草原に額縁を立て、その中で演手たちが鮮やかな物語を繰り広げる――。
遊牧の民アゴールは、その伝統を「生き絵」と呼んで愛していた。物語を作り、
遊牧の民アゴールは、その伝統を「生き絵」と呼んで愛していた。物語を作り、
演出を手掛ける「生き絵師」のマーラは、若くして部族長たちの前で生き絵を披露する役目に大抜擢される。
だが、その矢先に突然の悲劇が。“動くもの”が、全ての人々に見えなくなってしまったのだ。
そんな世界で、もはやマーラの「生き絵」は無力なのか。そして、遊牧が困難になったアゴールの民の運命は。
(帯より)
この作品は「凍る大地に絵は溶ける」より改題され、第二十九回「松本清張賞」を受賞。
改題前の題名も意識しながら、読み進めました。
「凍る大地に絵が溶ける」よりは、「凍る草原に鐘が鳴る」の方がより壮大な風景と鳴り
響き渡る音と風を感じることが出来ると同時に、私は読む前から想像力をよりはっきりと
膨らますことが出来ました(*^_^*)
見えなくなったことを只嘆いているだけでなく、工夫し生きていく人々の姿に人間の
力強さを感じました。
マーラも生き絵師として、古い「生き絵」に縛られ考えが及ばず、失望し、悩み、
葛藤するのです。
だが、彼女は気付きました。
この目だからこそ、楽しめるようにやり方を変え、新しい世界に生まれ直すんだと。
そして、
一切の濁りがなく鮮明で、実際に動くよりもはるかに躍動的に本物らしく見える
「生き絵」を仲間と共に完成させ、見物客に感動を与えるのです!
人は見えるものを見たいと思う訳ではなく、もう見ることが出来なくなったものを、
最も見たいと欲するので、その感動は計り知れないものだったのでしょう。
古いことに縛られず、また自分の過去に拘らず、出来ないことを嘆かず、新しい事に
挑戦し、今を明日をより良く生きることで人生が開けることを教えて貰ったような気
がします。
動くものが見えなくなった目でない限り見る事の出来ない、幻想的で美しい
「生き絵」を、私も壮大な草原の中で見てみたいと強く思いました。
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