予想以上の圧勝だった。リーマン・ショック後の世界的な不況で「派遣切り」が流行語となったこの年、都市部から地方まで日本中で「反自民」の逆風が吹き荒れ、閣僚経験者や海部俊樹元首相までも吹き飛ばした。
「積年の不満が……」
民主党は公示前の115から308まで議席を積み上げ、単独過半数(241議席)を大きく上回った。
自民党は公示前に300あった議席が119となり、1955年の結党以来、初めて第1党の座を失う惨敗となった。
「積年の自民党への不信、不満が集積された」
硬い表情で取材に応じた麻生太郎首相はこの日、自民党総裁の辞任表明に追い込まれた。
「政権のたらい回し」
自民党は小泉純一郎元首相が郵政民営化を争点に掲げた05年の衆院選では296議席を獲得し大勝した。だが、次第に格差の拡大や地方の疲弊など「改革」のひずみが表面化。一時は小泉氏に熱狂した有権者も自民党を見放し始めていた。
「小泉後」に首相についた安倍晋三、福田康夫両氏は就任からわずか1年で退陣。「政権のたらい回し」と批判を受ける中、「選挙に勝てる顔」として就任したのが麻生氏だった。だが、衆院解散を先送りし続け、その間に度重なる失言や漢字の誤読で、支持率は1割台まで下落した。
噴き出した「麻生降ろし」
さらに解散・総選挙が間近に迫った09年7月の静岡県知事選では、自民党と公明党が推薦する候補が敗北する。続く東京都議選でも、民主党が第1党に躍進する一方、自民、公明両党を合わせた議席は過半数を割り込んだ。
「麻生首相の下では戦えない」
都議選での敗北後、自民党内では「麻生降ろし」の動きが活発化した。地方選連敗の総括を求め、党大会に次ぐ意思決定機関となる「両院議員総会」の開催を求める署名には一時、党所属国会議員の3分の1を超える133人が加わり、党内は混乱した。
逆風の中、石破氏は圧勝
このとき署名に加わった議員の中には石破氏もいた。当時、石破氏は農相。主要閣僚が署名に同調したことで、麻生政権の弱体化をより強く印象付けた。
結局、総裁選前倒しの動議など不測の事態につながることを懸念した党執行部が「反麻生」勢を押し切り、総会の開催は見送られた。
アサ芸biz の意見 10/17
衆議院選挙が10月15日に公示され、12日間の選挙戦が幕を開けた。選挙の大きな争点のひとつが「選択的夫婦別姓」。石破茂総理は、先の総裁選では選択的夫婦別姓制度の導入について「つらい思い、不利益は解消されなければならない」と賛成の意向を明らかにしていたが、いざ総理になると一転して消極的な立場をとっている。
14日放送の日本テレビ系情報番組「news zero」に、与野党各党の党首7人が出演。選択的夫婦別姓について、各党首がマルかバツかの2択で回答する一幕では、石破総理を除く6人がマルを挙げ、石破総理はマルでもバツでもない曖昧な回答に終始した。
「石破さんは総裁選中、『やらない理由がわからない』とおっしゃっていましたので、ご自身、賛成の立場だと思いますけれども、党内で導入するという温度感が低い中、党としてまとまらなければ導入しないという方向に舵を切ることもあり得るんでしょうか? それとも党内説得して導入するという…」
石破総理は櫻井キャスターの発言を遮るように、「いや、わが党は専制独裁国家ではありませんから」と猛反論。「総裁がこうだからこうだ、みたいな話にはならないですよね。今、内訳がそういうことになっていて、だとするならば、何も感情的に反対しているわけではないので、別姓になった場合、最初のお子さんと次のお子さんと姓が違ったらどうなるの?みたいな…。わが党は現実的な政党なのでそういうことになったらどうするんだっていう議論、まだあります」と議論を継続していくと主張した。
「石破総理が櫻井さんの指摘に、言葉をかぶせるように猛反論していたのが印象的でした。たしかに総裁選の最中には夫婦別姓制度に賛成の立場をとっていたのが、総理になると一気にトーンダウン。番組では日本テレビ解説委員の小栗泉さんが『これまでも党内の議論は続けられてきた』と指摘して、党議拘束をはずして各議員の判断に委ねてはどうかと提案するも、石破総理は『ひとつのやり方』と認めたうえで、かつての改正臓器移植法案を引き合いに出して『ちょっと違うような気がする』とやんわり否定。この調子だと『議論を続ける』と言うばかりで、選択的夫婦別姓制度の導入は遅々として進まない気がします」(メディア誌ライター)
先の総裁選の決選投票では189人もの議員が石破氏に票を投じたが、必ずしも政策に同意したものではなかったかもしれない。
(福島シゲル)