母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

青葉の季節白い花

2024年05月02日 | Weblog
白いアイリスが咲いた
初夏には開く白いアイリス
紫菖蒲の花の群れに
真白い花が離れて咲いてた
無垢の姿
漂うほのかな香り
いつくしむと花は応えて
青い空の下で微笑していた

遠い日の猫と父の姿
母屋の高い瓦の波
みな無くなっても私の庭で
きりり咲いてる
白いアイリス

はる

2024年03月20日 | Weblog
はるは
沢山のいのちがやってくる
はるは
暖かい日差しにさそわれ
ちいさないのちが産まれてくる

つぶらな目 ひたむきなまなざし
そのいくつかは
陽を浴びずに去ってもゆく
幸せになるため生まれても
天に愛されずに消えてゆくもの

奇蹟の星には
なぜか不幸せのさだめがある
この世に永らえず
沢山の命がどこかで果ててゆく

頂いた小さな命を楽しみ歓び
やがてみな静かに去ってゆく
花は咲き空は青く陽炎がゆれる
毎年やってくるいのちよ春の日の


てまりうた

2024年02月26日 | 
    

    てまりうた(わらべうた)     

                     竹内俊子 作詞 文部省唱歌

 てんてんてん 天神様のお祭りで
 てんてんてまりを買いました
 てんてんてまりはどこでつく
 梅のお花の下でつく
 下でつく


 てんてんてん 天神様の石段は
 だんだん数えていくつある
 だんだん数えて二十段 
 段の数ほどつきましょう
 つきましょう


   https://www.youtube.com/watch?v=JRGbCymN_TM てまりうた

空き地で梅は香る

2024年02月17日 | 
よこみち通りの空き地の古い梅の木を
わざわざ見に来る人もなし

空き地は枯草もまばら
誰の土地かもわからない

閉店したばかりのパン屋のビルは
空き地のそば午後の陽を浴びている

ささやかな空き地にも
春の花は何時かは咲く

そ知らぬ顔で通る人をみおろす
花に纏われた木はしあわせ

人影少ない場所で梅の大樹が
辺りに香りを漂わせ咲いている

雪降りつむ

2024年02月08日 | Weblog
      
       雪
       
             三好達治


 太郎を眠らせ太郎の家に雪降りつむ

 次郎を眠らせ次郎の家に雪降りつむ



いのち菜の花

2024年02月01日 | 
食べるため買った葉
みどり瑞々しい葉から黄色い花が伸びる
菜の花はいのちかけた春の花
南の海辺の街は冬陽射し
気の早い菜の花が春を告げ始めても
北の海辺は哀しみ沈む

この花をじっと見つめると細長い
たおやかな私たちの国の島影その島の中にあるささやかな
営みのあった街街
雪に悶える哀しい家が浮かぶ

春を運ぶ黄色い花に
いのちの喜び悲しみは交差する
蜜の匂いする花に何の罪もないけれど
黄色い菜の花凍る如月


新年

2024年01月04日 | 季節
まどろんで
私は暖かい陽を浴びて眠っていた
風のない静かな真昼
今年という年がすでに始まり
陽は天中高く 少し傾き
青い空には
凧の上がる気配はなかった
コンコン羽子板つく音もなかった

ラジオからきこえるにぎやかな笑い声
ふわりこころに浮かぶ「お正月」は
夢の中に溶け消えていた
南天の赤い実が
春の陽に光って揺れた 今年の元旦







高村光太郎の冬の詩

2023年12月18日 | 季節
 
    冬 が 来 た

        
                高村光太郎


きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
いちょうの木も箒になった
きりきりともみこむような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬がきた
       
冬よ 
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た

白秋の詩 落葉松

2023年11月06日 | 

    落 葉 松

          北原 白秋

からまつの林を過ぎて 
からまつをしみじみと見き
からまつはさびしかりけり
たびゆくはさびしかりけり

からまつの林を出でて
からまつの林にいりぬ
からまつの林にいりて
また細く道は続けり

からまつの林の奥も
わが通る道はありけり
霧雨のかかる道なり
山風のかよう道なり

からまつの林の道は
われのみか ひともかよいぬ
ほそほそと通う道なり  
さびさびといそぐ道なり

からまつの林を過ぎて
ゆえしらず歩みひそめつ
からまつはさびしかりけり
からまつとささやきにけり
    
からまつの林を出でて
浅間嶺にけぶり立つ見つ
浅間嶺にけぶり立つ見つ
からまつのまたそのうえに
 
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしずけし
かんこ鳥鳴けるのみなる
からまつの濡るるのみなる

世の中よあわれなりけり
常なけどうれしかりけり
山川に山がわの音
からまつにからまつのかぜ

青い空の下で

2023年10月29日 | 

青い空の下で風がそよぎ花が咲く

赤い色は命の色
黄色は裏切りの色
とヒトは言う
何も語らず花は咲き風に揺れる

秋の空は高く青く
野原は眠くなるように平和だ
清涼な空気の中で咲き乱れる花たち
生きる喜びの形と色に溢れる花たち

世界のどこかで
花の匂いも忘れ争う人々
哀しみを痛みを絶望を
この花たちはひそかに知っている

世界中に同じ青い空が広がっている


秋の月 詩人のこころ

2023年10月14日 | 季節

    白 月

      三木 露風

照る月の影みちて
雁がねのさをも見えずよ
吾が思う果ても知らずよ
ただ白し 秋の月夜は

  吹く風の音冴えて
  秋草の虫がすだくぞ
  何やらむ心も泣くぞ
  泣き明かせ 秋の月夜は







疲れた日は畳の上で

2023年09月21日 | 
思いっきり疲れた日は青い畳の上に寝転がって
あっちごろごろ
こっちごろごろ
そして腹ばいになり
四肢を思いっきり伸ばして
子供の頃のように猫のように
人目はばからずに伸びをして
また仰向けになり
天井の見知らぬ模様を眺めたり
窓から流れる風をほほに受け
生きた今日の時間をなぞり
大の字になって目を閉じて
ふっと微笑みまた伸びをして
畳の柔らかい厚みの上で思いっきり息を吐き
人間をまた続ける気力をいただくのです

四畳半だけ残った和室の
かけがえのない幸せ時間に

夏の朝の花

2023年08月30日 | 花(夏)


まだ熱の冷めやらぬあけぼのの
薄い光の中に咲く朝顔は
日の出とともに輝き しっかり主張し
伸び伸びと開き
真昼を過ぎると
はなびらを静かに閉じてゆく

夏の夜明け
太陽の登り切るまでの短い時間
そして訪れる晩秋の
冷ややかな大気にも負けず咲いて
細い幹が凍って枯れるときまで
青紫の美しい
色と形で咲きつづける絹のように薄い
あさがおの花

青春の真ん中にいるときは

2023年08月15日 | 青春
青春の真ん中にいるときは
何にも見ていなくて
過ぎ去る時間の重さも知らない

青春の真ん中にいるときは
流れる汗も勝手に落ちて
疲れるということを知らない

青春の真ん中は台風の眼
周りの嵐は見えなくて
遠い世界をめざすだけ

夏の空 海の匂い
湧水の山の小道はつづく
青春は何処にもいて爽やかな景色に埋もれていた

描きかけの絵をたくさん持ち
キャンバスの白さにときめいて
色を探していたミストの時代

忘れかけた青春の真ん中
夏の面影のシルエット

蓮のうてなに

2023年07月12日 | 
蓮の葉繁り
蓮の花咲く
薄紅いろに開く花

蓮のうてなにじいちゃんが
載って行った遠い日
ねこたちが
葉に載ったあの日
蓮の葉は池を青く覆い生き生き呼吸する
広い葉の上にじいちゃんも猫たちも
見えない姿になり住んでいる

蓮は夏空の下
ここちよい葉を広げ
すがた無くしにぎやかにいきるいのちを咲く

鯉や塩辛トンボらをいつくしむ夏の池に
繁る蓮の葉