野に撃沈2

多摩地区在住の中年日帰り放浪者。(k10D→k7→k30→)k‐5Ⅱsを忍ばせ、人気のない野山や公園、路地裏を彷徨い歩く

やがては土に還る

2012-11-27 | 旅行

 

 二日だけ休みが取れたので、栃木の辺りを一泊旅行してきた。朝早く高速に乗って日光の植物園へ。思ったより早く9時の開園より10分前に着いた。この時期来園者は殆どいないようだ。2時間いた間ほかの人を見ることはなかった。

 辺りはすっかり枯葉色に覆われている。もう初冬といってもいい雰囲気だ。

 

 それでも花や花の名残を見つけることができるのが嬉しい。

 海星のような形をした真紅のマルバマンサクの花

 

 リンドウは葉を紅葉させたまま花をつけていた。

 

 タマアジサイだろうか

 

 殆どの花は終わり名札だけがかつての花のあった証として残されている。実は滅びて名だけ残される。

 

  サラシナショウマの枯れたものか

 

 イカリソウの葉が鮮やかに紅葉している、葉脈が血脈のようで痛々しい。

 

 果肉が削げ落ち、種だけが残されたマムシ草の仲間

 

 花たちは今年もそれぞれの終わりを迎え、そしてやがては土に還っていく。何の感懐も持たず、滅び行く定めへの未練や煩悶も抱くことなくあっさりと土に還っていく。

 道は敷き詰められた枯葉でいっぱいだ。土に還る寸前の枯れ葉たちは、踏みしだいても最早音を立てることもない。

 

 ひとしきり吹いた風がまた枯葉を落とし、木々はむき出しの樹肌をさらけ出し、己が身から生き物の気配を振り落していく。

 

 それでもまだしぶとく色を残した大木が此処にはあった。

 

 

 僅かに残された色が池の水面を紅く染めている。まるで鏡面に写しわが身の最後の姿を目に焼き付けているようだ。

 

 園の奥へ歩を進める

 

 旧田母沢御用邸の塀を抜ける

 

 人の来なくなった園内は枯草で覆われていて、水芭蕉池も埋もれて見えない。

 

 せわしなく奇声を発しているのはカケスのようだ

 

 頻りに餌を啄んでは此方を窺っている。

 

 

 中空に残されたウメモドキの赤が命の残り火のようでジンと胸に来る

 

 不意に何かに怯えたかのようにリスが木の根元を駆け抜けていった。

 

 通御橋を渡った

 

 下を流れる田母沢川は、初冬の穏やかな日差しを浴びて煌めきながら、ゆったりと音も立てずに流れていた。今流れている川の水は、遥か遠い昔にこの川を流れたことが果たしてあったのだろうか。

 

 こうして季節はあっという間に巡り去り、私を喜ばせてくれた花たちも色を失い、ひとまずは土へと還っていった。そしてそれを愛でる私も幾度かそれを繰り返した後、やがては共に大地へと還っていくのだろう。今の私の体を作っている原子たちも、昔は何かの生き物の体の一部だったように、土に化した私の原子たちも何時かは他の生き物の体に入り、違う生命を得て見たことのない世界を歓喜とともに駆け巡るのだろうか。

 

 物言わぬ含満ヶ淵の石仏たちがじっと川面を見つめていた。