安倍前首相、そろり再始動=影響力、菅内閣でも
自民党の安倍晋三前首相は28日、東京都内で開かれた出身派閥の細田派のパーティーに出席し、壇上に上がってあいさつした。歴代最長を記録した政権運営への協力に謝意を示し、今後も政治活動を続けていくことに意欲を表明。首相官邸を離れて以降、表舞台に出ていなかったが、退陣表明からちょうど1カ月がたったのに合わせて再始動した格好だ。
「一議員としてしっかり菅政権を支えながら、日本のためにこれからも頑張りたい」。安倍氏はパーティーでこう強調。「菅義偉首相に立派に後を引き継いでもらい、本当に安心している」と語った。自身の体調にも触れ、「だいぶん薬が効き、回復しつつある」と説明した。
安倍氏は先月28日、持病の潰瘍性大腸炎の再発を理由に辞任を表明した。その後、菅首相就任までの約半月は各国首脳に退陣を伝える電話会談など残りの職務に当たっていたが、16日の内閣総辞職以降は体力の回復に専念。一部メディアのインタビューに応じる程度の活動にとどめていた。
複数の関係者によると、安倍氏は従来の飲み薬に代わる新しい点滴薬の効果で「体調はほぼ回復した」。趣味のゴルフに近く出掛ける計画もあるという。
完全に復調すれば、国際的な知名度や外国首脳とのパイプを生かし、特使などとして外交面で菅政権を支える考えとみられる。細田派には当分戻らない意向というが、宿願の憲法改正を目指して保守系の議員らとの連携にも力を入れる見通しだ。
先の自民党総裁選で安倍氏は「意中の候補」を公にしなかった。だが、舞台裏では「菅氏が望ましい」と語っており、こうした意向が漏れ伝わって菅氏優位の流れが固まった。総裁として国政選挙6連勝の実績は発言力につながる。退任直前に内閣支持率が急上昇し、国民に「NO」を突き付けられながら官邸を去る形にならなかったこともあり、菅政権でも一定の影響力を発揮しそうだ。