江 間好子
伊舎堂正子 伊舎堂恵子 一氏ゆかり 光石研
江藤潤 笠智衆
ストーリー
例によって、かって気ままな旅を続ける寅次郎、ある夜、不吉な夢を見て、故郷の柴又に帰った。
そこにあのキャバレー回りの歌手、リリーからの手紙があった。
彼女は沖縄の基地のクラブで唄っていたが、急病で倒れ、入院中だという。
そして、手紙には「死ぬ前にひと目寅さんに逢いたい」と書いてあった。
とらやの一同は、飛行機嫌いの寅次郎を説得して沖縄へ送り出した。
五年振りの再会に、リリーの大きな瞳は涙でいっぱい、そして彼女の病状も寅次郎の献身的な看護で快方に向かい、病院を出られるようになると、二人は療養のために漁師町に部屋を借りた。
寅次郎はその家の息子、高志の部屋で寝起きするようになった。
リリーの病気が治るにしたがって、心配のなくなった寅次郎は退屈になってきた。
そんなある日、寅次郎は海洋博記念公園でイルカの調教師をしている娘、かおりと知り合った。
一方、リリーはキャバレーを回って仕事をさがしはじめた。
体を気づかう寅次郎に、リリーは夫婦の感情に似たものを感じる。
たが、寅次郎は自分がかおりと遊び歩いているのをタナに上げ、リリーと高志の関係を疑いだした。
好意を誤解されて怒った高志は寅次郎と大喧嘩をし、翌日、リリーは手紙を残して姿を消した。
リリーがいなくなると、彼女が恋しくてならない寅次郎は、寂しくなり柴又に帰ることにした。
三日後、栄養失調寸前でフラフラの寅次郎がとらやに倒れるように入ってきた。
おばちゃんたちの手厚い看護で元気になった寅次郎は、沖縄での出来事をさくらたちに語る。
それから数日後、リリーが寅次郎が心配になって、ひょっこりとらやにやって来た。
そんなリリーに寅次郎は「世帯を持つか」と言うが、リリーは寅次郎の優しい言葉が素直に受けとれない。
寸評
寅さんと結婚する女性がいるとすれば、それはリリーを置いて他にないと思わせた一遍である。
リリーから沖縄で病に倒れたとの手紙が届き、寅さんは沖縄に駆けつける。
飛行機嫌いの寅さんが出発を前にして騒動を起こすが、全体的にはいつもの小ネタによる笑いは少ないような気がする。
むしろホンワカムードいっぱいで、入院中の笑いどころは、初めて病室を訪れた時に同じ病室のオバサンをリリーと勘違いして声をかけたことぐらいである。
相変わらず病人を集めて賑やかに笑いを取っている寅次郎なのだが、それはその様子を素通り的に描いているだけである。
病院での寅次郎の様子は、かいがいしくリリーを看病する姿であり、それはまるで夫婦のような雰囲気である。
リリーは寅さんの訪問を受けてみるみる元気になっていく。
退院したリリーは遠くに伊江島の見える一軒家の離れを借りて療養を続けるのだが、そこでの生活もまるで夫婦生活そのものである。
病気で弱った人間が、親切にされた異性に好意を抱くのは現実社会でもよく耳にする感情である。
リリーもそれに似た感情を抱いたのかもしれない。
寅さんとリリーが結婚すればこんな夫婦生活なのだと言わんばかりの様子が描き続けられる。
夫婦まがいの生活を散々描いたところでリリーが所帯を持つことをほのめかすが、寅さん流の照れ隠しなのか「俺たちは所帯を持つ柄じゃない」とごまかしてしまう。
お互いが気持ちをごまかして本心をはぐらかせてしまうが、二人の気持ちはお互いを向いている。
リリーは水族館でイルカの調教師をしている女性に焼きもちを焼居ている風であり、寅さんはリリーを慕っている大家の息子である高志に焼きもちを焼いている風なのである。
二人の間に生じたじれったい気持ちで大喧嘩となってしまい、二人は喧嘩別れしてしまう。
まるで青春恋愛映画のシチュエーションなのだが、喜劇映画なのでそこからの進展はない。
ことほど左様に、笑いよりもホンワカムードと真面目シーンが多い作品となっている。
二人の照れ隠しの感情と行動は、「とらや」で再開した時にも繰り返される。
寅さんはポツリと「所帯を持つか…」とつぶやくが、リリーは冗談と笑い飛ばしてしまう。
寅さんは本気だと言い返すすべを知らないし、リリーもこの場面ではああ言うしかないのだとさくらに語る。
どこまでいっても気持ちのすれ違いを起こす二人なのだが、寅さんもリリーも所帯を持つとすれば、この二人以外にはないというコンビなのである。
3度目の登場となった浅丘ルリ子とのコンビはシリーズ中で最高のものだった。
例によって別れた二人だが、旅先で再会する。
興行用のバスから降りてきて寅さんの前に現れたリリーと、バス停で休んでいた寅さんの再会の挨拶ともいえる口上のやりとりが何とも小気味よい。
しかも二人の深い結びつきを感じさせる名場面で、シリーズ中でも出色のラストシーンとなっている。
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監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 浅丘ルリ子 下絛正巳
前田吟 三崎千恵子 太宰久雄 佐藤蛾次郎
中村はやと 新垣すずこ 金城富美江 間好子
伊舎堂正子 伊舎堂恵子 一氏ゆかり 光石研
江藤潤 笠智衆
ストーリー
例によって、かって気ままな旅を続ける寅次郎、ある夜、不吉な夢を見て、故郷の柴又に帰った。
そこにあのキャバレー回りの歌手、リリーからの手紙があった。
彼女は沖縄の基地のクラブで唄っていたが、急病で倒れ、入院中だという。
そして、手紙には「死ぬ前にひと目寅さんに逢いたい」と書いてあった。
とらやの一同は、飛行機嫌いの寅次郎を説得して沖縄へ送り出した。
五年振りの再会に、リリーの大きな瞳は涙でいっぱい、そして彼女の病状も寅次郎の献身的な看護で快方に向かい、病院を出られるようになると、二人は療養のために漁師町に部屋を借りた。
寅次郎はその家の息子、高志の部屋で寝起きするようになった。
リリーの病気が治るにしたがって、心配のなくなった寅次郎は退屈になってきた。
そんなある日、寅次郎は海洋博記念公園でイルカの調教師をしている娘、かおりと知り合った。
一方、リリーはキャバレーを回って仕事をさがしはじめた。
体を気づかう寅次郎に、リリーは夫婦の感情に似たものを感じる。
たが、寅次郎は自分がかおりと遊び歩いているのをタナに上げ、リリーと高志の関係を疑いだした。
好意を誤解されて怒った高志は寅次郎と大喧嘩をし、翌日、リリーは手紙を残して姿を消した。
リリーがいなくなると、彼女が恋しくてならない寅次郎は、寂しくなり柴又に帰ることにした。
三日後、栄養失調寸前でフラフラの寅次郎がとらやに倒れるように入ってきた。
おばちゃんたちの手厚い看護で元気になった寅次郎は、沖縄での出来事をさくらたちに語る。
それから数日後、リリーが寅次郎が心配になって、ひょっこりとらやにやって来た。
そんなリリーに寅次郎は「世帯を持つか」と言うが、リリーは寅次郎の優しい言葉が素直に受けとれない。
寸評
寅さんと結婚する女性がいるとすれば、それはリリーを置いて他にないと思わせた一遍である。
リリーから沖縄で病に倒れたとの手紙が届き、寅さんは沖縄に駆けつける。
飛行機嫌いの寅さんが出発を前にして騒動を起こすが、全体的にはいつもの小ネタによる笑いは少ないような気がする。
むしろホンワカムードいっぱいで、入院中の笑いどころは、初めて病室を訪れた時に同じ病室のオバサンをリリーと勘違いして声をかけたことぐらいである。
相変わらず病人を集めて賑やかに笑いを取っている寅次郎なのだが、それはその様子を素通り的に描いているだけである。
病院での寅次郎の様子は、かいがいしくリリーを看病する姿であり、それはまるで夫婦のような雰囲気である。
リリーは寅さんの訪問を受けてみるみる元気になっていく。
退院したリリーは遠くに伊江島の見える一軒家の離れを借りて療養を続けるのだが、そこでの生活もまるで夫婦生活そのものである。
病気で弱った人間が、親切にされた異性に好意を抱くのは現実社会でもよく耳にする感情である。
リリーもそれに似た感情を抱いたのかもしれない。
寅さんとリリーが結婚すればこんな夫婦生活なのだと言わんばかりの様子が描き続けられる。
夫婦まがいの生活を散々描いたところでリリーが所帯を持つことをほのめかすが、寅さん流の照れ隠しなのか「俺たちは所帯を持つ柄じゃない」とごまかしてしまう。
お互いが気持ちをごまかして本心をはぐらかせてしまうが、二人の気持ちはお互いを向いている。
リリーは水族館でイルカの調教師をしている女性に焼きもちを焼居ている風であり、寅さんはリリーを慕っている大家の息子である高志に焼きもちを焼いている風なのである。
二人の間に生じたじれったい気持ちで大喧嘩となってしまい、二人は喧嘩別れしてしまう。
まるで青春恋愛映画のシチュエーションなのだが、喜劇映画なのでそこからの進展はない。
ことほど左様に、笑いよりもホンワカムードと真面目シーンが多い作品となっている。
二人の照れ隠しの感情と行動は、「とらや」で再開した時にも繰り返される。
寅さんはポツリと「所帯を持つか…」とつぶやくが、リリーは冗談と笑い飛ばしてしまう。
寅さんは本気だと言い返すすべを知らないし、リリーもこの場面ではああ言うしかないのだとさくらに語る。
どこまでいっても気持ちのすれ違いを起こす二人なのだが、寅さんもリリーも所帯を持つとすれば、この二人以外にはないというコンビなのである。
3度目の登場となった浅丘ルリ子とのコンビはシリーズ中で最高のものだった。
例によって別れた二人だが、旅先で再会する。
興行用のバスから降りてきて寅さんの前に現れたリリーと、バス停で休んでいた寅さんの再会の挨拶ともいえる口上のやりとりが何とも小気味よい。
しかも二人の深い結びつきを感じさせる名場面で、シリーズ中でも出色のラストシーンとなっている。