ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ラッキー

2018-03-12 23:37:33 | ら行

 

思いがけず、クッ、泣けた。

 

「ラッキー」73点★★★★

 

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サボテンに囲まれた

アメリカ南西部の街で一人暮らす

90歳のラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)。

 

毎朝、たばこを一服しつつ、体操をし、

馴染みのダイナーでコーヒーを飲む。

 

夜は馴染みのバーで一杯。

 

哲学と美学を持って

日々を黙々と、凜として生きるラッキーだが

 

彼はある日ふと

人生が終わりに近づいていることに気づき――。

 

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「パリ、テキサス」「ツイン・ピークス The Return」などに出演し

2017年に91歳で亡くなった

名優ハリー・ディーン・スタントンの

90歳にして最後の主演作。

 

まるで本人のドキュメンタリーのように日常が淡々と描かれ、

でもちゃんとストーリーになっているおもしろさ。

 

サボテンと照りつける陽射しに囲まれた

砂漠の一軒家で一人暮らす90歳のラッキー。

 

毎朝、たばことともに目覚め、黙々と日課をこなし、

馴染みのダイナーで店主と挨拶する。

繰り返される日々の、様式美。

 

90歳になってもきりりとした彼だけど

さすがに迫り来る「死」を感じ始めてもいる。

 

ダイナーのウエートレスに

迫り来る死に向き合う怖さを

ホロリと漏らすシーンにグッときますねえ。

 

人は誰も最後は一人。死と向き合い、どう受け入れるのか。

行く先は無。そのとき、どうするのか。

 

そんな彼は

思いがけず、ある人から大きなことを教わったりもする。

 

そしてラスト、思わぬ光が射す、歌のシーンに思わずウルッときた。

 

老カウボーイの哲学と美学。その先にみえる光。

淡々と繰り返される日常のなかに潜む真実。

 

これらが

ジム・ジャームッシュ好きには絶対ハマると思うので

強くおすすめしたいです。

 

けっこう大きく登場するデヴィッド・リンチも

いい役者っぷりでした。

 

★3/17(土)から新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「ラッキー」公式サイト

コメント
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