ラダバイという老年の女性がいた。彼女はカシャバ・デシュムクの母だった。ババの評判を聞いて、彼女はサンガムネールの人々とシルディにやってきた。彼女はババのダルシャンを受けて非常に満足した。彼女は心の底からババを愛し、彼女のグルとしてババを受け入れ彼からいくつかのウパデシュを受け取ろうと心に決めた。
ババが彼女を受け入れてくれず、ウパデシュもマントラも与えてくれないようだったら、死ぬまで断食をしようと決めた。彼女は宿に滞在して、3日間食事も水も採るのを止めた。私は老女が自らに課したこの厳しい試練を見て恐ろしくなり、彼女の代わりにババにとりなした。私は言った。
「デーヴァ、あなたは何を始めたんですか?あなたはここに大勢の人々を引き寄せています。あの年老いた女性を御存知でしょう。彼女はとても頑固で、あなたを頼っています。あなたが彼女を受け入れず、教えを授けないなら、死ぬまで断食をする覚悟です。もし何か悪いことが起こったら、人々はあなたを責めて、ババが彼女に教えを授けなかったから彼女は死んだと言うでしょう。ですから彼女に慈悲をかけて、祝福をして、教えを与えてやって下さい」彼女の決意を見て、ババは彼女を呼びにやり、次のように言って彼女の決心を変えさせた。
「ああ、お母さん1、なぜあなたは必要のない苦しみに自分自身をさらすのかね?あなたは私の母で私はあなたの子供なのだ。私のことを可哀相だと思って話しを聞いておくれ。私自身の話をするから、あなたが注意して聴いてくれれば、あなたの為になる。私にはグルがいた。彼は偉大な聖者でとても憐れみ深かった。私はとてもとても長い間彼に仕えていたが、彼は私にマントラ2を与えてはくれなかった。
私は彼の元を去らずに留まって彼に仕え、どうしても彼から教えを乞いたいと熱望していた。でも彼は意に介さなかった。最初に私に頭を剃るように言い、それからダクシナとして2パイサ要求した。私はすぐに差し出した。あなたはこう言うだろう。私のグルは完璧なのに、なぜお金を要求し、そのくせ無欲だなどと言われるのだろうか?と。答えはこうだ。彼は貨幣のことなど気にしていなかった。彼がお金で何をしようというのか?彼の2パイサとは、(1)堅い信仰心と、(2)忍耐力だった。私はこの2パイサを彼に差し出したので、彼は喜んだのだ」
「私は12年間グルに頼っていた。彼は私を育ててくれた。食べ物も服も満足になかった。彼は愛に満ちた、愛の化身だった。これをどう言い表したらいいだろう?彼は私をとても愛していた。彼のようなグルは稀だ。私が彼を見ると、彼は深い瞑想に入っているようだった。そして私たちは二人とも至福に満たされたのだ。夜も昼も私は空腹や喉の渇きを感じることもなく彼をじっと見ていた。
彼がいなければ私は落ち着かなかった。私は他に瞑想する対象がなかったし、他についていく人もいなかった。彼は私の唯一の避難所であった。私の心は常に彼の上に定まっていた。このニシュタ(堅い信仰心)はダクシナの1パイサだった。サブーリ(忍耐力)がもう1パイサだった。私は辛抱強く待ち、グルに仕えたのだ。
サブーリは世俗の海を越えてあなたを運んでくれる。サブーリは全ての罪や苦悩を取り除き、様々な方法で大きな不幸を取り去って、恐れを捨てさせ、究極的にはあなたに成功を与えてくれる。サブーリは徳の宝庫であり、善き考えの配偶者である。ニシュタ(信仰)とサブーリ(忍耐)は、互いに心から愛し合っている双子の姉妹のようである。
私のグルは私には他の何も期待しなかった。彼は私を無視したりはせず、いつも私を守ってくれた。私は彼と暮らし、時々は離れていることもあったが、彼の愛が不在だと感じることはなかった。彼はちょうどカメが子ガメを育てるように、常に私を見つめて守っていた。子ガメが近くにいようと、離れて土手の反対側にいようと、愛深いまなざしで見つめているのだ。
お母さん、私のグルはその時私にマントラは与えてくれなかった。どのようにして私があなたの耳にマントラを吹き込もう?グルのカメのような愛深い一瞥が私たちを幸福にしてくれることを思い出しておくれ。
誰からもマントラやウパデシュを得ようとするのは辞めなさい。私をあなたの考えや行動のたった一つの対象にするのだ。そうすればあなたは間違いなくパラマルタ(人生における霊性の終着点)を得ることができる。心を込めて私を見れば、私もあなたを見るだろう。このマスジッドに座っているときには、私は真実のことしか言わない。サーダナも6つのシャーストラに熟達する必要もない。あなたのグルを信仰し自信を持てばいいのだ。グルはたった一人の俳優であり行為者であると信じなさい。自分のグルが最も偉大であることを知っており、グルがハリ3であり、ハラ4であり、ブラフマン5(トリムルティ)の化身であると考える者は幸福である」
このように教えを受けて、老女は納得して頭を垂れ、断食を止めたのであった。
この話を注意深く聞いていて、その意味と適切さに気づいたヘマドパントは大変驚いた。この素晴らしいババのリーラを聞いて、彼は頭の先から足の先まで感動し、喜びに溢れ、喉が詰まって一言も発することができなかった。このような様子の彼を見てシャマは尋ねた。「どうしたんだい、なぜ黙っているんだい?僕はババの比類のないリーラをどうやって描写したらいいだろうか?」
ちょうどこの時、マスジッドで正午の礼拝とアーティの始まりを告げる鐘が鳴り始めた。そこでシャマとヘマドパントは急いでマスジッドへ向かった。バプサヘブ・ヨグがちょうど礼拝を始めたところだった。女性はマスジッドに上がり、男性は下の中庭に立って、皆で太鼓の演奏に合わせてアーティを斉唱していた。シャマはヘマドパントを引っ張って上がっていった。
彼は右側に座り、ヘマドパントはババの正面に座った。ヘマドパントを見るとババは、シャマからのダクシナを出すように言った。彼は、シャマはルピーの代わりにナマスカールを差し出すので、そのために本人もここにいると答えた。ババは言った。「よろしい。二人がお喋りをしたかね?もししたのなら、何を話したのかを私に教えておくれ」鐘や太鼓や歌が響いているのも気にせずに、ヘマドパントは自分たちが話したことをババに伝えたくて仕方なかったので、それについて話し始めた。
ババもまた話しを聞きたがり、長枕を脇にやって前のめりになった。ヘマドパントは彼らが話したことは全てとても愉快であり、特に老女の話がとても素晴らしかったこと、それを聴いて彼はババのリーラが説明のつかないものであり、その話を通してババが彼を本当に祝福してくれたと思った、と言った。
ババは言った。「その話は素晴らしい。君はどんな風に祝福されたのかね?私は全ての詳細を君から聴きたいのだから、話しておくれ」そういわれてヘマドパントは少し前に聞いた、彼の心にいつまでも印象を残した話を全て話した。これを聴いてババはとても喜び、彼に尋ねた。「その話は君の心を打ち、君はその意味に気づいたかね?」彼は答えた。「はい、ババ。心の不安は消え、私は本物の平安と安らぎを得て、真の道を知りました」
するとババは次のように言った。「私のやり方は非常に独特だ。今からする話はとても役に立つから覚えておきなさい。自己を知る(認識)ためにはディヤナ(瞑想)が必要だ。絶えず瞑想を続けていると、ヴリティス(思考)は落ち着いてくるだろう。完全に無欲になって、全ての生き物の中にいる神を瞑想すればよい。心が集中していれば、目的は達成されるだろう。
常に、知識の化身であり、意識であり、至福である、私の形のない本質に瞑想しなさい。これができなければ、君が夜も昼もここで見ている私の姿を頭の先から足の先まで瞑想しなさい。これを続けていくと、君のヴリティスは一つに絞られて、ディヤタ(瞑想する者)とディヤナ(瞑想の行為)とディエヤ(瞑想される者)の区別がなくなり、瞑想する者は意識と一つになってブラフマンに溶け込むだろう。母ガメは川の一方の岸にいて、子ガメたちは反対の岸にいる。
彼女はミルクをあげることもなければ、子供を温めてやるわけでもない。ただ彼女の愛深い一瞥だけが栄養を与えているのだ。子ガメたちはただ母親のことを思い出す(瞑想する)。母ガメの一瞥は子ガメにとって、生命と幸福の唯一の源泉なのだ。グルと弟子の関係も同じである」
ババがここまで話したところでアーティの斉唱が終わり、皆が大きな声で「純粋な意識であり、知識であり、至福である我らのサドグル、サイ・マハラジに勝利あれ!」と叫んだ。親愛なる読者諸君、私たちがマスジッドでこの群集の中に立っていたことを想像してみて戴きたい。このジェイ・ジェイ・カーに私たちも加わろうではないか。
アーティが終わるとプラサドが配られた。バプサヘブ・ヨグはいつものように前へ出てババにひれ伏した後、一握りの砂糖飴をババの手に渡した。ババはこの飴をヘマドパントに渡して言った。「君がこの話をよく聴いて、常に覚えているならば、君は砂糖飴のように甘くなり、願いは満たされ、幸福になるだろう」ヘマドパントはババに頭を下げ、懇願した。「こんな風にいつも私に目をかけて、祝福し、守ってください!」ババは答えた。「この物語を聞いて、それに瞑想して、魂を同化させなさい。そうすれば君はいつも主を思い浮かべ、主に瞑想し、主は君に主自身を具現化するだろう」
親愛なる読者諸君!ヘマドパントは砂糖飴のプラサドをもらい、私たちはこの甘露の物語という砂糖飴のプラサドを戴いたのだ。これで私たちのハートを満たし、主に瞑想し、主に同化しよう。そしてババの恩寵によって強くなり幸福になろう。アーメン!
1. ババはいつも愛情を込めて女性を「お母さん」と呼び、男性のことは「カカ、バプ」などと呼んでいた。
2. マントラ:秘密の祭文
3. ハリ:主ヴィシュヌ
4. ハラ:主シヴァ
5. ブラフマン:主ブラフマン