尾瀬沼の畔に着いたあたりから、予想した通り雨が降ってきた。沼を前景に燧ケ岳がやっと頂を覗かせた。
時刻は12時を少し過ぎたところ、今晩は見晴らしまで行く予定なので歩を速めることにした。
足元では、早春をミズバショウとともに彩るリュウキンカやツボスミレ、イワカガミといった花が顔を覗かせている。
ものの本ではミヤマツボスミレとも書かれているが、どう区別できるのか私には分からない。ただ何時も見かける白色だけでなく、赤紫色の個体もたくさん見られた。
1500mのこの地ではイワカガミもまだ旬
湿原の縁を彩る草も新緑の瑞々しさだ。
点在する白色はワタスゲの綿帽子
まだ殆どは蕾だったが、丹念に探していたら開花したてのタテヤマリンドウを見つけた。
これも早春に咲く花ニリンソウ、この辺りではサンリンソウも咲くというが、ニリンソウには葉柄がないので区別される。
オオバミゾホオズキ
いずれの花も小さく、湿原の中に隠れるように咲いているが白、赤、青、黄とカラフルなので探していて楽しい。
湿原の小低木、ウラジロヨウラク
ノビネチドリ
尾瀬沼ビジターセンターを過ぎたあたりから、雨脚が強くなってきた。
ワタスゲの広がる大江湿原。今はまだ蕾のまま眠っているがもう2週間もしたら、ニッコウキスゲが咲き出し、この一帯には黄色の絨毯が敷き詰められる。
浅湖湿原
大江湿原を後にして大入洲半島を横切る。湿原とは異なり小低木の木が多い。
オオカメノキ
ミヤマハンショウヅルとはちょっと違うようだ、バアソブの白花だろうか。
コヨウラクツツジ
ここから湖尻まではちょっとした上り下りを繰り返しながら標高をだんだんと下げていく。時折小規模の湿原が現れ、また針葉樹林の中を歩いていると思うと、尾瀬沼がぬっと顔を出す、なかなか変化に富んだ楽しいコースだ。
湿原の一部を真っ赤に染めているのはレンゲツツジの花、咲いたばかりの朱色には目を瞠らされる。
今回は望遠レンズを持ってこなかったので、カルガモの親子がいたのだが寄って撮ることができなかった。
ヤマドリゼンマイの新緑
小一時間で湖尻に着いた。数人のハイカーが昼食をとっていたので、私もここで少し遅めのお昼とした。
何時来てもここに船はあるのだが、人が乗っているのは見たことがない。それでもこの船があるだけで風情が増すので良しとするか。
レンゲツツジの赤とはちょっと違うが、これも派手な花色をしたムラサキヤシオの花
これで今年もアカヤシオ、シロヤシオ、ムラサキヤシオと3種のヤシオツツジに出会えたことになる。
白砂乗越を過ぎ、段小屋坂を下っているとき、リスかモモンガのようなものが大木を登って行った。急いで樹の裏側に回ったのだが、既に姿は見えない。7,8mほど上に巣のような穴があったので、あそこに入ったのだろうか。
あとで図鑑で調べたらアカミノイヌツゲのようだ
湿原でよく見かけるミツガシワの花。蕊が綺麗でアップに耐える美形の花だ。
所々に盆栽のような松が風雪に耐えた姿を見せている。
今まで気づかなかったがツマトリソウを湿原の草むらの中に見つけた。
これは後知恵だがツマトリソウとは書いたが、湿原に咲くのはコツマトリソウで、違いは咲く場所だけでなく、葉が少し丸みを帯びているのだそうだ。
尾瀬では初めてのギョウジャニンニクの花
そして大家族のギンリョウソウ
愉しい時は何時だってあっという間に過ぎてしまうものだ。予定より30分早く見晴らしに着いた。写真は今夜お世話になる尾瀬小屋。繁忙期には200名の収容人数を誇る小屋だが、この日はわずか6名の泊まりでのんびりと過ごせた。
この辺で。