昨夜は十三夜。見上げた夜空の南東にきれいにお月さまが輝いていました。
4,5日前に読み終えた「法廷遊戯」
きれいで華やかでありながら、何かを隠し何か深い問題の始まりを予感させる装画。
2部からなり、<第1部 無辜ゲーム>は
○ むこ【無辜】≪「辜」は罪の意≫罪のないこと。 また、その人。
丁寧な説明から始まった。
作者「五十嵐律人」は東北大卒の司法試験合格者。現役司法修習生。
その知識を存分に活かした小説で、知らない世界を楽しみながら読み終えました。
法曹を目指し、ロースクールに通う3人の話しである。
主人公ともう1人は過去に同じ児童養護施設で生活していた。
主人公は彼女を庇うことで施設内で障害事件を起す。
その時、付添人になった弁護士に出会うことによって、
論理だけが正義とされる法律学に心惹かれる。
主人公はいつも論理よりも感情が優先される現実に腹を立てていた。
大学で法律学を学ぶ事を決意をし、その資金集めをする手段として
危うい痴漢詐欺を彼女と2人で始め、罪を犯す。
そして時は経ち、ロースクールで出会う3人。
ロースクールで初めて出会った3人目の人物は、既に司法試験に受かっていた優秀な人間。
模擬法廷で、優秀な彼が審判者となり無辜ゲームが始まる。
主人公と彼女の「過去」を告発する差出人不明の手紙をきっかけにストーリーは
大きく先へ進んでいく。
<第2部 法廷遊戯>
3人は、殺人容疑の被告人、その被告人の弁護人の主人公そしてもう1人は被害者となり、
裁判に。
過去の3人が繋がっていく過程を自分でも推測し、大変驚き、先へ先へと読みました。
被害者は語ります。「有罪か無罪かは裁判官が決めるが、冤罪かどうかは
神様しか知らない。再審請求はできるが、無実を証明するための裁判なんて
開かれるはずがない」
被害者の目的は再審の扉を開くことにあり、命を懸けて仕掛けた法廷遊戯。
彼女はただ倖せになりたいだけが望みだった。
「罪を受け入れないで、罪と向き合って生きていく」と言い切る。
主人公は・・・。
私の想像だけでは終わらなかった二重の展開があった。
「再審請求」出来るのは被告人自身である。
被告人が請求しない限り、家族はどんなに望んでも「再審請求」出来ない。
被告人が死亡後にしか家族は再審請求できない。初めて知りました。
最後のページにこう書かれていました。
「正当な報いとは、誰が決めるべきものなのだろう。
司法権の担い手である裁判官か、あるいは、罪を犯した者自身か。」