蜩

雨に煙る　夕暮れ時
梅雨明けを待てずに
どこかで　ヒグラシが鳴いている

曇り空が広がり
青葉山は白い霧に包まれている
川は　澱んでいて想いを映す

鋭角的に射るはずの
夏の陽射しは　影をひそめ
街並みは　ぼんやり霞んでいる

もうじき　七夕の花火が上がり
艶やかな吹き流しが舞う

北の街の夏は　駆け足で
一夜の夢と過ぎてゆく

朝

始った
またきょう始った
幸いきのうはあっちゃけれど
太陽が昇り僕は目をさました

首うなだれたヒマワリは種子をいっぱいつけている
横たわっているコスモスがゆっくり起上がる
僕だって
僕だって
きっと元気になる

また朝が来て
きょうが始った
始った

フライング

紙飛行機作ってよ
学校帰りの王子は
遊びに来た弟に
新聞広告のチラシを持ってきてねだる

とんでいけ
とんでいけ紙飛行機
テーブルを越えソファーをまたぎ
王子の頭上を越えて
天井に一度突き当たり跳ね返ってから
二階の開放された窓から
一直線に庭に向かった

何度も試みてる内に
やがて緑の木々を越えて
紙飛行機は空に消えた
王子はその行方をしばらく見ていた

梅雨

蒸し暑い　ジメジメした季節
鬱陶しい　嫌な季節

この季節が有るから　秋の実りが或る
大切な大切な　季節です

紫陽花や　薔薇が咲き乱れ
水辺に　花菖蒲が咲き

せせらぎでは　ホタルが舞い
見方によっては　なかなか味のある
明るい　季節です

雨の合間の　ホタル狩り
傘をさしての　紫陽花見物

なかなか　風情のあるきせつです

乙女座

春の南の空
７星柄を伸ばしアルクトールスを横切り
さらに伸ばすと明るい星にぶつかる
春の到来を告げる乙女座
一等星スピカを日本では真珠星と呼ぶ

乙女座は黄道十二星座のひとつ
星座絵の女神は必ず麦の穂を持っている

翼の生えた女神は
メソポタミヤでは女神
ギリシャ神話では豊穣のアストラエ
人間に絶望して天に登った女神が
携えていた麦の穂が天の川
あの時と同じ春の空なのに
も鮮やかに思い出されない
人の青春