政令指定都市の大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が1日投開票され、小差で反対が賛成を上回った。地域政党「大阪維新の会」が2010年の結党時から掲げてきた構想は頓挫。制度案は廃案となり、大阪市は存続する。15年の住民投票に続き、2度目の否決となり、維新代表の松井一郎大阪市長は23年4月の市長任期満了での政界引退を表明した。
当日有権者数は220万5730人で、投票率は62・35%(前回66・83%)だった。午後9時から始まった開票作業は最終盤まで賛否が伯仲する展開だった。
維新は大勢が判明した1日深夜、大阪市北区のホテルで公明党と共同で記者会見。松井市長は「私の力不足で2度目の敗北になった。まさに市民の民意としてしっかりと受け止めたい」と語った。会見に同席した維新代表代行の吉村洋文・大阪府知事は都構想に再挑戦しないことを明言した。
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中で行われた住民投票。市の廃止後の住民サービス水準、再編後の財政見通し、成長戦略への効果などが争点になった。維新はコロナ対策で知名度を上げた吉村知事を前面に出す戦略で、テレビCMなども含めた広報も充実させたが、反対派が追い上げて拮抗(きっこう)。終盤は感染防止策で控えてきた屋内の集会も解禁した。反対してきた自民党は府議団の一部が制度案に賛成するなど混乱もあったが、市議団を中心に「正しく知ればノーになる」と制度の問題点や財政面の懸念を訴え続けた。昨年春の知事・市長のダブル選で維新が圧勝して公明が賛成に転じ、都構想の成立は濃厚とみられたが、コロナ禍の状況での住民投票や、メリット一色の制度案の説明に疑問を持つ人も増え、最終的に反対が上回った。
住民投票は12年に超党派の議員立法で成立した大都市地域特別区設置法に基づくものだ。15年には特別区を5区とする案が、賛成69万、反対70万票で否決されたが、昨年のダブル選を経て2度目の住民投票が実現した。否決により、維新は看板政策を失う形になる。国政政党「日本維新の会」の政治的基盤にも影響を与えそうだ。
都構想は、275万人の大阪市を人口60万~75万人で中核市並みの権限を持つ各特別区に再編。教育や福祉など身近な住民サービスを担い、成長戦略やインフラ整備などの広域行政は府に一元化する内容だった。【津久井達】