狐の日記帳

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恐怖は、混乱し錯乱した想像から生じます。常に平静な判断力が働くように心掛けるべきです。

2020年06月27日 12時59分44秒 | その他の日記
 以下の文は、ニューズウィーク日本版のジェレミー・ファウスト(ハーバード大学医科大学院保健政策・公衆衛生部門講師)氏の『ダイヤモンド・プリンセス号の感染データがあぶり出す「致死率」の真実』と題した記事の転載であります。



 『ダイヤモンド・プリンセス号の感染データがあぶり出す「致死率」の真実』
 2020年3月11日


 新型コロナウイルスが、世界中でパニックを引き起こしている。
 薬局から手指消毒剤が姿を消し、オンラインではN95マスクがとんでもない高値で取引されている。
 そのどちらも、まるで1918年に数千万人が命を落としたスペイン風邪の再来のような騒ぎだ。

 確かに、現在報じられているCOVID-19(2019年型コロナウイルス感染症)の致死率は2〜3%で、スペイン風邪に近い水準だから、不安に駆られるのは無理もない。
 だが最終的にこの数字はもっと低いことが明らかになるだろう。
 米国立衛生研究所(NIH)と米疾病対策センター(CDC)が言及した1%という致死率さえも、このウイルスの威力を過大評価している恐れがある。

 新型ウイルスの発生初期に、推定致死率が過度に高く報じられるのはよくあることだ。
 2009年に流行したH1N1型インフルエンザは当初、最終的な致死率1.28%の10倍近い数字が取り沙汰された。
 今回も同じような現象が起きている。

 新型コロナウイルスの感染者が湖北省武漢で爆発的に増えたとき、致死率は4%超とされていた。
 やがて湖北省の他の地域に感染が広がると、致死率は2%に、中国全体に広がると0.2~0.4%に低下した。
 無症状者や軽症患者も検査対象に含められるようになると、より現実的な数字が明らかになってきた。

 WHO(世界保健機関)は最近の報告書で、世界的な致死率を3.4%と予想以上に高く示したが、パニックに陥る必要はない。
 最終的には、この数字が1%を大幅に下回ることを示唆する、極めて直接的かつ説得力のある証拠が存在する。
 それは豪華クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の感染データだ。

 語弊を恐れずに言うと、隔離されたクルーズ船は、ウイルスの性質を研究するには絶好の実験室だ。
 何しろ、通常はコントロールできない多くの条件がそろっている。
 ダイヤモンド・プリンセスの場合、乗客・乗員3711人のうち、乗船時に新型コロナウイルスに感染していたのはたった1人で、それ以外は基本的に旅ができるほど健康で、限られた場所(船内)でウイルスにさらされた。

 中国からは恐ろしい数字が発表されていたが、そのうち何人が別の病気を持っていたかは分からない。
 いったい何人が命に関わる別の病気で既に入院していて、そこで新型コロナウイルスに感染したのか。
 健康だったのに、このウイルスに感染して、重症化したのは何人なのか。
 一般的な環境では、こうした情報を知ることはできない。
 だから正確な致死率をはじき出すことが難しい。

 中国の年間死亡者数は900万人。つまり新型コロナウイルスがなくても、1日に2万5000人、この2カ月なら約150万人が死亡していた計算になる。
 このうちかなりの割合が「たばこ病」とも言われる慢性閉塞性肺疾患(COPD)や下気道感染症、そして肺癌による死だ。
 その症状は、COVID-19の重い症状と区別がつかない。
 中国のCOVID-19による死者は、長年の喫煙習慣によりCOPDを発症するのと同じ年齢層で急増した(中国では成人男性の半分が喫煙者だ)。
 中国の感染拡大のピークとなった1〜2月初旬、1日約25人のペースで死者が出たが、そのほとんどが一般にCOPDが幅広く見られる高齢者だった。
 また、死者の大多数が集中した湖北省は、肺癌とCOPDの罹患率が中国の平均よりも著しく高い地域だ。
 1日2万5000人の死亡者に占める25人のうち、新型コロナウイルスだけが原因で死亡した人と、合併症が原因で死亡した人を見分けるのは容易ではない。
 しかし重要なのは、新型ウイルスによって、通常より死亡者数がどのくらい増えたのかだ。
 そこで重要な視点をもたらしてくれるのが、ダイヤモンド・プリンセス号のデータだ。
 乗員・乗客3711人のうち、陽性と判定されたのは705人以上(船内の環境とウイルスの感染力を考えると驚くほど少ない)。
 その半分以上は無症状だった。
 そして死者は6人。
 つまり致死率は0.85%だ。

 患者の死因を見極めるのが非常に難しい中国などとは異なり、この6人は超過死亡(新型コロナウイルスがなければ生じなかったはずの死亡)だと考えることができる。
 何より重要なのは、この6人が全員70歳以上だったことだろう。
 70歳未満の乗客は1人も死んでいない。
 中国の統計が正しいなら、ダイヤモンド・プリンセスでも70歳未満の乗客4人が死んでいなければならない。
 だが、そうはならなかった。

 ダイヤモンド・プリンセスのデータは、70歳以上の致死率は中国の統計の8分の1(1.1%)、80歳以上の致死率は3分の1(4.9%)であることを示唆している。

 もちろんこれらの数字も懸念すべきものではある。
 だが、ダイヤモンド・プリンセスで陽性とされた人は、高ウイルス量に繰り返しさらされた可能性が高い。
 また、一部の治療は遅れた。つまり、きちんとした手順が守られていれば、ダイヤモンド・プリンセスでの致死率はもっと低かった可能性があるのだ。
 さらに、乗客はクルーズ船の旅に参加できるほど健康だったとはいえ、一般的な人口を反映して、多くの人が生活習慣病を抱えていただろう。
 従ってダイヤモンド・プリンセスのデータに基づく推定致死率は、合理的と考えてよさそうだ。

 これらの事実を合わせて考えると、新型コロナウイルス感染症は、ほとんどの若者にとっては比較的良性の病気である一方で、一部の生活習慣病を抱える高齢者にとっては、深刻な病気である可能性を示している(それでも報道されているほどのリスクはないだろう)。

 中国では10歳以下の感染者数百人のうち死者はゼロで、健康な成人感染者(高齢者以外)の致死率は0.2〜0.4%だ。
 おそらく検査を受けていない大量の無症状感染者を含めれば、もっと低くなるだろう。
 若者の致死率が低いことを考えると、私たちがいま集中して資源を投じるべきなのは、健康な人への感染を防ぐことではなく(いずれにせよ感染拡大は不可避だ)、重症化するリスクが高い人たちを守ることだ。
 対象となるのは、70歳以上の全人口と、この種のウイルスに対してもともと高いリスクを持つ人たちだ。

 つまり重点的に対策を講じるべきなのは、学校ではなく老人ホーム、飛行機ではなく病院だ。
 高リスクグループは比較的限られているが、彼らを適切に守らなければ、その致死率は悲劇的に高くなりかねない。

 幸いこのウイルスの感染力や潜伏期間、そしてハイリスク者の人物像や居場所は分かっている。
 食料やマスクを買い込む健康な人たちは、不安を的外れなエネルギーに変えているにすぎない。
 本当にリスクにさらされている人たちを守るのに役立たないなら、その行動は貴重な資源の無駄遣いになりかねない。

                               転載終わり。



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