おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

道頓堀川

2025-02-22 20:32:19 | 映画
「道頓堀川」 1982年 日本


監督 深作欣二
出演 松坂慶子 真田広之 山崎努 佐藤浩市
   渡瀬恒彦 加賀まり子 柄本明 古舘ゆき
   カルーセル麻紀 名古屋章 大滝秀治
   横山リエ 花井優 浜村純 安倍徹

ストーリー
邦彦(真田広之)がまち子(松坂慶子)に会ったのは、母の納骨の日の早朝だった。
彼が大黒橋の上で道頓堀の絵を書いている時に、足の悪い犬を追ってきた彼女と会ったのだ。
邦彦は道頓堀川に面した喫茶店「リバー」の二階に住み込み昼は美術学校に通い、夕方からは店で働いていた。
「リバー」のマスター武内鉄男(山崎努)の一人息子・政夫(佐藤浩市)は邦彦の高校時代の同級生であり、日本一の玉突きの名人になるといい武内と衝突、家を出ていた。
武内は精進おとしだといって、邦彦を行きつけの小料理屋「梅の木」に連れていった。
邦彦はそこでまち子に再会した。
彼女は店のママで、もとは芸者だが今は不動産業を営む田村(安倍徹)がパトロンだった。
その日から邦彦はカンバスにまち子と足の悪い犬の絵を書くようになった。
しばらくして犬がいなくなり、邦彦とまち子は道頓堀川筋を探したが見つからなかった。
そのお礼にとまち子は邦彦を夕食に誘い、その夜「梅の木」の二階で二人は結ばれた。
ビリヤードで次々と勝っていた政夫は試合に必要な金を作るために、邦彦が学資を払うために高利の金を借り、返済に困っているとまち子をだました。
政夫の裏切りを知った邦彦は「リバー」に置き手紙を残して店を出た。
息子の不始末を知った武内は政夫を探して千日前のビリヤード「紅白」を訪れ、そこの女主人ユキ(加賀まり子)から政夫が東京まで勝負に出かけたこと、そして、ユキがかつてビリヤードしていた武内にどうしても勝てなかった玉田(大滝秀治)という老人の孫娘であることを知らされる。
武内は息子と未来を賭けて勝負しようと思い「紅白」で特訓を始めた。
その頃まち子はパトロンと別れアパートを借り、邦彦と生活しようと邦彦を探して口説いた。
邦彦が学校を卒業するまでの二年間だけでいいから一緒にいたいというまち子に、邦彦は大きくうなずいた。
「紅白」では東京から勝負に負けて帰った政夫と武内の試合が始まった。
試合中に武内は政夫が幼ない頃、ビリヤードのために妻の体を他の男に売り、金を作ったことを告白した。
父と子の争いを見ていられなくなった邦彦は外へ出ると、「リバー」の常連のかおる(カルーセル麻紀)が、幇間の石塚(柄本明)に包丁を振りかざしているのを見た。
それを止めようと邦彦は二人の間に入るが一つきに刺されてしまう。
帰りの遅い邦彦を待ちながらまち子は窓の外を見ると、いなくなったあの犬がエサを漁っていた。
犬を抱き上げ頬ずりするまち子の後を、赤く点滅させたパトカーが、道頓堀の方向へ消えていった。


寸評
大阪ミナミの街を背景にして、暗い過去を背負い、厳しい現実と向き合う個性豊かな男女を配して、鉄男と政夫の確執を絡めながら、邦彦とまち子のせつないラブストーリーが描かれていく。
喫茶店「リバー」を経営する鉄男は凄腕のハスラーだったが、息子の政夫が同じ道を歩もうとしているので「お前の玉突きは博奕と一緒や」と非難する。
そんな父親を息子は嫌悪して親子の確執が生じている。
まち子は小料理屋のママだがパトロンがいる。
その他にも、覚せい剤に溺れてすっかり落ちぶれたハスラーの渡辺(演・渡瀬恒彦)や、彼の妻で邦彦と政夫の同級生だった踊り子のさとみ(演・古舘ゆき)、殺気漂う幇間の石塚に貢ぐオカマのかおる、娘時代に鉄男に助けてもらったという陰りのあるビリヤード店の店主ユキなど、誰もが個性豊かだ。
大国橋で二人は「何をしてええのかわからへん」と言う。
ただ毎日を平凡に過ごしているだけの二人は道頓堀と言う閉鎖社会でしか生きられない似た者同士なのだ。
鉄男は「道頓堀でにぎやかに暮らしている人間は、心の中で何か寒い風が吹いとんのとちゃうやろか」と言うのだが、それは登場人物たちに内在しているものだと思われる。
道頓堀を舞台にし純情物語だが、しかし、今の道頓堀からはこの映画のような世界は想像できない。
インバウンドの人々でごった返す道頓堀は、この頃の道頓堀とは随分変わってしまった。
もっとも僕はミナミ派ではなくキタ派だった。
この物語はキタには似合わないと思う。