『ロスジェネ世代に生まれ、シングルマザーとして生きてきた母が、生涯隠し
続けた事実とはー 急逝した母を、AI / VR技術で再生させた青年が経験する
魂の遍歴
四半世紀後の日本を舞台に、愛と幸福の真実を問いかける、分人主義の最先端
「心配だっただけでなく、母は本当は、僕を恥じていたのではなかったか?」』
本の帯より
この本は2019年から2020年にかけて新聞連載されたものを、2021年に単行本発行。
物語の設定は2040年代。
誕生からずっと母一人、子一人の二人だけで生活してきた主人公「朔也」の物語。
(1日生まれの「朔也」の『朔』は、古い言葉で『一日』を意味するとは知りませんでした)
そんな彼が突然母を亡くし、寂しさに耐えられず<母>のVFを作り、その<母>を
より母に近づける過程で、自分が全く知らなかった母の人生を知ることとなり、母が
「自由死」を決めていたその思いをも理解していく朔也。
VFの母は<母>、亡くなった母は、母として区別して語られていました。
[VF]って?? 「ヴァーチャル・フィギア」の略で、人型ロボットのようなものかと思って
いたら、違いました。ヘッドセットを付けての<母>との生活でした。
[VF] 制作会社があり、そこで働く嘗て人の夫であり、親であったVFの男性と朔也との会話は
完全な生存者としか思えない感情溢れるもので、切なくなるほどでした。
「自然死」に対しての「自由死」はこの時代には認められているようでした。
かつての「安楽死」を「自由死」の言葉で語られていました。
この「安楽死」が話題になった数年前に、友人たちと話したことがありました。
先ず「死後にあの世があるか」との話しに友人はあの世があると信じなければ、死が怖いと。
私は死んだら、「無」しかないと思っていました。
が、両親や祖父母、叔父や叔母、周りの知人が亡くなっていく中、みんなのためにあの世が
あって欲しいと望むようになりました。
そして「安楽死」についてはあまりにも難し過ぎて是非は議論出来なかった、、、が、
クリスタルなカプセルの中で、夢のような美しい風景と爽やかな風、小鳥の楽しそうな
さえずり、花びらが舞う中、私もきらきらと花粉のようになり、宙に舞って逝きたい。
そして、残された者が哀しむことがないようにその瞬間みんなから、私という記憶が
なくなる、」という話しをした記憶はあります。
この小説にも同じようなことが書かれていました。
朔也の仕事は「リアル・アバター」。
ヘッドセットを付けて、依頼人のアバターとなって、代行する仕事。
将来、私は身体的に不安になったときに利用してみたいと思うほど魅力的なものでした。
また、自分のアバターを使って、仮想空間で楽しむことも出来るとても楽しい時代でした。
そんな時代に、
朔也に看取られながらの「自由死」を決めていた母は、結局は望み通りでなく、突然の事故
で死んでしまいます。しかも、交通事故でなく、ドローンが落ちてきて、直接当たったのではなく、
驚いて側溝に落ちて亡くなったという、あまりにも不運な出来事が悲壮過ぎ、、
しかも、何年もかけて得た「自由死」という彼女の強い意志とはあまりにもかけ離れた死であり、
結果的には朔也のみならず身近な人にも看取られず死を迎えたなんて、、、。
やはり、死を決めるのは誰にも出来ないことではないでしょうか!
朔也は本当の母を知るにつれ、
ー 僕は、母の心を、飽くまで母のものとして理解したかった。ー と。
この小説は「最愛の人の他者性」に向き合う物語でありました。
余談ですが、この本に、以前読んだ「本のエンドロール」に書かれていた刷り直しが
三角の薄い々シールが、密着していて剥がれそうにありません。
奇跡!!!を見ました(^_^)/**
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