ぼくの選んだ人

ゆうぐれを
とぼとぼ帰るとき

下を向いているか、上を向いているか
ときくと

どちらもあぶないから
ちゃんと前を向きなさい
ばか

というひとだ。

コンビニ

よくいくコンビニではもう
いつものたばこの銘柄
なにも言わなくても
すっと出してくれるのだった

今日はもう、おなかがいっぱいで
ちょうど夕げのしたくを済ませた家族が

ちょっとお隣と話し込んでいるところなのだった。

くたくたに溶けていいか

雨の日がつづくとき
そろそろスープでものみたくなるのだった

なべを持ち出し
根菜を大まかに切って、
くつくつとなるなべの中へひとつまみずつ運んでゆく

ぷつん ぷつん

というのは、泡の音なのだろうか
それともそのまま
にんじんや、じゃがいもの音なのだろうか

救出

カメラひとつ
いつも胸に抱くこと
決してはなさないこと
みのがさないこと

ろっぽんあし

カメムシが一匹
網戸に張り付いていた
確か昨日のことだ

今日ねむるときになって
天井と壁の一番端のところに
彼がくっついているのに気がついた

秋

缶コーヒーをかう
つめたいやつを

一口飲んでから
さして暑くないことに気づく
蝉の鳴き声もしばらく聞いていないし
汗もかかない

秋だ
やがて
夕刻のころ、虫の音が近づいてくる。

油壺

水を半分入れ、灯油をつぎたす
そうすることで
油絵の具のついた筆を壺の中で、ゆらゆらとこすると
剥がれ落ちた油絵の具は
しばらく灯油の中を舞ってから
自分の重いのを思い出して
静かに落ちてゆく
やがて水と油の境目について
ハッとしたように
水にぬれ
ぽとりと沈んでゆく

しんぱいごと

にほんは
どこと戦争をするのでしょうか

にほんは
だれなのでしょうか
どこなのでしょうか

にほんは
あるのでしょうか

にほんは
だれのために どこから
どこからきたのでしょうか

にほんは
だれを戦火にまきこむのでしょうか

にほんは
北海道と 沖縄と
どこなのでしょうか

にほんは
にほんでしょうか