改造内閣は30点! 森永卓郎氏「景気が悪くなるのも当然です」と酷評

9月13日、岸田文雄首相は内閣改造・自民党役員人事を行い、第2次岸田再改造内閣が船出した。初入閣が11人、女性を過去最高タイの5人を起用するなど刷新感を出した。一方で、鈴木俊一財務大臣や松野博一官房長官などを留任させ、党内でも麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長らを続投させるなど骨格は維持した。
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経済アナリストの森永卓郎さんは、今回の内閣改造・党役員人事を「30点。評価できるポイントが見つからない」と酷評する。物価高に苦しむ国民の生活に変化はあるのか
――今回の改造をどう見ますか。
解散総選挙と来年秋の総裁選の両にらみの改造だと見ています。解散総選挙については、「入閣待機組」(衆院当選5回以上、参院当選3回以上で閣僚経験がない議員)を片っ端から大臣にしました。彼らは1回経験して箔が付けばいいだけですから、政策執行能力は考えなくてもいいのです。いつ代えても支障がないので、政権に都合のいいタイミングで解散できます。
それから総裁選を見据えて、茂木さんを筆頭にライバルとなりそうな人たちを取り込んでいます。彼らが来年秋に控える総裁選に出てこないように抑え込んだのだと思います。また、おそらく次々回の総裁選も睨んでいるのではないでしょうか。小渕(優子)さんを選挙対策委員長に付けることで茂木派内に争いを起こして、茂木さんが次々回の総裁選にまで出てこられないように画策したのだろうなと思います。
――今回の改造はズバリ何点?
――女性閣僚が5人になり、これは過去最多タイです。
それをやっておかないと、延命の意図が見え見えになってしまって取り繕えないからだと思います。
こども政策・少子化担当大臣に加藤(鮎子)さんが就任しましたが、正直言って、岸田政権は「異次元の少子化対策」を本気でやっていく気がないのだな、と思いました。本気だったら経験のある政策執行能力のある議員を入れるはずですから。
――財務大臣には鈴木氏が留任されるなど、骨格は変わっていません。
鈴木さんの留任は予想通りでした、岸田さん自身が緊縮財政派なので。今後も緊縮財政路線は変わらないということです。今回の組閣で国民の生活が改善することはないと思います。解散前に補正予算を組んでくることも予想されますが、それも規模は大きくないでしょう。
岸田政権は今回の物価高対策で、今年度の補正予算の予備費5.5兆円のうち4兆円を新型コロナ対策や原油・物価高対策を目的として計上しています。しかし、国民生活を圧迫しているガソリン補助の期限延長にこの予備費すら使わず、昨年度の二次補正予算の残りの2兆円で済まそうとしています。考えられないです。今使わずにいつ使うのでしょうか。「解散前のバラマキ財源だ」という人もいて、私もそう思っています。
今年度も増収が予想されますが、もしかすると今年度で基礎的財政収支(プライマリー・バランス)が黒字化する可能性があります。それだけ支出を切り詰めていて、岸田政権は歴代内閣と比べると、とてつもない財政緊縮を行っています。景気が悪くなるのも当然です。
――岸田政権はなぜそこまで緊縮財政にこだわっているのでしょうか。
「財政健全化こそ正義」という財務省の考え方に“洗脳”されてしまったからだと思います。彼らには、景気を良くして税収を増やそう、という発想が一切ないのです。増税で税収を増やさないといけない、と考えているんです。国民の生活のことを考える法的な義務はありませんし、一切考えていないと思います。彼らに言わせると、「増税すると勝ち、減税すると負け」なのだそうです。増税した人が出世していくシステムになっているそうで、消費増税をすると“レジェンド”になれるそうです(笑)
――またしても、岸田首相の「聞く力」は発揮されずじまいでしょうか。
財務省にだけ、発揮できたと思います。発表前の予想を上回るほど、何も変えないし、しない内閣なのだと改めて実感しました。これからも財政緊縮が着々と進んでいき、国民の生活は苦しいままだと思います。
(構成/AERAdot.編集部・唐澤俊介)