「はーい、もしもし、おはよう。珍しく早い時間の電話ね」
「そうなの。あなた、ジュリエット・グレコって知ってる?」
いきなりの愚問に一瞬息をのむ。わたしだってなんの通でもないし、通にもなりたいと思わないし、ただ好奇心で生きているのだけれど、あなた音楽家でしょ。ジュリエット・グレコの名前ぐらい聞いたことないの?と言いたいのをぐっと抑える。
「うーん、一応名前は知ってる」
「へー、有名な人?曲聴いたことある?」
「うーむ、一応。」
「かなり高齢だけど、まだ歌っていて来年日本へ来てコンサートをするらしい。それで引退するらしいの。人は美しいうちに去った方がいいと考えたんだって」
「いいんじゃない?驚くべきこと何もないと思う。おそらくフランスは日本とちがって若ければいいって考えないと思う。みんなで人生精一杯生きて互いの成熟を楽しむ文化じゃないのかな?グレコってたしか90歳近いと思ったけど」
「ええとね、曲目は「パリの空の下」とか。あ、これはピ、ピアフって人も歌ってるよ」
「それで私に言いたいことって何?」
「こういったさよなら公演ってどんなだか聴いてみようと思うの。7000円だけど、切符はたぶん今から手配しないとすぐ売り切れるから。あなた行かない」
「「行きません」
「あ、そう。あんたって本当に出不精ね」
「そうです。ごめんなさい。ものすごい出不精なのよ」
不満げに電話を切った彼女。
わたしはと言えば、もう一度寝たくなった。
しかし、今度、グレコについてまた電話が来た時のために、ちょっとまとめてみました。
【美輪明宏】ジュリエット・グレコについて
「パリの空の下」(パリのそらのした、フランス語: Sous le ciel de Paris)は、ユベール・ジロー (Hubert Giraud) 作曲のシャンソン。ジャン・アンドレ・ドレジャック (Jean André Dréjac) の歌詞が付く。
フランス映画『巴里の空の下セーヌは流れる』(Sous le ciel de Paris)の挿入歌でもあり、リーヌ・ルノーが創唱した。エディット・ピアフの録音がかなり普及している[1]。旋律に関しては認知度が高い。歌なしで演奏されることも多い。
カヴァー
創唱したのはリーヌ・ルノー
Line Renaud - SOUS LE CIEL DE PARIS
有名どころではエディットピアフ
Edith Piaf - Sous le ciel de Paris
そしてジュリエット・グレコ
SOUS LE CIEL DE PARIS パリの空の下 ジュリエット・グレコ UPG‐0097
そして、いま、一番ぐっとくるのが「聞かせてよ愛の言葉を」であります。
聞かせてよ愛の言葉を ジュリエット・グレコ UPG‐0098
時間のある方は、ついでにこれも聴いておこう。『枯葉』
Juliette Greco - Les Feuilles Mortes
《おまけ》あら、本当に公演がある。
自分にとって若き日の思い出になっているのでもう勝手に
亡くなっているものと思っていました。
それに何より私が若かった時も 成熟した魅力があったのでもっとずっと歳がいっているものと思っていました。
今のグレコがどんな雰囲気の歌を聴かせてくれるのか興味深くはあります。
仰る通り若ければいいという文化とフランスは違いますよね。
シックで大人の感性の文化だと・・・。
聴かせていただきました~ 「聞かせてよ愛の言葉を」
大好きな曲でした。 グレコの「枯葉」も・・・
若い頃聴いたあるいは 親しんだ曲を聴くと途端に若き頃の時間が流れるのが不思議です。
ありがとうございます。