とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

二方向避難できない「既存不適格」のリスク 大阪・北新地ビル火災    2021/12/23 21:00   産経新聞

2021年12月24日 22時53分36秒 | 今日のニュース

火災時に被害拡大を防ぐには、2つの避難ルートを確保する二方向避難が有効とされる。建築基準法も一定の基準を満たす建造物に対し、2つ以上の地上に通じる階段の設置を義務付けているが、放火殺人事件が起きた大阪市北区曽根崎新地のビルは階段が1つしかなかった。建築当時は合法だったが現在の規定には適合しない、いわゆる「既存不適格」だったとみられる。同様のビルは全国に多数あるが、対策にはコストと時間が必要だ。専門家は建て替えを支援する融資制度の創設などで建て替えを後押しする必要があると訴える。

法で義務付けも

事件の現場となった堂島北ビルは昭和45年に建てられた。鉄筋コンクリート造り8階建てで大通りに面し、奥に細長い構造になっていた。

4階クリニックはエレベーターを上がると、待合室や受付のスペースがある。患者らはそこで待機後、奥にある診察室などに進む仕組みだったとみられる。

建物で火災が起きた際に備え、古くから二方向避難が重要とされる。1つの避難ルートが断たれても、別のルートがあることで被害拡大防止が期待できるからだ。

建築基準法施行令は6階以上の建物に対し、地上につながる階段を2つ以上設置するよう義務付けている。ただ国土交通省によると、この規定は昭和49年に追加されたもので、45年に建てられた現場ビルには適用されない。

コストと時間

このため、現場ビルでも非常階段はエレベーターの隣にある1カ所だけ。現在の基準に適さない既存不適格だった可能性があるものの、改築などがなければ直ちに改善することは義務付けられていない。

建築の防災に詳しい大阪工業大学の吉村英祐(ひでまさ)特任教授の推計では、昭和45年以前に建てられた住宅を除く建物の総床面積は、国内全体の約12%を占める(令和2年時点)。ただ新たに階段や、避難上有効なバルコニーを設置するにはコストや時間が必要だ。吉村特任教授は「経済的な問題に加え、階段をつくれば居室に使える面積も減ってしまう。既存不適格のままのほうが都合がいいと考える人もいるだろう」と話す。

リスクに公共性

一方で事件は、二方向避難の重要性を改めて突きつける結果となった。

捜査関係者によると、谷本盛雄容疑者(61)はエレベーターで来院し、非常階段の付近に放火した疑いがある。唯一の避難経路が炎や煙でふさがれ、居合わせた人たちが逃げ場を失った可能性が高い。

神戸大学都市安全研究センターの北後(ほくご)明彦教授(防火避難計画)は、二方向避難ができないビルの多くは老朽化が進んでいるとして「(所有者が)建て替えも視野に対応を検討すべきだ」と指摘。中には収益性の高い場所に立地するビルも少なくないとして、「費用について、公的な融資制度を確立することで所有者を支援する方法もある」と話す。また階段を新設する場合は、敷地面積に対して建築可能な床面積を示す「容積率」の対象面積から階段部分を除外する緩和策も考えられるとした。

倒壊リスクのある空き家の解体費用の補助制度は全国に広がる。こうした対策を参考に「行政も既存不適格のビルのリスクを把握し、対応を進める必要がある」と述べた。

「前通るたびつらい」=現場ビル、献花絶えず―大阪ビル放火

 放火殺人事件から1週間となり、たくさんの花束が供えられた現場前=24日午前、大阪市北区© 時事通信 提供 放火殺人事件から1週間となり、たくさんの花束が供えられた現場前=24日午前、大阪市北区

 大阪市北区のビル放火事件から1週間を迎えた24日、現場となった雑居ビルには献花や黙とうに訪れる人が後を絶たず、メッセージの書かれた色紙や千羽鶴も供えられていた。火元となったクリニックに通院していた患者からは「前を通るたびにつらくなる」と悲痛な声が聞かれた。

 昨年12月から通院していたという男性会社員(58)は「安らかにお眠りください」という思いで祈りをささげた。今月6日、亡くなった西沢弘太郎院長(49)の診察を受け、「ちょうど1年になりますね。もう少し様子を見ましょう」と言われたのが最後だった。

 男性は「ビルの前を通るたびにつらくなる。容疑者の動機は想像もつかないが、このまま死ぬのではなく、自分の口で話してほしい」と憤った。

 「現場に来るのが怖かったが、1週間たってようやく足が向いた」と献花に訪れたのは、大阪府茨木市の女性会社員(28)。事件のあった17日夜に受診する予定だったといい、「事件後はパニック状態で、職場で泣き崩れる毎日だった。西沢先生のおかげで今の私がある」と涙ぐんだ。

放火殺人事件から1週間となり、現場のビル前に供えられた花束=24日午前、大阪市北区© 時事通信 提供 放火殺人事件から1週間となり、現場のビル前に供えられた花束=24日午前、大阪市北区

 容疑者は京都アニメーション放火殺人事件を参考に、ガソリンをまいて火を放ったとみられ、刃物や催涙スプレーも所持していたとされる。患者で神戸市の40代女性は「人間のできることなのか」と怒りをあらわにした。

 勤務先が近いという同府豊中市の会社員北西紗耶佳さん(42)も、娘(4)と一緒にクッキーを供えた。北西さんは「本当に何でこんなことが起こったんだろう」と沈痛な表情で話した。 

 大阪市北区曽根崎新地のクリニックで起きた放火殺人事件で、意識不明の重体となっている谷本盛雄容疑者(61)は、一酸化炭素(CO)中毒による蘇生後脳症(低酸素脳症)の状態にあることが、捜査関係者への取材でわかった。脳に深刻な障害を負い、事情聴取ができるような回復は難しいという。刑事責任を問うことは極めて困難な見通しとなった。

 捜査関係者によると、谷本容疑者は放火後、クリニック内から心肺停止状態で搬送され、大阪市内の病院の集中治療室で治療を受けている。搬送後に蘇生したが、脳に十分な酸素が届かず、蘇生後脳症の状態が続いているという。

 蘇生後脳症は、心肺停止からの回復後、脳への酸素供給が途絶えたことで起きる脳障害。いったん命を取り留めても、何らかの障害が残ることが多く、植物状態や脳死となり、死亡に至ることもある。

 この火災では、クリニック内にいた患者ら26人が心肺停止状態で救急搬送され、うち25人が死亡。死因は24人がCO中毒、1人がCO中毒に伴う蘇生後脳症だった。残る女性1人は重篤な状態が続いている。

 谷本容疑者は17日午前10時15分頃、ビル4階の「西梅田こころとからだのクリニック」に侵入し、ガソリンをまいて火を付けたとされる。火災後、出入り口に最も近い場所に倒れており、到着した救急隊に最初に運び出されたとみられている。

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