わたしは、いつも母の老人ホームへ訪問したら一泊二日の行程で出かけます。
そこには、発語がまったくなり、一人ではなにもできない母がいます。施設の介護人に世話されていても個人的にはひとりぼっち。ひとりで老衰と静かに戦っています。施設に肉親が訪れると顔が晴れやかになり安心した顔になります。
母を心をこめて9年老老介護をして逝った父が心配しているでしょう。
父「わたしは仕事仕事でお母さんにはずいぶん苦労をかけてしまった。恩返しに世話をするよ」
母は認知症にかかったばかりのころは不安がりぽろぽろ泣いていてばかりいて、ベッドに寝込んで30分ごとに父を呼んでいたようだ。
涙を流しながら「私が先に死ぬなんて・・・・・想定外だった。女房に先に逝かれた男ほど憐れなものはない」そう言って泣くのである。
なあに、案ずるより産むが易しで、仕事の鬼だった父は介護から食事、掃除とこなしていった。
うるわしい夫婦愛とは、かようなことを言うのであろうか?
最後まで子供に助けを求めず、すべて母の世話をした父は、95歳で心臓発作で浴室で逝きました。急死でした。
父は遺書を残しませんでしたが、このようなメモを残しました。
「今ある財産はこれこれ。お母さんを
頼む。余生を安楽に過ごせるだけのものは残したつもりだ。
お母さんをよろしく頼むよ(後略)」
わたしは、父の心残りを果たすため、往復10時間かけて、母の様子をできるかぎり見に行こうと思うけれど、これが、なかなか行けないのですな。高年齢だが元気だった父は逝き、ベッド生活が長い8歳下の母が生き残り、やはり想定内の状態になりました。
東京⇔新潟の新幹線のなかで、死を相手に孤独に1人で戦う母のことを思い浮かべると、不思議な感慨にとらわれます。
人生の正体見たり・・・・・・・・・。やはり諸行無常か・・・・・・・・
諸行無常:仏教用語。仏教の根本主張である三法印の一。世の中の一切のものは常に変化し生滅して、永久不変のものはない。(デジタル大辞泉)
つまり、「この世のあらゆるものはすべて移ろい行く」。「形あるものは必ず壊れる」ということですね。
(べつにワタクシは仏教徒ではないと思っていますがね)
カール・ブッセ作詩「山のあなた」のメロディー
公開日: 2013/09/15
上田敏訳詩によるカール・ブッセの「山のあなた」に曲を付けました。バックの写真は、2002年・群馬県榛名山中とその周辺で撮りました。作曲は 太田あきら です。
《カール・ブッセ
カール・ヘルマン・ブッセは、ドイツの詩人・作家。 プロイセンのポーゼンに生まれ、新ロマン派に属した。ヘルマン・ヘッセの詩才を高く評価し、ヘッセの『詩集』を、自ら編集する「新進ドイツ抒情詩人」シリーズに加えている。 日本では、上田敏が1905年に訳詩集『海潮音』に収めた「山のあなた」で知られる。 ウィキペディア
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桂枝雀 Shijaku Katsura 山のあなた 落語 Rakugo