とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

古賀茂明「自民党右派と日本学術会議問題」 連載「政官財の罪と罰」  古賀茂明2020.10.27 07:00週刊朝日

2020年10月27日 18時47分32秒 | 菅政権

古賀茂明「自民党右派と日本学術会議問題」

連載「政官財の罪と罰」

 古賀茂明週刊朝日#古賀茂明
 
古賀茂明氏

古賀茂明氏

 


【写真】学術会議潰しの環境が整ったと思っているのか?

 日本学術会議法には、会員候補は日本学術会議が推薦し、総理はその推薦に基づいて会員を任命すると書いてある。そこに任命拒否を認める条文はない。菅総理の任命拒否は明らかな法律違反である。この法律では、学術会議は「独立して」職務を行うことや政府にその経費を負担させることが規定されるなど、学術会議の独立性を強く保障している。

 その原点は、太平洋戦争の過ちを心の底から反省するというところにある。学問の自由が奪われ、また、多くの学者が戦争に反対することができず、結果的に戦争に加担してしまったという苦い経験への反省から、政府による学問への介入は一切許さないという強い誓いに基づいて作られたのが日本学術会議法である。

 これは、日本国憲法がその前文で、戦争への強い反省とその過ちを二度と繰り返さないと宣言し、憲法9条でその平和主義を極限まで具体化し、さらに、思想信条の自由や学問の自由を何の留保もつけずに保障しているのと同じ根本哲学に基づいている。

 一方、自民党保守派の中には、表向きはともかく本音では、太平洋戦争の過ちを認めず、憲法の平和主義を否定する大きな勢力が存在する。彼らの基本思想から見れば、日本学術会議は存立すら容認できない機関である。だから、彼らは一貫して「日本学術会議潰し」の動きを続けてきた。

 しかし、これまでの歴史を見ると、彼らが執拗に続けてきた学術会議潰しの試みは常に失敗に終わっている。国民の良識が彼らの野蛮な思想を拒否したからだ。

 一方、根本思想の対立の他にも学術会議潰しの理由がある。それは、学術会議が、時に自民党政権の政策を否定する意見を表明することだ。学術会議の存在意義は、政府から独立し、異なる立場で多様な意見を述べることにある。政府と同じことしか言わないなら、この会議の存在理由はない。

 

しかし、独裁的な体質を持つ自民党保守派から見れば、自分たちの政策に異を唱える機関など許されない。

 第三者の意見を聴くというアリバイ作りのためなら、息のかかった委員による審議会や有識者会議を利用すれば十分だ。彼らにとって、日本学術会議は百害あって一利なしの機関なのだ。

 安倍政権時代に築き上げたマスコミ支配と官僚支配によって、学術会議潰しの環境が整ったと菅総理は考えているのかもしれない。本音を隠すことによって身を潜めてきた自民党の好戦的右翼層がついにその仮面を脱いで平和主義の転覆と基本的人権の抑圧に向けて堂々と動き出している。この動きを放置すれば、民主的選挙で独裁政権が生まれるかもしれない。

 一般の人々が自分は学者じゃないから関係ないと思っているとしたら大きな間違いだ。すぐに身の回りでも同じことが起きていることに気付くことになるだろう。日本の平和主義・民主主義は戦後最大の危機を迎えている。その象徴が今回の事件だ。あの時声を上げておけばと後悔しないように、私たちはもっと危機感を強め、日本学術会議とともに声を上げなければならない。

週刊朝日  2020年11月6日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「まるで戦前戦中だ」 気に... | トップ | オリンピックの不祥事か!?... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

菅政権」カテゴリの最新記事