Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

「李王家の縁談」林真理子

2023年01月22日 | 読書
一年前に図書館で予約していた「李王家の縁談」をやっと読むことが出来ました。
一年も待っていたのに、2日で読んでしまいました~。
    
 
「いつの時代も高貴な方々の結婚は難しい  
  皇族華族の内面をこれほど正確に描ききった小説は読んだこないない傑作である」
         歴史学者 磯田道史」       ー小説の帯よりー

小田部雄次の「梨本宮伊都子妃の日記」を参考に、史実に基づき林真理子のフィクション
も交えて書かれた本のようです。

大正時代、韓国併合で朝鮮王室も日本の皇族と同じと見なされていたそうです。
この小説は、皇族と朝鮮王族との結婚が「日朝融合のため」、「お国のため」と、
伊都子妃によって進められましたが、あまり悲壮感はありませんでした。
なぜなら、そういう仲でもお互いに尊敬と信頼が芽生えていったからです。

伊都子妃は、長女が裕仁皇太子の妃に選ばれなかったことで、
朝鮮王室の皇太子「李垠(イ・ウン)」に嫁がせることに奮闘するのです。
皇族のいろんな思惑で結婚話が進み、本当に大変。

併合以来、日本人の朝鮮差別や偏見は驚くほどの早さで拡まったそうです。
朝鮮からの出稼ぎが急増したこともひとつの原因らしいのですが。
でも、伊都子妃はそんな偏見は一切持っていませんでした。
結婚の条件として、まず身分が釣り合うかどうかであるからでしょうか?

耳にしたことのある皇族、華族の名前や宝石店の「御木本」とか「高島屋」や
「とらや」等、お馴染みの名も出て来ました。
また、木村屋のあんぱんを宮中に届けたり、当時総理大臣の「東条英機」のことを
「禿頭の眼鏡の男」とあるのは日記らしいところと親近感が湧いたことでした。
関東大震災の際の流言飛語や朝鮮人虐殺の話しにも触れられています。

皇族は養子を迎えることが出来ないので、男子が生まれなかったら廃絶してしまう運命。
また、伊都子妃の夫「梨本宮守正」は皇族唯一、戦犯に名指しされた人でした。
しかし、4ヶ月で不起訴となったそうです。

敗戦後、皇族を臣籍降下され一般市民となった伊都子妃。
「一度も平民というものになったことがないないので、平民ということが全くわからない」
と宣われるところが、さすがに高貴なお方だと感じ入りました。

最後、名前は明記されていませんでしたが、美智子さまの婚約発表で終えてました。

記者会見の前の晩に、伊都子は妹の松平信子からの電話で
「皇后さんが、このご結婚に反対で、非常にご機嫌がよろしくない」と。

「もうもう朝から御婚約発表でうめつくし、憤慨したり、なさけなく思ったり、色々。
日本ももうだめだと考へた」

宮家の盛衰を描いた小説でもあり、私は皇族のゴシップ本感覚で読んでしまいました

「同志少女よ 敵を撃て」 逢坂冬馬

2022年12月13日 | 読書
フィクションでありながら、ノンフィクションかのように感じました。

第二次大戦中の旧ソビエトとドイツによる「独ソ戦」が舞台。
ドイツ軍の襲撃で母親と故郷を奪われた少女が復讐を果たすため、女性だけの
狙撃隊の一員として、過酷な戦場を生き抜く主人公セラフィマを描いた物語です。

今、ウクライナで引き起こされているロシアによる軍事侵攻が続く現実を思いながら
複雑な気持ちで読みました。

故郷イワノフスカ村にいたとき、自分は人を殺せないと疑いもなく思っていたセラフィマ。
そんな彼女がスナイパーとなり、殺した敵兵の数を自慢し、人殺しを楽しんでいるかのよう
に別人に。
何が普通の少女をここまで変えるのか。戦場では自分が生きるためには殺すしかないのだろ
うか。本当の敵とは、誰なのか、何なのか。
生々しい戦場に息苦しさを感じながらも、私は答えを探しました。

ソ連、ドイツ、ベラルーシ、ウクライナ、クリミア半島。
カッコー(ドイツ狙撃兵のこと)、フリッツ(ドイツ兵)、パルチザン(土地の住民たちが
立ち上がり武器をとって戦う赤軍)、ヒーヴィ(協力者:ドイツ軍のスパイ)
これらの言葉が息苦しく現れ、今現在のウクライナのことと重なりました。

この物語の中で「ロシア人どもは捕虜に対しても残忍だった。9割が殺害された。」
と書かれていました。 戦争が理性を失わせ、人間を悪魔に変えたとしか思えません。 
そして、テレビのニュースが生々しく思い出され、ページを捲ることが出来ませんでした。

戦争の悲惨さや異常性が書かれているだけでなく、スナイパーとなった少女たちの人間ドラマ
でもありました。

「『戦争、No!』と叫ばない自分自身が敵であり、お互いを尊重し認め合うことが不可欠なの
ではないか。」と思いながらも、
国境がある限り、人間がいる限り、戦争がなくなることはないのではないかと不安になり
ました。 


「イオカステの揺籠」 遠田潤子

2022年12月05日 | 読書
  ~ ”絶望”から、目を背けるな。
     バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」
     と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に
     生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生ま
     れてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた・・・・・・。~
                            (帯より)

           

主人公、青山英樹の妻が男の子を妊娠した事から、母親の常軌を逸した行動が始まるのです。

「母親」と「息子」、「母親」と「娘」の関係。 連鎖していくのか。
これまでの「母親問題」を描いた小説にはない、(主に)母親と娘の壮絶な関係。
関西弁でやんわりと語る母親の異常な言動、常に冷静な態度だからこその気味悪さ、
恐ろしさが増幅され背筋が凍りました。

それでも、「母親」はやはり親なのです。
執着し過ぎた母の愛情。そこには、二男の死が絡んでいました。

この異常としか言えない問題にそれぞれが向かっていくことで、家族が少しずつ、、、

「冬バラが風に揺れている。血を流しながら咲いている。」

スリラー、サイコ以上の物語。
許されない母親ではありましたが、暗く深い痛みを感じました。


電子図書 「ライオンのおやつ」

2022年11月14日 | 読書
ライオンのおやつ」が本屋大賞を受賞し、話題作となった時期に
図書館で予約をしたのですが、既に予約人数も多くいつ読めるのやら状態でした。
それで、途中で一旦予約取り消しをしました。

最近になって、電子図書館に入って見ると「ライオンのおやつ」が、電子図書
になっていたので早速借りて読みました。

ちょっと理解不可能なんですが、電子図書にも関わらず、私が2人目の予約
受付となり、2、3週間後の取り置きメール連絡で読めることになりました。
雑誌などは先月分に限り予約なしですぐ読めるのですが・・・
電子図書館に著作権が切れた作品の「青空文庫」も入っており、それは当然
すぐ読めます。
すぐ読めないのは著作権の問題があるからでしょうか?

「ライオンのおやつ」
 瀬戸内海の「レモン島」と呼ばれている島のホスピスで患者として生活することに
なった主人公「海野雫」の物語でした。

本の表紙は装画や表題の文字を含め絵本のようでしたが、「ライオンの家」で人生
最後の日々を過ごす主人公の思いが描かれ、切なくもあり、どうしようもない悲しみ
を感じましたが、最後には全ての人があるがままに穏やかに静かに自然に人生を終え
る様子には感動しました。

「QOD(quality of death)」死に方の質、「QOL(quality of life)」生活の質。
どう死ぬか、どう生きるかをこのホスピスでは大切にし、ひとりひとりに問うて
いるのです。
「音楽セラピー」や「タッチセラピー」、「動物セラピー」はよく耳にしますが、
「似顔絵セラピー」がこの物語の中で登場しました。心身共に気持ち良くなって
そのうち笑顔に!

「ライオンの家」の”ライオン”は百獣の王、無敵なので安心して食べたり、寝たりすれば
いいので名付けたそうです。みんながライオンというわけです。
食べたいお菓子をリクエストすれば、毎週日曜日にその中から選ばれたお菓子が
メッセージと共におやつ時間に出されるのです。
それが、まさに「ライオンのおやつ」!

「はじめての」

2022年10月25日 | 読書
四人の直木賞作家の短編集です。
「はじめての」という1つのテーマでそれぞれの女性作家が物語を綴っています。
やさしい登場人物たちの温かく、切ないおはなしで感動しました!
    
音楽ユニット「YOASOBI」とコラボしています。

●はじめて人を好きになったときに読む物語 『私だけの所有者』 島本理生
  アンドロイドが手紙で語っていきます。もう会えない人との切ない物語でした。
       
         YouTube 「ミスター」 YOASOBIより
  
●はじめて家出したとき読む物語   『ユーレイ』 辻村深月 
  家出をして海沿いの駅に降り立った私は、花束が手向けられた夜の広場で、突然
  不思議な女の子から声をかけられた。 (帯より)
  
 やさしさに包まれました。 

●はじめて容疑者になったときに読む物語  『色違いのトランプ』 宮部みゆき
  平行世界で起きたテロへの関与を疑われ、捕らえられた愛娘の夏穂。宗一は夏穂を
  救いに、単身、もう一つの”鏡界”へと向かう。(帯より)
 
鏡界の向こう側に同じ自分がいる。でも、違う。こんな物語は想像出来ませんでした。

●はじめて告白したときに読む物語   『告白』 森絵都
  幼馴染みの椎太が好きでたまらない高校生の由舞は、4回目の告白を確かなものと
  するため、過去の告白を消し去ろうとする。(帯より) 

この物語が一番好きです(*^_^*)♪  一途で、真剣で、一生懸命な由舞をキュッと何度も
抱き締めたくなりました。直球の告白をサラッとかわす片思いの相手、椎太も憎めません。
ちょっと笑えて、心温かくなり、胸がキュンとなりました。
誰かに告白したことさえない私は、ド直球の告白を由舞と一緒に経験しました。
 
YOASOBI  「好きだ」 YouTubeより
   

「告白」に添った直球の歌詞でアップテンポな曲! 
由舞が椎太に告白しに猛ダッシュしている姿が見えます♪♪  
 ♪ わたし 君のことが アー アー ♪ ♪ ♪