お正月なのに家に帰れない施設入所のお年寄り

2015年01月01日 | 日記

老人ホームに勤務していた頃、年末年始に家に帰る入居者はほとんどいなかった。にもかかわらず、職員数は休日体制で、こなさなければならない業務はいつも通りあり、元旦以外特浴(仰臥位のまま湯船に浸かれる器械による入浴)も実施するので、いつにもましてハードワークであった。

ユニットタイプの施設のときなど、施設長や介護部長、相談員といったお目付け役がおらず、他のユニットの職員からも見えにくいことから、「みんなのんびりしたがっている」などと言って、入浴や離床介助などをさぼる介護士もいた。

利用者さんが希望していない、正月からバタバタ動くと利用者さんが落ち着かなくなる、たまにはみんなでテレビを見るのも悪くない(利用者さんは年中テレビの前に置きっぱなしにされて、しょっちゅう見せられてます)…咎めるような視線に対しこのような言い訳が聞かれました。

今後要介護3以上の重度の人ばかりが多くなれば、物言わない高齢者は「本人が希望していない」ことを理由に最低限の介護さえも受けられないかもしれない…

介護士の悪口を言いだすとキリがないし、介護の仕事をする人は気が優しくていっしょうけんめいな人ばかり…と本気で思っている人の反感を買うのでこのへんでやめておく。

今回言いたいのは、ろくでもない介護士のことではなく、年末年始に家に帰る人が本当に少ないということだ。

身寄りがなく、帰る家がない人もいるだろうが、そうではない人がほとんどだ。介護度が重く、家族ではたとえ1~2泊といえども世話は無理というなら仕方がないが、こちらとしてはこの人なら当然帰るだろうという人が全然帰らないのである。

新米介護士の頃はそれを知らず、盆暮れになると「久しぶりのお家ですね~。楽しみですね~」などと入居者に話しかけていたずらに悲しませてしまったものである。

寂しそうに「帰らないの」と言われ、慌てて「お仕事ですよね!!仕方ないですよね!お正月明けまで待ち遠しいですよね!」などと言い繕って、結局「息子休みやけど、悪いし帰れないの」という話を聞くハメになるのである。

年寄りは家に帰っても歓迎されないし、今じゃあからさまに「帰ってくるな」と言われてしまうようだ。そんなことを言う家族がひどいのか、年寄りに人徳がないのか…でも、むかーし昔のことを言えば、嫌われ者の年寄りだって大切にされてましたよー。少子高齢化で年寄りがお荷物だって社会的に認められてきたんで、体裁を取り繕う必要がなくなったのか。

ある人に盆暮れ帰らない年寄りが多いって話をしたら「そりゃそうやろ。普段は働いていて、ようやくゆっくり休める年末年始に年寄りに帰ってこられたら、体が休まらない」との返事がきました。

これ使えます。仕事の休みに会いに行かないのも同じです。残業もなく、休日出勤もなく、変則勤務もなく、有給休暇がちゃんと取れて、大型連休があればばあちゃんじいちゃんに会いに行くし、泊りもオッケーよ、というわけです。

介護家族が輝ける社会を作らないと!介護家族活躍推進法を作らねば!

でも~、休みの日はイオン行かないといけないんじゃない?いくら仕事が定時に終わっても有給があっても家にいたんじゃ持たないんじゃない?

だからやっぱり年寄りは施設で頼むわ~

となるのです。

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