昨日の夜は、映画『残菊物語』のDVDを観ていました。
明治初期。
2代目・尾上菊之助は養子ながら歌舞伎の名門、五代目菊五郎の後継者。
芸はまだまだ未熟だったが、そのことを指摘する人は周囲にいなかった。
義父の菊五郎は名人として知られ、芸に厳しく、後継者である菊之助の芸に不満を持っていたが、周囲を慮って上手く菊之助に注文を付けることが出来ないでいた。
菊之助は義父である菊五郎との差に悩み拗ねて芸に身が入らず遊び惚けていた。
お徳は尾上菊五郎の実子である幸三の乳母。
お徳は芸に身の入らない菊之助を心のこもった言葉でたしなめる。
菊之助はお徳の言葉に感激し精進するようになったのだけれども……。
菊之助とお徳の間柄を邪推した菊五郎夫婦はお徳を解雇してしまう。
お徳を心の拠り所としていた菊之助は、菊五郎夫婦に反発し家を飛び出して……。
監督は、溝口健二。
出演者は、花柳章太郎、高田浩吉、川浪良太郎、高松錦之助、葉山純之輔、尾上多見太郎、結城一朗、南光明、伏見信子、中川芳江、河原崎権十郎、森赫子、花柳喜章、志賀廼家辨慶、磯野秋雄、嵐徳三郎、梅村蓉子、など。
原作は、村松梢風の同名の小説です。
3度映画化されていますね。
私が今回観たのは1939年版の『残菊物語』です。
芸事を描いた悲恋の物語であります。
悲恋の物語ではあるのですが、でもでもそれだけではないような気がします。
お徳は健気で献身的な女性に見えるけれども、物凄く意地っ張りで誇り高いようにも思えるのです。
意地の悪い見方をするならば、お徳には尾上菊之助という作品を作り上げるという喜びがあったのでは?
だからこそ尾上菊之助という作品を完成させる為には自分は身を引かなければならないという発想に至ったのでは?
健気で献身的なだけでなく、自分の作品を完成させることに対して意地も張るし誇りもある。ということなのでは?
この物語で、お徳は女として全ての面目は立つのです。
途中で降りたなら楽になれます。
途中で降りるタイミングは無数にあります。
でも降りたら女としての面目が経たない部分が出来てしまう。
お徳の女としての面目に対しての意地を描いたお話なのではないか? とも私には思えるのです。
面白かったですよ。
大傑作であります。
お勧めですよ。
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