「櫛挽道守」、この題名「くしひきちもり」は何を表しているのか漢字からも最初は読み取れなかった。
作者は「木内昇」、女性の時代小説家で新撰組大好き人間のmio marito の本棚にも
「地虫鳴く」があり、この本もmio maritoに紹介された一冊です。
神業と称えられる櫛職人の父。 家を守ることに心を砕く母。
村の外に幸せを求める妹。 才を持ちながら早世した弟。
そして、櫛に魅入られた長女登瀬。
黒船来航、桜田門外の変、皇女和宮の降嫁・・・
時代の足音を遠くに聞きながら、それぞれの願いを胸に生きた家族の
喜びと苦難の歴史。 (本の帯より)
ー「歩を進めると、足下の雪が鳴いた。登瀬は、音に耳を添わせて数を唱えはじめる。
ーひ、ふう、みい、よう、いつ、むう。」ー
本を開くと、心地よい拍子を数えるこの文から始まりました。
どこを見ても山に阻まれている中山道の宿場町「藪原宿」で、「お六櫛」の櫛挽職人の
家族とその時代に生きた人たちの話でした。
女であるが故の苦闘を背負う登瀬、出自に苦しめられてきた人、自分の居場所を探す人。
胸に沁みる時代小説でした。
ー「ええ拍子だ」気付けば、登瀬は、父の手を取っていた。長らく使われて節の膨れあがった
手を、両手で強く握っていた。
家の中には櫛挽く音だけがある。
静かだった。
登瀬はなにもいうことができず、いつまでもそうして、父の手を摑んでいた。」ー
本を静かに閉じ、しばし私も櫛挽く音を心地よく聞いていました。
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