福島原発の燃料デブリ、新たな取り出し方法浮上 造船技術を応用
毎日新聞 2023/1/5 10:30(最終更新 1/5 10:30) 有料記事 2389文字
事故を起こした東京電力福島第1原発の廃炉作業で最大の難関とされているのが、炉心から溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しだ。1~3号機で発生し、事故から12年近くたっても手付かずの状態が続いている。そんな中で、新たな取り出し方法が検討されている。造船で使われる工法を応用するのだという。実現可能性を探った。
福島第1原発の廃炉作業の技術的な支援などをする原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は毎年秋に、さまざまな課題について技術的な提言などを記した「技術戦略プラン」を公表している。その2022年版(182ページ)では、燃料デブリの取り出しについて、新たに「船殻(せんかく)工法」という方法が提示され、目を引いた。
船殻工法は、名称が示すようにタンカーなどの造船で使われるものだ。これを原発に当てはめ、船体と同様の鉄製構造物で原子炉建屋全体を囲って水を張る。その水の中で燃料デブリを取り出す方法だという。22年9月に戦略プランの概要版が公表されると、発表の記者会見では記者から質問が集中した。
ただ、NDFの幹部は「まだアイデア段階にすぎません」「複数ある案の一つだ」と繰り返し、どの案を採用するのか検討は続いていることを強調した。
そもそも、これまでにどんな案が俎上(そじょう)に載っているのだろうか。
燃料デブリは、事故で冷却機能が失われた1~3号機の炉心で、高温になった核燃料が周囲の部品を巻き込みながら原子炉格納容器の底などに溶け落ちたものだ。その量は3基で合わせて推計約880トンに上る。炉内へ流れ込んだ雨水や地下水が触れることで、汚染水の発生原因にもなっている。
強い放射線を出すため、人は近づけない。このため遠隔操作ロボットなどによる調査を何度もしてきたが、全容は明らかになっていない。国や東電は23年度をめどに、まず2号機で少量を取り出し、その後、徐々に規模を拡大。30年代に1~3号機で「大規模取り出し」に取りかかる予定だ。
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