寒来光一の日替わり笑話

お笑い作家・寒来光一(さむらいこういち)が、毎日(たぶん?)、笑いのネタをお送りします。

コインロッカー(笑ートエッセイ)

2010-09-29 00:28:58 | 笑ートエッセイ
 東京の大きな駅で、荷物をコインロッカーに預けた時のことである。
あちこち歩き回り、駅に戻ると、はたと足が止まった。
 ない!
 預けたコインロッカーが、どこにも見当たらないのだ。

 預けたのは、一階フロア改札口付近。しかし、何だか様子が違う。近
くを探し回ってみても、どうも記憶にない景色なのだ。
 わずか1時間たらずのうちに、改築工事をしてしまったのだろうか。
いくら、東京の開発のスピードがすさまじいとは言え、まさかそんなは
ずはない。
 だが、そうでなければ、これはいったいどういうことなのだろう。荷
物には、大切な物も入っているし、困り果ててしまった。

 けれども、人間困ると、知恵が生まれてくるものである。
 電車を降りた位置は、幸いにもはっきりと記憶している。そこで、入
場券を買い(こんな時のために、売っているのかもしれない)、電車を
降りたホームに向かった。
 そこまで来ると、もう後は簡単である。人間の記憶というのは、体に
自然に刻み込まれているようだ。あとは、その記憶をたどっていけばい
いのである。

 あれほど探して見つからなかったコインロッカー。忽然と姿を消して
しまったかのように思われたコインロッカーが、あっけなく目の前に現
れた。

 なぜ、さっき分からなかったのだろう。
 ふと駅ビルの表示を見た。地下1階になっている。ひょっとすると、
探したのは地上1階? 道理で見つからなかったはずである。ようやく
謎が解けた。
 預けた時に、外の建物が見え、表に道路が走っていたので、地上1階
と勘違いしてしまったのだ。

 それから数年間、こんな失敗は二度と繰り返したことがない。なぜな
ら、ここ数年間、東京を訪れる機会がなかったからである。
 そして、今、再び東京にやって来た。やはり、ない。またもや、コイ
ンロッカーのありかを見失ってしまったのである。
 いや、あわてることはない。こちらには、経験という強力な武器があ
るのだ。

 入場券を求めてホームに入ろうとした。しかし、そこでがく然とした。
どこで降りたのか、さっぱり覚えていないのだ。
 どうやら数年の時が、私の体から記憶力を盗んでいったようだ。

 結局、あちこちさまよった末、偶然にも見つけることができたのであ
る。
 コインロッカー。私にとっては、あのスペースに入りきれないほどの
苦い思い出が、たくさん詰まった場所である。


  2年ほど前の話です。
  それからは、残念ながらまだ東京を訪れる機会がありません。 
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兄弟(笑ートエッセイ)

2010-09-25 08:48:50 | 笑ートエッセイ
「人類みな兄弟」というキャッチコピーがあるが、人類がみな若貴
兄弟みたいになったら、ますます争いごとが増えるのではないだろ
うか。
「人類みな他人」の方が、情がからまないだけ冷静に親しくつき合
っていけそうな気がする。


  イチロー、やりましたね。 
  これからも、ガンガン打ち続けてほしいものです。 
  
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かわいい(笑ートエッセイ)

2010-09-20 23:56:24 | 笑ートエッセイ
 新しい服を買ってきて、妻の前で着てみせる。
 妻いわく、
「かわいいー!」
 あのなあ。オレはペットやないっちゅうねん!
 やはりここは、素直に「かっこいいー!」とか「きまってるー!」
とか、言ってほしいのである。
 遠慮がちにそう言うと、決まってこう言うのだ。
「かわいいは最高のほめ言葉やろ! 何か文句あるんね!」
「いや、別に……」


   また、蒸し暑さが戻ってきました。
   例年に比べ、3度ほど高い気温だそうです。 
  
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うまい(笑ートエッセイ)

2010-09-17 00:49:13 | 笑ートエッセイ
「うまいアイスコーヒーを飲もう」という看板が、掲げてあった。

「うまい」とは、「おいしい」と同義語。だが、「おいしいコーヒ
ー」よりも、「うまいコーヒー」の方が、何だかもっとおいしい感
じがするのだから、言葉とは不思議なものである。

 もっとも、その店の出すコーヒーが、本当に「うまいアイスコー
ヒー」なのかどうかまでは確かめてみなかった。
 もしも客から、「全然、うまくないじゃないか!」というクレー
ムが来た時には、こう答えるのかもしれない。
「どこにも、『当店で』とは書いてなかったはずですけど……」


  明日、新内閣誕生。サプライズ人事は、あるでしょうか? 
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コーヒー(笑ートエッセイ)

2010-09-13 08:52:07 | 笑ートエッセイ
 子どものころ、コーヒーを飲めるようになりたいと思っていた。
 コーヒーを格好良く飲めることが、大人になったことの証のような気
がしたからである。
 しかし、その苦さは、とても子どもには挑戦できるものではなかった。

 高校生になったころ、ようやく口にすることができるようになった。
 とは言え、砂糖2杯半、ミルクたっぷりというお子ちゃまコースであ
る。
 
 それが不思議なことに、時がたつにつれて、だんだんと砂糖の量が少
しずつ減り、ついにはゼロというところまでこぎつけたのである。
 本を片手に、ブラックコーヒーを味わう。これぞまさに理想の大人の
姿……と思っていたのだが、とてもそんな実感はない。
 やはり、200円のドトールコーヒーでは、無理な話なのだろうか?
(高級なコーヒーを飲んでも同じ結果だと、私の人間性に問題があるこ
とが明白となってしまうので、なかなか挑戦できないでいる)


  今日は、一転して涼しい小雨の日。ようやく暑さが一息つきそうで
  す。  

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講演会(笑ートエッセイ)

2010-09-09 00:31:42 | 笑ートエッセイ
 講演が終わり、質問タイムとなった。
 初老の男性が、勢いよく手をあげた。指名を受けしゃべり始め
たが、場慣れしていないのだろう。
 なかなか要領を得ない話になっている。
 ようやく長い質問が終わった。
 すると、講師(かなりの有名人)が一言。
「質問の意味がよく分からなかったので、はい、次の方」


  台風の勢力はそれほど強くなかったのに、思わぬ地域で大水害が
  起きたようですね。
  自然の怖さを思い知らされます。 
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講演会(笑ートエッセイ)

2010-09-04 23:58:53 | 笑ートエッセイ
 ある講演会の出来事である。
 講演の最中に、携帯電話の着信音が会場に鳴り響いた。それ
もやけに大きく、なかなか鳴り止まない。
 聴衆の顔が、だんだんと険しくなる。
 しばらくして、ようやく止まった。と、その時である。壇上
の講師が、「もしもし、今講演中なんで、後で……」としゃべ
り始めた。
 会場に、何とも言えない沈黙が流れた。
 聴衆の表情が、ぽかんとした顔に変わった。


  新生ジャパン、見事な勝利でした。
  ワールドカップに香川を出していれば……って、過去にこだわる
  のはやめましょう。 
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救急車(笑ートエッセイ)

2010-09-01 00:43:50 | 笑ートエッセイ
 自慢ではないが、救急車に運ばれた経験がある。
 朝、目が覚めて立ち上がろうとすると、腹がずきんと痛むのだ。
少し様子をみていれば治まるだろうと思っていたが、治まるどころ
かますます痛みがひどくなる。
 ついにはうめき声をあげるほどの猛烈な痛みとなり、家族に救急
車を呼んでもらう羽目になった。

 車がほどなく到着。すぐに担架に乗せられ、車内に運び込まれる。
 家族が、隊員に状況を伝えている。無線で、どこの病院に搬送す
るのか連絡をとっているようだ。
 運ばれるのが自分自身の体なのだから、何だか不思議な気分であ
る。気のせいだろうか。さっきより、痛みが治まってきたようであ
る。

 10数分後、病院に着く。
 幸か不幸か、痛みが完全に消えている。もう何ともないのだ。し
かし、だからと言って、担架から降りて、走り回るわけにもいかな
い。
 何しろ、担架で運ばれてきた救急患者(私のこと)を、病院に来
ている多くの人間が、同情あるいは好奇の眼差しで見つめているの
だ。
 そんなことをすれば、せっかくここまで運んでくれた救急隊員や、
心配そうに付き添ってくれた家族の顔が丸つぶれである。いや、何
よりも、私自身の立つ瀬がないではないか。

 当然のことながら、私は相変わらず担架に横たわり、腹を手で押
さえ、顔をゆがめる仕草をした。私の名演で、どうにかその場のピ
ンチ(?)をくぐり抜けることができたのだ(ひょっとして、目の
鋭い一人の救急隊員だけは、見抜いていたかもしれないが)。

 結局のところ、軽い結石との診断で、数日間入院することになっ
た。その間にも、断続的にあの痛みが襲ってきて、苦しめられるこ
とになった。
 しかし、演技のことは黙っていたおかげで、スタッフや家族の手
厚い看護を受けることができた。

 やはり、救急車に乗せられた場合は、万が一、痛みが治まったと
しても、苦しい表情を保っておくに越したことはないようである。



  いやあ、民主党代表選、サプライズの結末となりましたね。
  マスコミの皆さんも、ネタがなくならずにホッとしたのではな
  いでしょうか。 

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