日本人としてのアレ。

通りすがりで会ったなら、その出会いを大切にしたい

『同じ場所の夢・第一夜』

2015-09-18 | 曼荼羅タイト
ここ三日、同じ場所の夢を見ている。

すごい豪邸に住まわせてもらっている、と言う夢で、僕はそこに、三日間違う美女と過ごしている


正確に言えば、数人の女性で構築されたハーレムの様な場所。

家を真上から見ると、バームクーヘンの中心を90度の角度から切ったように、キレイに曲がっていて、

一回のリビングがあまりにも広すぎて、端にいると、物理的に向こうの端が見えない。



見たことのない様な近未来的なキッチンに、迷路のような階段で二階へ上がる。

基本的には、全ての暮らしが一階で出来て、

二階は、凄くキレイな物置、と言う感じ。


図書館の量の本や、未開封のプラモデルの箱、ショーケースに入った貴金属など。

僕の趣味には合わない昔のものが所狭しと、秩序はないが整頓されて置かれている。



と言うのも、僕は、住まわせてもらっている設定。


一日目は僕は一人だった。


こんな広い部屋に一人、夢の中でも少し寂しさを覚える。


別に自分で料理もしないので、大きな冷蔵庫は空だ。


夢の中での仕事は、なんだろう?

起きた後でも仕事をしていた記憶はない。


けれども、どこかに出かける。

ドアをあけると、大草原だった。

その大草原は無限に拡がる、と言った訳ではなく、"それ以上先に進むと世界がきえそうな雰囲気"

記憶は曖昧だけど、それ以上は進まないようにしたはず。



帰ってくると、冷蔵庫の中には食材がぎっしり詰まっていて、丸いガラスのテーブルには暖かいカラフルな創作料理が用意されている。



一人暮らしの設定のはずだけど、料理は二人分、ワイングラスも二つ。


そのテーブルに座ると、全面ガラス張りの壁で、庭が見える、庭もとてつもなく広いけど、どこが無限ではないイメージ。


警戒もせず料理を食べていると、庭の方面から、ガラスがバチン!と叩かれる。


おわぁ!!!とビックリ。


勝手に、『この世界』には、僕一人だと思っていたからだ。


ガリガリの骨だけの様な体で着ているボロボロのワンピース。

多分洗えば、真っ白なんだろう、レースの部分から糸がほつれたりしている。

長く伸びた黒髪はバサバサで水っぽくない。

目が半分しか開いていない状態で、ジロジロ僕を見ている



うわ、怖いなぁ・・・と思う間もなく、女はガラスを貫通してニュルーりと入って来た


え?何々?!と、しっかりと自分の恐怖を確認すると、思わず僕は、料理の皿を女に投げつけつけて、「なんだお前は!!」と叫んだ。

バキ!っと女に皿が当たり、床に落ちてパリンと割れた、割れた皿の上を歩く女の足からは、裂けて血が出る。


ワイングラスや色々なものを投げて応戦。

しまいには女は諦めてくれて、『私が一生懸命作ったのにぃぃひぃぃぃいぃいぃいいいーー!!!!』と叫んで、くるりと回ってガラス窓をバリーーーン!!!と突き破り、出て行った。


散らかるリビング、大きく割れた窓。

この世界に風はないらしい、空気の流れは入ってこない。


僕は、キッチンの方に逃げて、"起きる"のを待った。

ぼんやり起きた・・・


なんだったんだろう???怖い夢だったな・・・と思いながらも、夢の続きを見たいので、僕は布団から出なかった。

また、あの"家"に戻る。

部屋はキレイに片付いていたけど、窓ガラスの割れは直っていない。

人がすんなり入って来られる。


丸いテーブルの上には手紙が、文字になっていないような殴り書き。


【あなたじゃないのよ、あなたじゃないのよ、あなたじゃないのよ】


僕も、ここが自分の家だとは思っていない、

あの女は、本当のこの豪邸の持ち主に何か狂った好意を持っているに違いない・・・。



ドスンと二階で音がした。

僕は、[これは夢だから]となんとなく判っているけど、夢の中に入ると、それがどうも上手く作用しない、怖い物は怖いのだ。

恐る恐る二階へ上ると、あの女が、整頓された他人のコレクションを散らかしながら、ブツブツ言っている


『ないないない・・・ないないない・・・ないないない・・・』




「おい!!」

女がギロリと振り向く

「ここは、お前の家なのか?!」

女は答えない。


近付いて、よく聞くと『ない・・・』と言っているのではなく

『いないいないいない・・・』とずっと言っている・・・、



「おい!」ともう一度、

『あなたじゃないよぉぉぉぉおおおおぉおぉぉおおおぉぉぉぉーーーーー!!!!あああああぁぁぁぁあぁぁぁーーーーー!!!』

と叫んで、女は忽然と消えた。


僕は、納得のいかない安心感を得た。


一階に戻ると、リビングのテーブルには、清潔感のある女性が座っている。

髪は潤っていて、ショートボブスタイル。


丁寧にナイフとフォークを使って、ステーキを切っていた。


『なんか上で、騒いでいたけど、どうしたの?』と振り向いた女性は、とてもキレイな顔立ち、

キツネの様な顔をしているが美人だ。

化粧のニオイもしない。



僕は、その人を知っている事になっている、僕の彼女らしい。

「いや、なんでもないよ」


こんなキレイな女性が彼女なら、起きなくてもいいかなと思う。


"キレイだなぁ・・・・"と見とれる、自分の彼女のはずなのに。




ふっと、人の気配を感じて、割れた窓ガラスの方を見ると、


日本人ではなさそうなオジサン、黄色い肌の東洋人がこっちを見ている、

ハゲた頭に、薄い色のワイシャツ、ループタイのラフな恰好。

紙袋を持っている、その腕時計を見ると、高級そうだ。

お金を持っているけれど、物には執着心がないタイプの人だな・・・と思うと


僕は、"あ、この豪邸の家主か?"と「すいません、ここって・・・」と声をかけると、オジサンは、去っていった。


僕が行く勇気のない範囲の向こう側まで行ってしまった。


僕の彼女の設定の女性が言う『どうしたの?』

オジサンの事を説明するけど彼女には、見えなかったらしい・・・


『そんな事、ある訳ないじゃない、二人しかいないんだから』


彼女が笑った。

ニッコリと笑って見えた、歯の白さは、白の限界を超えていて、もはや、そこには何もない様にも見えた。



つづく。


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