図書館に予約本を受け取りに行き、何気なく本棚に目を向けると
「平野啓一郎」の棚が目に入り、「透明な迷宮」の題名が気になり
予約本と一緒に借りることに。
ムンクの「接吻」が表装画として使われています。
~ ここ数年。「分人」という概念を使って今この新しい時代の生き方を考えてきた。
前作『空白を満たしなさい』で、それが一区切りついて、私はしばらくぼんやりと、
日常を束の間、忘れさせてくれるような美しい物語に思いを馳せていた。
「ページ」をどんどん捲りたくなる」小説ではなく、「ページ」を捲らずにいつまでも
留まっていたくなる」小説。
幾人かの、愛を求めて孤独に彷徨う人人の姿が、私の心を捕らえた。そして、私たち
が図らずも出会い、心ならずも別れることとなる、この「透明な迷宮」を想像した。
平野啓一郎 ~
この表装画が使われたのは、「愛」についての話しだったからでしょうか。
六編からなる短編集です。
その中の一つ『透明な迷宮』はブダペストの出張を終え帰国前に、観光する最中に誘拐
され、非日常的な不可解な世界に巻き込まれ、、、。
「人はたった一つのエピソードのために、誰かを愛するのだろうか」と彼は自問します。
同じ体験を共有するだけでなく、時間も必要なのではないかと思うのですが。。。
なんだか、重く嫌なストーリーで、後味が良くありませんでした。
『消えた蜜蜂』 実に奇妙で主人公の孤独を感じるミステリアスなストーリー。
『ハワイに捜しに来た男』
これまた、面白いというか不思議な物語!
依頼主から「依頼を引き受けた自分」にそっくりな人間を捜しにハワイ
まで、捜しに来た主人公の物語
『family affair』 一番すっと受け入れることの出来たお話しでした。
個性ある三人兄弟のうちの長女が主人公で、親が亡くなった後の家の
整理中に押し入れの奥から出て来た「アレ」から、色々と巡らす憶測。
九州弁での会話に笑みまで浮かびました。
『火色の琥珀』 恋愛対象が火だという変わった菓子職人のラブストーリー。
どんな「火」でも良い訳でなく、また妖艶な火とか気性の激しい火とか
彼には「火」がそれぞれ個性あるものと見えるようです。
「絶対に成就しない片思いであり、だからこそ、その情熱は、私の生を
絶え間なく満たし続け、私が人生についぞ虚無感を覚えたことがないの
は、そのお陰だ」とも言い切っています。
「愛」は不思議なものだと思いました!
『Re: 依田氏からの依頼』
劇作家で演出家「依田」の妻から小説家の主人公「大野」が、依田から
聴き取った話しのメモや録音から小説にして欲しいと依頼を受けた話し。
その過程で、1,2分が2時間に感じたり、時間感覚の差異の拡大に歯止め
が利かなくなった主人公。
1日が極端に短くなったりして、読んでる私までも錯覚しそうで、よく
理解出来ない話しでした。
「一人一人の人間が自分の勝手なテンポで生きている。そして、その
テンポは常に揺らいでいる。」←まったくその通りで、十分納得!
読んだ私には、よく分からない不可思議な話しばかりで、「ページを捲って、早くこの
場所から逃れたくなる」小説でありました。
登場人物のその後は一体どうなったのでしょうか?