倉重篤郎のニュース最前線
会員限定有料記事 2020年5月21日 05時00分(最終更新 5月21日 16時50分)
サンデー毎日
PCR抑制策や4日間の自宅待機原則がなければ、救われた命もあったのではないか。政府と専門家委員による筋違いなコロナ対策を当初から鋭く批判し続けてきた上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が、深刻な事態を招いた「戦犯」を名指して告発、厚労省の悪弊を乗り越える道筋を語る。
SNS時代の民主主義のあり方に驚いている。「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッターへの投稿が、5月8日に一人の女性が発信してからまたたくまに400万件を超えた。13日には国会前でコロナを意識したサイレントデモにまで発展した、という。
この動き、畏(おそ)るべしではないのか。与党の国会議員たちはどう見ているのか。二つのことを思い出した。
一つは、1992年に発覚した金丸信元自民党副総裁への5億円ヤミ献金事件だ。検察が公判請求せず罰金20万円の略式処分で終わらせたことに世論が反発、検察庁舎に抗議のペンキがぶちまけられたのをきっかけに検察批判が雲霞のごとく盛り上がり、それが検察を動かし、別事件での金丸逮捕にまで至った一件である。国民の怒りの渦が世論として時代を動かした。この事件を契機に自民党最大派閥が分裂、同党1党支配の終焉(しゅうえん)につながったことは歴史が示すところである。
もう一つは、後藤田正晴元官房長官がよく口にしていた「蟻(あり)の一穴」という言葉である。日本人は良くも悪くも横並びに同じ方向に向け一斉に走り出す癖がある。一種の民族的特性だとも言う。その一穴目をどうウオッチ、見極めるかが政治家としての慧眼(けいがん)であり、勝負どころだと言いたいのだと私は解釈してきた。
それらの伝に倣うと、今回の件も金丸化し始めている。一穴もちらほら見える。法案審議する内閣委員会では自民の一人が異見を唱え差し替えられた。メディアでは、安倍晋三政権寄りと見られていた『産経新聞』が13日付社説で「検察庁法の改正案は内閣委から分離して法務委で審議することが筋」と強調、清水勇男元最高検検事の「権力にやりやすいと思われたら検察は終わり」との寄稿(4月24日付)も掲載している。
私が注目しているのはもう一つの政権寄りといわれる『読売新聞』がどう書くか、である。同社のオンラインサイトから検索すると、私が見た限りでは今年端(はな)からこの問題については社説で一回も取り上げていない(13日現在)。これだけ国論を二分する問題で社論を掲載しないのは不思議である。迷いが感じられる。
この号が出る週明けには穴が増えているかもしれない。「蟻の一穴」政局としてフォローしていきたい。
閑話休題。この稿ではコロナ問題の核心である「PCR検査抑制」問題を取り上げる。なぜそうなったか。誰が戦犯なのかを徹底検証したい。ナビ役は上昌広・医療ガバナンス研究所理事長だ。3月初めの取材の時は、抑制の背景には専門家会議の臨床軽視、秘匿主義という体質があるとして、その歴史的因縁にまで言及していただいた。その情報量と独立的な立場、歯に衣(きぬ)着せぬ鋭い論評は、各国メディアにも珍重されている。
ボタンかけ違いどこで?
「初動で二つのミスがあった。まずは、1月17日だ。国立感染研が…
(残念 ↓)
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