Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

「透明な迷宮」平野啓一郎

2022年05月26日 | 読書
図書館に予約本を受け取りに行き、何気なく本棚に目を向けると
「平野啓一郎」の棚が目に入り、「透明な迷宮」の題名が気になり
予約本と一緒に借りることに。

  ムンクの「接吻」が表装画として使われています。
      

~ ここ数年。「分人」という概念を使って今この新しい時代の生き方を考えてきた。
  前作『空白を満たしなさい』で、それが一区切りついて、私はしばらくぼんやりと、
  日常を束の間、忘れさせてくれるような美しい物語に思いを馳せていた。
  「ページ」をどんどん捲りたくなる」小説ではなく、「ページ」を捲らずにいつまでも
  留まっていたくなる」小説。
  幾人かの、愛を求めて孤独に彷徨う人人の姿が、私の心を捕らえた。そして、私たち
  が図らずも出会い、心ならずも別れることとなる、この「透明な迷宮」を想像した。
                                平野啓一郎 ~

    この表装画が使われたのは、「愛」についての話しだったからでしょうか。

 六編からなる短編集です。
その中の一つ『透明な迷宮』はブダペストの出張を終え帰国前に、観光する最中に誘拐
され、非日常的な不可解な世界に巻き込まれ、、、。

「人はたった一つのエピソードのために、誰かを愛するのだろうか」と彼は自問します。
 同じ体験を共有するだけでなく、時間も必要なのではないかと思うのですが。。。
 なんだか、重く嫌なストーリーで、後味が良くありませんでした。

『消えた蜜蜂』 実に奇妙で主人公の孤独を感じるミステリアスなストーリー。
『ハワイに捜しに来た男』 
        これまた、面白いというか不思議な物語!
        依頼主から「依頼を引き受けた自分」にそっくりな人間を捜しにハワイ
        まで、捜しに来た主人公の物語
『family affair』 一番すっと受け入れることの出来たお話しでした。
        個性ある三人兄弟のうちの長女が主人公で、親が亡くなった後の家の
        整理中に押し入れの奥から出て来た「アレ」から、色々と巡らす憶測。
        九州弁での会話に笑みまで浮かびました。
『火色の琥珀』 恋愛対象が火だという変わった菓子職人のラブストーリー。
        どんな「火」でも良い訳でなく、また妖艶な火とか気性の激しい火とか
        彼には「火」がそれぞれ個性あるものと見えるようです。
        「絶対に成就しない片思いであり、だからこそ、その情熱は、私の生を
        絶え間なく満たし続け、私が人生についぞ虚無感を覚えたことがないの
        は、そのお陰だ」とも言い切っています。
        「愛」は不思議なものだと思いました!
『Re: 依田氏からの依頼』 
        劇作家で演出家「依田」の妻から小説家の主人公「大野」が、依田から
        聴き取った話しのメモや録音から小説にして欲しいと依頼を受けた話し。
        その過程で、1,2分が2時間に感じたり、時間感覚の差異の拡大に歯止め
        が利かなくなった主人公。 
        1日が極端に短くなったりして、読んでる私までも錯覚しそうで、よく
        理解出来ない話しでした。
        「一人一人の人間が自分の勝手なテンポで生きている。そして、その
        テンポは常に揺らいでいる。」←まったくその通りで、十分納得!

 読んだ私には、よく分からない不可思議な話しばかりで、「ページを捲って、早くこの
 場所から逃れたくなる」小説でありました。
      登場人物のその後は一体どうなったのでしょうか?   

大人の贅沢 ライト・シンフォニックコンサート

2022年05月24日 | 日記
昨年の11月に先行予約していたコンサートに出掛けました。
最近は、With Coronaになってきて、一定の条件下ではマスクの着用も
緩和されて来ているようですが、まだ油断は出来ません。

コンサートの開催日が土曜日ということもあって、電車移動も何処も
混雑していました。 
さすがに混雑の中では殆どの人たちがマスク着用でしたが、ソーシャルディスタンスは
とても無理です! 不可能!

早めに家を出て、シンフォニーホール近くのお目当てのレストランで食事する
予定でしたが、ネット検索したのと違ってこの日のランチはお休みでした。
仕方なく別のお店で簡単に済ませ、場所を変えて開場時間までコーヒータイム。

「ライト・シンフォニックコンサート」は指揮「横山泰」、ゲスト「岡幸二郎」、
そして大阪交響楽団でのコンサート。
        

指揮「横山泰」による大阪交響楽団でアダージェット「ベニスに死す」。
ベニスの美しい情景とブロンドの髪の美少年が幻想のように旋律にのって
演奏が始まりました。

     
    
「ホール・ニュー・ワールド」、「オペラ座の怪人」等マンドリン演奏したこともあり、
特別に楽しく心躍りました。
ハープの優しい音、繊細で柔らかい音のチェンバロ、ベースの4台のピッチカートの音も
効果的でした。
また、何よりも打楽器の控えめに彩りを添える音やホール全体を大きく打ち振るわせる
音は特に魅力的で、また私には興味ある楽器でもあり奏者の方を常に見てました。
じっと楽譜を追いながら、短い出番を待つ打楽器奏者たちには敬服してます。

「オペラ座の怪人」の序曲では、パイプオルガンが大迫力でホールの隅々まで響き
渡り、オペラ座の怪人が今にも登場するのではないかという期待感でいっぱいになりました。

岡幸二郎さんの深みのある歌声にも感動! 背の高いナイスガイでした(*^_^*)♪
終演後、拍手も鳴り止まず、2回、3回と舞台へ。
アンコール曲は、日本語での「ウクライナ」の歌でした。
ウクライナの情勢がいっときも早く良くなり、人々の平和を祈るしかありません。

映画音楽、ミュージカルの名場面が思い出されるコンサートでした。


「プラスチックの祈り」白石一文

2022年05月20日 | 読書
ー 身体のプラスチック化。愛妻の「死」。タイムカプセル。失われた「母親の記憶」。
   鬼才が仕掛ける、あなたの日常と常識の打破。あなたはさながら迷宮をさまようが
  如く、この物語に魂を奪われるであろう。あなたはどこまでついてこられるか?
  読者を挑発するノンストップ問題作1400枚。
  これは天罰だと直感した。しかし、いったいなぜ?現実を侵犯する、この物語の力よ!ー
                            (本の帯より)
            

主人公の作家「姫野伸昌」は妻「小雪」を亡くし、酒浸りの毎日の中で足の踵のプラスチック化が始まり、
身体のあちこちがプラスチック化していき、それを解明していくストーリーでした。(4月20日に読み上げ)

分厚く重たい本のせいだけでもなく、読んでいてもよく分からない物語でした。
身体がプラスチック化していく気味悪さ以上に、主人公の記憶と周りの記憶と
がことごとく大きく食い違うことに不気味さを感じました。

主人公が言うには、
「『自分』というのは、頭の中で勝手に作り上げた、キャラのようなもの。
ひとりひとりが、『自分』という人間の作者であり、『自分の人生』というのは、
そうやって書き続けている一本の長編小説のようなもの」と。

個々の生き方、考え方で自分の性格も作られ、人生も進んで行くのだろうと私も共感。
自分で、良い人生を創作して楽しめば良いのだと。

主人公の記憶の混乱、欠落、、、読んでいても私も混乱し、登場人物の関係図作成が必要
でした。
結局、妻「小雪」にまつわる記憶の捏造もプラスチック化も、目指す目的はすべて小説を
書き続けるためだったのでは、と主人公が思っている辺りからちょっと私の中で謎が解け
てきたように思えました。

主人公の思いをまとめました。
「プラスチック化が異常ではなく、ありとあらゆる存在が本来はただのプラスチックに過ぎ
ず、「人生」という一個の有限な”物語”というサングラスをかけたときのみ、巨大なプラスチ
ックのかたまりであるこの世界を、我々は別の姿で見つめることができるのだろう」と。
    
 姫野伸昌(主人公)とは一体誰なのか?「私」とは誰なのか? (すべては物語?)

最後のページには。

 雨足はさらに強まっている。
 雨に煙る見渡す限りの風景がプラスチック化していた。
「私」はその荘厳な景色に見とれながら、小さな声で祈りを捧げる。
 物語よ、終われ。
 そして始まれ。    

「マチネの終わりに」

2022年05月17日 | 読書
結婚した相手は、人生最愛の人ですか?
  恋の仕方を忘れたあなたに贈る
   切なすぎる大人の恋愛小説
             (小説の帯より)

      

読者への強烈な問いかけ!「人生最愛の人ですか?」なんて、結婚するときは(恋愛結婚)
そんな幻想を抱いて結婚しているのでは?

天才クラッシックギタリストと国際ジャーナリストふたりのインテリジェンスな
ラブストーリーであると共に登場人物のヒューマンストーリーでもありました。

主人公「蒔野聡史」はデビュー二十周年記念コンサートの打ち上げで、洋子との運命的な
出会いをします。その時、洋子は蒔野よりも二歳年上の四十歳。
ふたりはたった三度しか会ったことがなく、後はSkypeでの会話でした。
それでも「人生で最も深く愛した人」と思えるほどの相手は奇跡でしかありません。

そして、ギタリストとしての蒔野を献身的に支える若いマネジャーの三谷早苗。
洋子の父である戦争を詩的に描くソリッチ監督、イラクからの亡命者ジャリーラ、長崎で
被爆したことを隠して生きてきた洋子の母親、同じギタリストの武知の死、洋子の婚約者
リチャードなどの関係の中で、まるでバッハの「無伴奏チェロ組曲第三番」の始めの
アルペジオのように流れる愛の物語。そのプレリュードの後に、明るい、穏やかな静けさ
の中にあたたかい光の旋律で奏でられた美しい歌劇のようでした。
この物語は、クラッシック音楽で溢れ、私が読み終えるまで、ロドリーゴの
「アランフェス協奏曲 第2楽章 アダージョ」が優しく切なく聞えていました。

蒔野聡史が「未来は常に過去を変えている。変えられるとも言えるし、変わってしまう
ともいえる。」と語った言葉が印象に残り、どう言うことだろうと考えました。
読み進めるうちに、少し分かったように感じました。 過去の時点での「未来」の人生
(今現在)によって、「過去」の自分の思いや考え方に変化が・・。どう表せば良いか、

音楽家としての一年半のブランクがあり、その復帰コンサートをニューヨークで行い、
その時会場の一階席の奥に洋子を見つけ、彼はカーテンコールでこう言いました。

「(それでは、今日のこのマチネの終わり、みなさんのためにもう一曲、特別な曲を
演奏します。)
<And now, at the end of the matiness, I will play one more melody ーa very special 
melodyー for you >  」
そうです。蒔野聡史は洋子に向けて、あなたのためにと。♡~~♡ 
ソリッチ監督の有名な映画のテーマ曲「幸福の硬貨」をひきはじめた。

最後のページ
 二人が初めて出会い、交わしたあの夜の笑顔から、五年半の歳月が流れていた。
 終演後、蒔野は独りセントラルパークを散歩しながら、午後のやわらかな日差し
 に映える美しい木々の緑を眺めていた。、、、、、、
 池に添ってゆったりと曲がった歩道を抜けたところで、視線の先の木陰に一つの
 ベンチが見えた。
 午後の光が、時間潰しのように池の水面で戯れているのを眩しそうに眺めていた
 女性が一人、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
 二人が初めて出会い、交わしたあの夜の笑顔から、五年半の歳月が流れていた。

五年半の歳月の流れの中で、二人にはお互いにそれぞれ守るべき家族がいて、今では
忘れられない美しい思い出となり、そうです、過去は未来によって変えられたのです。

切ないけれど優しい美しい物語でした。

映画では「福山雅治」と「石田ゆり子」で演じられたようです。その映画を鑑賞した
人は景色が素晴らしく美しかったそうです。

来週の土曜日、シンフォニーホールでの「大人の贅沢 ライト・シンフォニック
コンサート」のマチネの公演にmio maritoと楽しんで来ます。