日本人としてのアレ。

通りすがりで会ったなら、その出会いを大切にしたい

『だって自分が、』

2016-10-12 | 曼荼羅タイト
さっきまで、周りに俺の酒を飲む奴等が沢山いたけど、帰ってくりゃ、コンビニのシュウマイも食べてくれない。

もちろん、俺の万年筆は物を食べないし、

電球だって、電源さえ入れれば、言う事を聞く。


ネクタイを外して、いつもの自分に戻ろうとするけど、いつもの自分が、どんな人間なのか、


もう解らないし、解らなくてもいい。

そんな時でも、何かが欲しくて、



映画を再生するけど、10分も持たずに消したりして、



あいつの嘘の証拠を探そうとしたりして、みつけたって、突き付ける勇気もないんだ、本当は。


ふと、さっき脱ぎ捨てた背広を、ハンガーに着せて、窓を開け



空気を入れ替える。
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『自由』

2015-12-16 | 曼荼羅タイト





ニンゲンって、スゴく広い定義ですよね。

地球の中で地球人に産み落とされたなら、それって、ニンゲンなのかな?



人間の中でも、【会っても絶対に理解し合えない人間】もいるのに。




人間と言うランキングの中で、僕は多分、

平均値より、多少、↑の方に位置付けられていると思う。


と、言うのも、【日本】に産まれた時点で、上の方だと、僕は勝手に思う。




日本と言う、宇宙にまで、真理を求めたり、金を稼ぎに行く国で、そこそこ不自由なく生活している。

僕は、そこそこ太っているし。

そこそこ不自由でもある。

それが日本人らしい。



日本人は、地球上の自由と言うのを、はき違えているし

これが正解だ!!と言われても、こっちが困惑する。





自由って、なんだろう?


気に入らない奴の名前をノートに書けば、そいつがこの世から亡くなる事が、自由なのか?

大好きな女の子を目の前にして、時間を停止させる事が自由なのか?




僕は、勿論、感覚的に知らないので、他人から見て「僕が」自由かどうか?は、判断しにくい。





けれども、僕は結局「不自由だ!!」と声を出す。




なんでそんなに恵まれた世界で不自由か?と聞かれたら、僕の答えは一つしかない。







この世界には、僕が面白いと思う事を共有できない人がいる。


それだけが、不自由。




僕は、僕が面白いと思う事、面白い友達、それを共感するニンゲン、

それだけでいい。



なのに、なんで、それを理解してくれない人がいるんだろう?






そんな人がいなければ、各々の宇宙が幸せで、争いなどは起きないで、

ゆっくり、知らぬ間に幸せの中で人類が滅亡できるのに・・・。







宇宙とか、生命とか、俺の知らない「なんとか」とかが始まるなら・・・


いつか、終わるでしょ。









終わった後の事とか考えて、宇宙創ったのかな?




んーーーーー


でも、【宇宙】には、終わりも始まりもないのかも知れない。


一つの【永遠】なのかも・・・。



その中で、限りある『人間』になれた事に、感謝する以外、



するべき事は、みつからない。




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『涙が渇く理由』

2015-11-08 | 曼荼羅タイト
老若男女、どうしても「理由もないのにイライラする日」があるらしい。

原因を探そうと思えば思うほどイライラする。

本来、私は簡単にはイライラしない人間だ、


いや・・・、どちらかと言えば、イライラはするか・・・。

『イライラを抑えられる人間』と言った方が適切だ。



25歳までは、今の仕事を続けてみようと思う。

まだ、3年しか務めていない会社を諦めると言うのは自分の忍耐力の弱さを実感するには十分な素材だ。

それ以降、しっかりと成績を残してから、ここは私の職場ではないと伝え、正式に退職してこそ、私の将来があるんだと思う。





中学生の頃、私は地味に埋もれた生徒だった、と言っても今も派手ではない、粗相なく業務をこなす生徒会長だった頃と変わらない。

当時、立候補もしていない選挙で生徒会長に選ばれた。

表向きには立候補した事にはなっているけれど、私は、そんな矢面に立つ人間ではなく、休み時間にはヒッソリと、教科書の端にパラパラ漫画を描いているのが趣味で、それを自画自賛して楽しむ、普通の女子中学生だった。



その頃には初潮を迎えて、自分の体から、血が流れる事も知ったけれど、驚きはしなかった、

感覚としては、『あ、これが生理か』と言った第三者の感覚で、自分のパンティに流れた血の匂いを嗅いだ。

その日は、パンティを下校途中で捨てた。

母親に、生理を迎えた事を知られたくなかったと言うのが正直な気持ちだ。



『媚びる』と言う感覚を知らなかった為か?一部の男子生徒にはモテた。

全校の女子から人気のあった、バスケットボール部の人気者から告白された事もあったけれど、これを受け入れたら、他の女子を敵に回すことを知っていたし、なにしろ彼がタイプではなかった。

むしろ、目立たない存在の吹奏楽部の男、名前は忘れた、彼からのトロンボーンを使った告白が衝撃的で、彼の体を私が受け入れたのが、初めての体験だった。



つづく
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『刑事もの』

2015-11-07 | 曼荼羅タイト
やっぱりいつかは刑事ものの小説で、人気キャラを産み出したいものです。










トーストの上にバターを乗せてジンワリと溶けていくのを横目に、スープカップの底に沈殿するコーンスープの粉をかき混ぜていると、テレビから聞こえてきたのは近所で起きた殺人事件だった。

小さなスプーンにこびりついたコーンスープの濃厚な粉を舐めとりながら、自分の知っている地域かと言う事に興味を持つ。

自分の知っている家だろうが、殺されたのが知り合いだろうが、俺がそれを自慢気に第三者に伝える手段としては、Twitterくらいしかないし、そのツイートを常に見られる人も知り合いではない30人前後だ。


バターが溶けたのを確認すると、ジャムを取りに冷蔵庫に向かう。

冷蔵庫の先には、靴が散乱している玄関だ。

小さな一つの部屋と、玄関を兼用したキッチンがある、キッチンには一か月に一度、立つか立たないか。


思い切り踏みつぶせば割れるであろう安いテーブルの上で、自分のスマートホンが揺れている。

ブブブブブ ブブブブブ ブブブブブ

電話の相手は、知り合いの刑事だった。


「はい」ジャムは片手に持っている。

「お、ニュース見てるか?」

「うん、見てるよ、藤崎町のやつだろ」

杉山とは、知り合って五年は経つ、友達の友達と言う形で出会った。

杉山は、俺が働いていない事をいい事として、事件の手伝いをさせる、年齢は俺と同じくらい、40手前だ。



勝手に俺との約束をとりつけ、一時間後位には、家に来ると言う。

杉山は、事件が起きると、ゲン担ぎの様な形で俺の家を訪れる。




インターホンを無視して、拳でドアを殴る音がする。

「入って来ーい」、俺はテレビを見ながら杉山と、いつも連れている部下を招き入れた。



「相変わらず汚い部屋だなぁ・・・」と言いながら杉山は、水平チョップを額にあてて挨拶をした。

「また、俺んちかよ」

「まぁ、そう言うなって」、例えにくい色をしたネクタイを首にだらしなくぶらさげている。



部下の、高崎と言う男は柔道選手にでもなれば?と助言をしたくなる体格で、俺の部屋を一層狭くさせる。

しっかりとスーツを着ているが、もっと動きやすい恰好をしろ・・・と高崎を見るたびに思う。



杉山が「藤崎町の事なんだけどな・・・」と一通り、警察しか知らない情報をペラペラと俺に話す。


高崎はいつも、そこまで言っていいのかなぁ?と不安な顔をしている。


「で、いつものヤツでいいのか?」と俺は提案する。

「あぁ」杉山はネクタイを外した。


杉山は、高崎に「ジシュマチさん」と呼ばれている。


「ジシュマチさん、これ」と言って高崎は紙エプロンを差し出す。

「さんきゅーな」

杉山が来ると分かっていたので、俺は、いつものカレーを作った。


杉山は、それを水を飲まずにたいらげる。


そして、俺の布団でゆっくりと寝るのだ、自分でもよくこの俺の布団で寝られるな、と感心する。

杉山が寝てから、20分位経った時、高崎の電話が鳴った。


「はい、あ、そうですか、わかりました、はい、戻ります」


高崎は安心した顔をする。

「ジシュマチさん!ジシュマチさん!!」杉山の体を揺らす。


「お・・・あぁ・・・、自首してきた?」杉山が起きる。

「はい、自首してきたみたいです」


「あ、そう、じゃ、帰るか」

杉山は、俺に3000円を渡して、「ゴチゴチー」と言いながら、帰っていった。



杉山・通称「自首待ちさん」

ただ、ひたすらに犯人の自主を待つ。


自首を待つ、職人だ。
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『同じ玄関の夢・第三夜』

2015-09-29 | 曼荼羅タイト

「シュリ!!シュリぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

と叫んだ、



けれど、実際の僕は寝ている状態だし、布団の僕は、少しだけ寝返りをうつ・・・くらいのものだろうか?

そんな想像をする気もなく、僕は、自分の睡眠中の彼女の為に、幽霊屋敷の中で、引き裂ける程の力で喉を使った。


その、僕の叫び声も届かず、シュリの反応はナイ。







少しだけ助走をつけて殴り掛かれば届く位置にいる、白いワンピースの女は、僕よりも大きな声で、自分が探し求める相手の名前を叫んでいる様だけれど、聞き取る事は出来ない。

聞き取れるような音量じゃないと言えば、伝わるかもしれない音量だ。





その白いワンピースの女に、【黄色のマネキン】が捕まった。






以前までの僕から見た黄色のマネキンの印象は、特に冷静で、表情を変える事はなかった。

【赤】などは、僕が命令口調で何かを命ずると、一瞬、コチラを見た後、不服を抑えて業務に努める印象だったけれど、黄色は違った。

黄色は、一度たりとも、僕に目を合わせた事がナイ。







思い出せば、こんな夜があった。

僕が、飲んだこともない色の液体を飲み干し、酔っぱらっている感覚に近い陶酔感を覚えている時に、【黄色】に言った。




「ヒマワリを持ってこい!!!」

座り心地の良い、至極のソファで僕は叫んだ、勿論、この夢の中で。

黄色は後ろを振り向き、両手を拡げ、間を確認して一気に閉じた。

何かを捕らえたのは僕にも見えた。



黄色がこちらを振り向くと、立派な黄色に輝くヒマワリを持っていた。


僕は、感動したが、その鮮やかさに嫉妬した


今、思えば、何故、そんな事を言ったのかは判断できない、陶酔感のせいにしたい、「そんな黄色じゃねーよ!!!」

僕は、グラスを黄色に投げつけて、見たこともないようなヒマワリを蹴り飛ばし、黄色を殴りつけた。



黄色は、鼻から黄色の液体をこぼしながら、次の準備をした。



もう一度、【黄色】が出現させたヒマワリは、僕から見たら、黄色なんだけども、見たことがナイ黄色で、

言葉と心を失った・・・、美しすぎたのだ。





この僕の世界では『限界』と言うものがナイらしい・・・。

キレイなものは、常に更新され、驚かせてくれる・・・。


そんなやり取りを、黄色と、一晩中やりあった。








その朝、二日酔いの感覚のまま、眠りの中で目覚めると、

失明するほどの黄色の眩しさが、僕を責め立てる・・・



その時は、シュリが近くにいた、「ちょっと・・・、昨日は、やりすぎじゃない?・・・」


声のトーンは呆れていた。


僕に、それを言うのは初めてじゃないんだろう、この世界では。




このまま起きて、この花束を現実世界に持ち帰られるなら、億万長者の一人になれるだろう・・・

その様な未知の黄色いヒマワリで、部屋を飾っていた。











そんなヒマワリを創造してくれた【黄色】が、白いワンピースの女に・・・捕まっている。

女は、黄色に尋ねた。


「今、あの人はどこにいるのよ?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・


黄色は答えない、

一瞬の沈黙をかき消すような破裂音がした、


黄色が、女の手の中で弾けて散った。

まるで水風船が爆発したように・・・





僕が、腰を抜かして、ただ茫然と、出来事を時間に任せていると・・・





白いワンピースの女は、色々なマネキンを捕まえて、破裂させていった。


部屋の各所で、色が弾ける。






【紫】のマネキンを破裂させた時に、やっと僕は、気付いた。



部屋の色がドンドン・・・


ドンドン暗くなっている?




暗くなっている訳じゃない!!


色がなくなっている!!!!




紫は、シュリが大好きな色で、僕がシュリの爪に塗った初めての色だ。



「あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


色が失われていく世界に、何をしていいのかは分からない、

僕は叫ぶしかなかった





ドンドン、この夢の世界からは色がなくなっていき、もう、灰色、白と黒とでなんとか認識出来るほどになった・・・



その時にふと、白いワンピースの女を見ると、今までの様子とあからさまに違った。



その女にだけは色があり、

白いワンピースには、残酷な血痕の赤や、人に殴られたような跡の青と、痛々しく腫れた黄疸

薄汚れた深緑や、髪の毛の黒さもしっかりと見えた。






なんなんだこいつは!!!!



シュリを助けたい、シュリの色だけは奪わせないぞ!!!と僕は抵抗した、


部屋にある、色のナイ絵画や壺、柔らかい花、色のマネキンの残骸などを投げつけた・・・


投げつけながら逃げる、


玄関から出れば、この悪夢から覚めて、僕は平凡な"売れていない芸人"に戻れる気がした。




"もう、こんな世界どうでもいい!!!!!"


全力疾走で玄関に走る。



後ろを振り向けば、あの女の様子はナイ。


玄関のドアを開ける、その時に、冷蔵庫が鳴った。

声がする、直ぐにシュリだ!と気付いた。


僕はこの世界から逃げる事を忘れて、冷蔵庫を開ける。


冷蔵庫の中には、色を亡くした真っ白いシュリが固まっていた。


「シュリ!!シュリ!!!!!」



シュリは、死んではいなかった、なんとか生きている様子。


僕は、冷たく凍えて、強く持ってしまえば、パリンと砕けてしまいそうなシュリの手を握り、冷蔵庫から出した。









あの女の様子は周辺に、ナイ。




「シュリ・・・、シュリ・・・、ここから逃げよう、俺が目を覚ませば大丈夫なんだから」


と言いながら、左手でシュリの右手を握り、


僕は、自らの右手でドアノブを握って開けた。




ぐっ・・・わぁーーーーーああああああああぁぁああーーー!!!


ドアノブを開けた先には、直径3メートルはある様な、あの女の顔がニッコリと笑って、僕に叫んだ。


『おおおおーーーーー、おぎる・・・おぎ、ぎぎ、おき・・・起きる時間よぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!まだぁー、まだまだ、あんだわぁーーーー!!!!・・・・・』



僕は、気を失う感覚で、布団の中に戻った、




夢の中、右手で本気で握っていたのはドアノブではなく、自分のスマートホンだった。







いつもの部屋だ・・・



汚い部屋だからこそ、色が沢山ある・・・


とても深い呼吸を一度して・・・、今日もバイトだと再確認した。




「そうだよな、夢だよな・・・」、不意に出た独り言に、自分でも笑ってしまった、「はは・・・、最近、飲み過ぎてたかな・・・」







なんとなく。


汗だくになった自分の脇の下をなでながら、


なんとなく、見た、


現実では出逢うはずのナイ、シュリちゃんのインスタグラムを見てみると・・・

彼女のタイムラインの写真が全て、白黒になっていて・・・

「あ・・・・・・、あああああぁぁぁぁあぁぁぁーーーーー!!!!!!!!!」


僕は、奇声の勢いで自分のスマートホンを壁に投げつけた。

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『同じ部屋の夢・第二夜』

2015-09-19 | 曼荼羅タイト
第一夜



本当の布団の中で起きてみて、どこかに感じる違和感は、直ぐに"あのキツネ顔の美少女"の存在だと思った。

会ったことはないけど、僕は彼女の事を知っている、もう一度寝てもいいと思える眠気に負けそうになるけど、彼女の正体を確かめるべく


思い当たる節のあるInstagramをタップした。

僕が夢に見た女の子は、そのシュリちゃんなんだと・・・確認した。

勝手に好意を寄せている女の子だ。



あー、そうか、あれはシュリちゃんだったのか・・・

自分は欲求不満なんだなとも反省する、見知らぬ女の子まで自分の夢の中に出演させてしまうとは・・・



その日の仕事は、どうにも上手くいかなかった。

僕はパッとしない芸人で小さなショーパブのボーイとして、客にポップコーンを配ったりしている。

舞台に上がる先輩芸人の事を面白いとは思えないし、それを超える面白さも、自分では思いつかない。



あと半年で、30歳を迎える。

30歳になったら、芸人の道を諦める事も視野に入れている。



バイト中は、ただ時間が過ぎるのを待った。

自分の部屋に帰宅して、安い焼酎で棒状のチーズを飲み込んだ。


部屋には何もナイ、散らかっているけど、「コレ」と言うものはナイ。

一言で説明するなら、ゴミの山ってのが簡単だ。

明日は起きるのが早い、アラームを設定して、布団に入った。














僕は夢の中で目を覚ました。




寝る前の自分の部屋には絶対に置けるはずもない、ふかふかの緑色の皮のソファーで目覚める。


あ・・・、昨日と同じ家だ・・・

やはりガラス窓は割れている。



昨日は、この豪邸に寂しさを感じたけれど、今日は、違う。


まず、食事の匂いがするし、空気の流れも感じられる、周りを見渡すと、肌の色が赤や青、黄色、他の色もある、沢山の女性のマネキンが部屋のそこら中に立っていて、不気味さも備えているけど、それは、一つ一つが違う表情をしていて、芸術品の様に見える。

昨日はなかった、抽象画も飾ってあったり、ショーケースの上の花瓶の色も表現し難い美しい色、花の造形などは特に、夢でなければ見られないだろう。

庭の景色も、昨日とは違う、見たこともない果物がなっている木や、

重力に逆転して、上流にゆっくり向かう川。

遠くには、鳥の様な羽ばたきを見せるものもあった。





風景が、カラフルになった。

まるで、クレヨンで描いたような世界観だ。








『起きた?』

ふと振り向くと、シュリちゃんが、トーストの上にベーコンを乗せた皿を持って、ニコリと笑っている。



「あ・・・、シュリちゃん・・・」

僕は、これが夢であると言う事を確かめるように彼女の全身を見た。

彼女を知る訳がないし、彼女が僕を知っている訳は、絶対にない。




『え?何?"ちゃん"って、気持ち悪いよー』と言いながら、シュリちゃんは僕の前に、朝食を用意した。


僕は、この世界の中でシュリちゃんの事を「シュリちゃん」と呼んでいないらしい。

僕にとっては、知らない女の子だけど・・・この世界の僕にとって、シュリちゃんは、信頼できるパートナーなんだろう。






だから誤魔化した。


「ははは、たまには"ちゃん付け"も新鮮だろ?・・・」、相手の顔をうかがいながら冗談にはならない言葉で確認した。




『昔から、シュリって呼び捨てにされたけど、今は慣れたよね』


シュリは後姿のまま、コップに何かを注いでいる。

僕は沈黙して、現状を理解しようとした。

テーブルに優しく、牛乳が置かれる。




牛乳でトーストを流し込んで、僕は質問した。

まるで、この世界を知っている様に


「このマネキンさ、最近、動いてるの?」
(なんとなく、今にでも動き出しそうな気がした、そのマネキンに対する質問としては上出来だろう)




シュリは、僕の顔をまるで、この世界の人間ではナイ様な顔で見る、

少し眉間にしわがよる。


『動いている・・・って言うか・・・、最近、貴方が寝てたし、動いてなかったよ』




???


もう、疑問しかない。


「そうだよね・・・」





沈黙を続け、何分で朝食を食べて休んだか、判断出来ない。


でも、僕は迷った挙句、シュリに僕のすべてを告げた。







僕は、今寝ているという事。

現実の世界で、君と会った事がナイ事。

でも、なんとなく知っていて、憧れている存在だと言う事。


寝ている部屋は、ゴミ部屋で、こんな優雅な朝食は久しぶりだし、出来る事なら起きたくない。

この世界にずっといたい事。






シュリに笑われると思った。

彼女は、この夢の世界で現実を生きている。

僕はシュリの彼氏で、優しくしてくれて、愛されているのも感じている。




だからこそ、シュリは優しく。

笑って、全てを肯定して、僕の現実世界での失敗談や、自慢話を聞いてくれた。

一通り聞いた後で、【この世界】の扱い方を教えてくれた。



赤色の物が欲しければ、赤いマネキンに命じる事。

「赤、俺は、リンゴが食べたい」と言えば、赤は少し庭に出てきて、リンゴを持ってきてくれる。


赤の姿はまるで彫刻だ。

当然、服を着ていないし。

僕が見たこともナイような体つきをしている、乳房も美しい。

ウエストは、僕の両手を締め付けたら、自分の指先がつく位の細さ、

スラリと伸びる脚で、歩く姿にさえ、見惚れる。


しかし、その【赤】はマネキンで、髪の毛もないし、表情もナイ。

うつろな目で、返事もしないけれど、忠実に動く。





たまに、【青】にも話しかける。

青には、「シュリに、透き通るようなネックレスを」と告げると、青は近付いてきて、シュリの鎖骨の辺りを撫でると、透き通る海色の青く光るネックレスを出現させた。





『ありがとう、私に、これって似合う?』と照れながら聞くシュリ。

僕は「もちろん」と言って、部屋の中を散歩した。






玄関から入って来て、リビング、その先に右にカーブしながら進んでいくと、お風呂に続く部屋や、トイレ、一番奥には、古臭い色褪せた本棚に囲まれた書斎。


大きな背もたれの椅子が、主人を待っている。

僕のものではないとは理解していたので、座る気にはならなかった。



この豪邸の秘密を聞きたい。

シュリなら知っているんだろう。


「なぁ、シュリ・・・」と振り返ると、シュリはいない・・・、あれ?

さっきまで稼働していた色のマネキンの気配もない・・・


ふと、前を向くと、書斎の大きな椅子の後ろに、見覚えのあるワンピースを着た女が立っていた。


昨日見た女の様に汚くはないし、髪もキレイで肉付きも標準だった。

しかし、どうみても昨日のワンピースだ。


目の奥にある気配も、昨日の狂った女のものだと思って間違いない。

僕が一歩下がると、"大丈夫よ"と頭の中で音が揺れた。



「え?・・・」



"あなたは、まだ起きない、私が起こさないからね・・・"



僕が意識を失って起きた時には、まだこの世界にいた。















『あぁ・・・、やっと起きた・・・』、シュリだ。

『何度寝れば気が済むの??最近どうしたの?』、質問がそれから次々と飛んできたが、答えられなかった・・・





僕は、シャワーでも浴びながら"起きたい"と思った。

この世界は、素晴らしいけれど、少し怖い。




カラフルなマネキンが機械の様に動くし。

それが、妖艶でいて表情がない、不気味だし、会話も出来ない。



やはり、僕とシュリしか、人間としては存在していないのかも知れない。


意識を失う前に見た、あの女の不気味さは一日目に見たものが忘れられない。





僕は"起きたい"と言う気持ちが薄れていくほどの日々を、ここで暮らした。


少なくとも、50回前後は寝て起きた、けれど、【汚い自分の部屋】に戻ることはなかった。




そんな暮らしの中で、僕は例の書斎には近付かない様にしていた。

またあの女に会ったらイヤだし。




しかし、この世界から目覚めるには、あの女の説得が必要なのかもしれないとも思う。





たまにシュリに女の事を尋ねるが、シュリは話を逸らす・・・。


僕は、マネキンを動かすことにも慣れてきた。


けれども、この世界では僕は生きていない。



僕は、ただ寝ているだけなのだ、起きて、しっかりと自分の現実世界を見ないといけない。




何日経ったか数えるのを忘れた頃、朝食を食べた後に

勇気を出して、書斎へ向かった・・・。



大きな部屋のカーブを曲がると、あの女が、書斎の大きな椅子の隣に座っているのが見えた。


足が震えていたけど、しっかりと踵に力を入れて、進んだ。



女の目の前で、言った。


「なんで起きれない?」


女はしっかりと僕の目を見ても、言葉を出さない。

「俺は、起きたいんだ、これは夢の世界だろう?僕は寝ているんだろう?」


女が、僕の目から視点をズラす。






僕の後ろを見た、

僕も振り向く。




すると、あの東洋人のオジサンがいた。

あの時の恰好と同じだ、この世界の中では相当な時間が経っている。

しかし、オジサンは同じ恰好、


紙袋をおもむろに渡してきた。



紙袋の中を見ると、


うわぁーーー!!!!



さっきまで、僕を見ていた、あの女の生首が紙袋の中からこっちを睨んでいる!

女の方を見ると、


女の首はなく、グッタリと力が抜けて・・・、前に、重力に負けて、ドサリと倒れ、ズザザリ・・・と音を立てて砂の様に崩れて散らかった。



「なんなん・・・(だよ!!)」と叫ぼうとオジサンの方に振り向けば、オジサンはいない。





遠くの玄関の方から、キャァーーーーーーーーーー!!!!!!と、絶叫が聞こえる。


これはシュリの声じゃない。


赤や青、緑、など、色々なマネキンが、とても人間らしく、僕の方へ逃げてきた。


今まで機械の様だったマネキンが走ってくるのも不気味だったが、なにより不気味だったのは、首から上のナイ女が、障害物を手探りで避けて、こちらの方に全力疾走で向ってくる姿だ。


何かを叫んでくれるならまだしも、首から上がないので、無言。


テーブルや家具に、ぶつかりながら、どんどん僕の方へ向かってくる!!


僕は、自分が持っている紙袋に入った生首を求めて向かって来ているのが分かったので、吐き気を抑えながら、生首の髪の毛を掴み、その女に投げつけた。

ゴッ!っと頭蓋骨の当たる音がした、床に転がる自分の生首を拾い上げて、クルクルとネジを回すように女は自分の頭を取り付けた。




『ご、こ、ご・・・・・ごれは・・・・・・・・ごぉ、、、ゲホォ!!!これは・・、ごれは私のぉぉぉぉぉおおおおおおおぉおぉぉぉおおおおおおおおぉぉおおおーーーーーーーーーーーーー』


絶叫に、広い家が揺れた。


振動からか、女の長くて乾いた髪の毛が逆立ち、血管が浮き出て、全身が、床から数センチ、浮いていた。






僕は叫んだ、「シュリ!!!シュリィィィィーーーーー!!!!」





つづく
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『同じ場所の夢・第一夜』

2015-09-18 | 曼荼羅タイト
ここ三日、同じ場所の夢を見ている。

すごい豪邸に住まわせてもらっている、と言う夢で、僕はそこに、三日間違う美女と過ごしている


正確に言えば、数人の女性で構築されたハーレムの様な場所。

家を真上から見ると、バームクーヘンの中心を90度の角度から切ったように、キレイに曲がっていて、

一回のリビングがあまりにも広すぎて、端にいると、物理的に向こうの端が見えない。



見たことのない様な近未来的なキッチンに、迷路のような階段で二階へ上がる。

基本的には、全ての暮らしが一階で出来て、

二階は、凄くキレイな物置、と言う感じ。


図書館の量の本や、未開封のプラモデルの箱、ショーケースに入った貴金属など。

僕の趣味には合わない昔のものが所狭しと、秩序はないが整頓されて置かれている。



と言うのも、僕は、住まわせてもらっている設定。


一日目は僕は一人だった。


こんな広い部屋に一人、夢の中でも少し寂しさを覚える。


別に自分で料理もしないので、大きな冷蔵庫は空だ。


夢の中での仕事は、なんだろう?

起きた後でも仕事をしていた記憶はない。


けれども、どこかに出かける。

ドアをあけると、大草原だった。

その大草原は無限に拡がる、と言った訳ではなく、"それ以上先に進むと世界がきえそうな雰囲気"

記憶は曖昧だけど、それ以上は進まないようにしたはず。



帰ってくると、冷蔵庫の中には食材がぎっしり詰まっていて、丸いガラスのテーブルには暖かいカラフルな創作料理が用意されている。



一人暮らしの設定のはずだけど、料理は二人分、ワイングラスも二つ。


そのテーブルに座ると、全面ガラス張りの壁で、庭が見える、庭もとてつもなく広いけど、どこが無限ではないイメージ。


警戒もせず料理を食べていると、庭の方面から、ガラスがバチン!と叩かれる。


おわぁ!!!とビックリ。


勝手に、『この世界』には、僕一人だと思っていたからだ。


ガリガリの骨だけの様な体で着ているボロボロのワンピース。

多分洗えば、真っ白なんだろう、レースの部分から糸がほつれたりしている。

長く伸びた黒髪はバサバサで水っぽくない。

目が半分しか開いていない状態で、ジロジロ僕を見ている



うわ、怖いなぁ・・・と思う間もなく、女はガラスを貫通してニュルーりと入って来た


え?何々?!と、しっかりと自分の恐怖を確認すると、思わず僕は、料理の皿を女に投げつけつけて、「なんだお前は!!」と叫んだ。

バキ!っと女に皿が当たり、床に落ちてパリンと割れた、割れた皿の上を歩く女の足からは、裂けて血が出る。


ワイングラスや色々なものを投げて応戦。

しまいには女は諦めてくれて、『私が一生懸命作ったのにぃぃひぃぃぃいぃいぃいいいーー!!!!』と叫んで、くるりと回ってガラス窓をバリーーーン!!!と突き破り、出て行った。


散らかるリビング、大きく割れた窓。

この世界に風はないらしい、空気の流れは入ってこない。


僕は、キッチンの方に逃げて、"起きる"のを待った。

ぼんやり起きた・・・


なんだったんだろう???怖い夢だったな・・・と思いながらも、夢の続きを見たいので、僕は布団から出なかった。

また、あの"家"に戻る。

部屋はキレイに片付いていたけど、窓ガラスの割れは直っていない。

人がすんなり入って来られる。


丸いテーブルの上には手紙が、文字になっていないような殴り書き。


【あなたじゃないのよ、あなたじゃないのよ、あなたじゃないのよ】


僕も、ここが自分の家だとは思っていない、

あの女は、本当のこの豪邸の持ち主に何か狂った好意を持っているに違いない・・・。



ドスンと二階で音がした。

僕は、[これは夢だから]となんとなく判っているけど、夢の中に入ると、それがどうも上手く作用しない、怖い物は怖いのだ。

恐る恐る二階へ上ると、あの女が、整頓された他人のコレクションを散らかしながら、ブツブツ言っている


『ないないない・・・ないないない・・・ないないない・・・』




「おい!!」

女がギロリと振り向く

「ここは、お前の家なのか?!」

女は答えない。


近付いて、よく聞くと『ない・・・』と言っているのではなく

『いないいないいない・・・』とずっと言っている・・・、



「おい!」ともう一度、

『あなたじゃないよぉぉぉぉおおおおぉおぉぉおおおぉぉぉぉーーーーー!!!!あああああぁぁぁぁあぁぁぁーーーーー!!!』

と叫んで、女は忽然と消えた。


僕は、納得のいかない安心感を得た。


一階に戻ると、リビングのテーブルには、清潔感のある女性が座っている。

髪は潤っていて、ショートボブスタイル。


丁寧にナイフとフォークを使って、ステーキを切っていた。


『なんか上で、騒いでいたけど、どうしたの?』と振り向いた女性は、とてもキレイな顔立ち、

キツネの様な顔をしているが美人だ。

化粧のニオイもしない。



僕は、その人を知っている事になっている、僕の彼女らしい。

「いや、なんでもないよ」


こんなキレイな女性が彼女なら、起きなくてもいいかなと思う。


"キレイだなぁ・・・・"と見とれる、自分の彼女のはずなのに。




ふっと、人の気配を感じて、割れた窓ガラスの方を見ると、


日本人ではなさそうなオジサン、黄色い肌の東洋人がこっちを見ている、

ハゲた頭に、薄い色のワイシャツ、ループタイのラフな恰好。

紙袋を持っている、その腕時計を見ると、高級そうだ。

お金を持っているけれど、物には執着心がないタイプの人だな・・・と思うと


僕は、"あ、この豪邸の家主か?"と「すいません、ここって・・・」と声をかけると、オジサンは、去っていった。


僕が行く勇気のない範囲の向こう側まで行ってしまった。


僕の彼女の設定の女性が言う『どうしたの?』

オジサンの事を説明するけど彼女には、見えなかったらしい・・・


『そんな事、ある訳ないじゃない、二人しかいないんだから』


彼女が笑った。

ニッコリと笑って見えた、歯の白さは、白の限界を超えていて、もはや、そこには何もない様にも見えた。



つづく。


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『アンデッドデイ』

2015-09-09 | 曼荼羅タイト
出来心だった、今では後悔しない訳がない。

深夜にランニングしている時、気になった空き家。


なんとなく、

なんとなくとしか言いようがない衝動。


二階建ての昔ながらの一軒家、庭もない、その家の横には、もう何年も乗られていない車が埃をかぶっていた。

とくにそんな事を考えて、じっと見た訳ではないけれど、ベランダまで登る経路が見えてしまった。

あのブロック塀に足をかけて、あのベランダまで手をひっかけて、登れば、ベランダまで入れるかなぁ・・・


何かを盗みに入った訳じゃない。

盗むものなどナイと一目瞭然の空き家だ。


僕は、何も考えないで、その経路を登った。

ボルダリングでも楽しむように、

ベランダにはあっさりと登って、窓に手をかけた、ガラリ。


開いた。




古びた畳の臭いが、新鮮な深夜の空気に混ざる、

(うわ、くさいなぁー)


そのニオイで、自分が何をしたか理解した、僕は、知らない人の家に勝手に入ろうとしているんだ、と。

でも空き家だ、盗む気もない、

少しだけ間取りを見て、玄関から出ればいい、それだけの事。




昔住んでいた家族や、これからこの家に幸せを持ち込もうとする家族には悪いけれど、スニーカーを脱ぐ気にはならなかった。

窓を全部開けると、その部屋は、寝室だった様に思える広さ、破けた押し入れ

立派な箪笥、一番下だけ、少しこちらに開いている、

傘を被った電球、そこから垂れる、色の判らない紐



入ってしまった。

一歩、


箪笥の、一番下の段が少し開いているのが気持ち悪かったので、つま先で蹴る。

ドン!

自分の蹴った音に驚いた。


その横には、カレンダーがあった。

1978年9月

カレンダーの製作会社は、間宮自動車と言う、地元の車屋さんだろうか?

(うわぁ・・・僕が生まれる前から、空き家なのかよ・・・)

この家に興味が沸いた。

その部屋を出ると、この二階には、他に二部屋ある様だったけど、他の部屋には入らず、階段を下りた、

真っ暗。


自分のスマートホンを懐中電灯モードにして、足元を照らした。


慎重に下りる。

階段を下りると、廊下は右側にL字に曲がっていた、懐中電灯で照らして見られる範囲では、右側に一部屋

奥の方には、台所などがありそうな部屋がある。


手前の右側の部屋のドアを横に滑らせて開けようとしたが、なかなか固くて開かない、力任せに一気に開けると、スタン!!と音がして開いた。




また違った部屋のカビ臭さが、二階とは違う異世界の臭いを感じさせる。


部屋を見回すと、

間違いなく1978年から、そこにあるであろう丸いちゃぶ台と、今では見られなくなったテレビ。

赤ちゃんが遊ぶ為の、ちいさな怪獣のおもちゃが転がっているし、周りには、茶碗なども転がっていた。


食べ物の腐敗臭なのか、嗅いだこともない気持ちの悪くなるニオイが酷いので、部屋を出た。

律儀に、ドアをしっかりと閉めた、パシャと閉めた瞬間に、その奥のテレビの電源が入った音がして、テレビから、おそらく当時のものであろう、テレビ番組の音が聞こえてくる。


(え?)と思うと、考えもせずに開けた、さっきの様な力は必要なくスっと開いた、そして目に飛び込んで来たのは、眩しすぎる光、そして『わぁー!!誰だ!お前は!!』と、大人の男の声

僕は、眩しかったので目を開けていられず、半分目を細めた状態で、相手を確認しようとしたけど、相手は『誰だ!!』ともう一度叫ぶ。



何かを投げつけられた、何か細い棒のようなもの、カラリと床に落ちる、箸か?

そんな事より、人が住んでいたんだ!と思って、謝るのが先だ、「スイマセン!!空き家だと思って!!」

相手は続ける、『泥棒か!!』

目が慣れてきた僕は部屋と相手を確認した、


さっき、本当に一瞬前までは、朽ちた廃屋だったけれど、今は、新しい訳ではナイが、1978年のそれだった。


(え?なんだこれ)


困惑している間に、『コノヤロー!!』と叫んで、その家主であろう人間が、僕に襲い掛かってきた、当然、僕も抵抗する。

(うわ!)っと思った瞬間には、その男を突き飛ばした、


男が転げる、転げて、頭をテレビにぶつけた。

テレビも床に転がり落ち、僕は、(見られた!!)と言う思いから、焦りが止まらない。


その男は頭を押さえながらも立ち上がり、僕を睨み付けた、自分の妻であろう女性の名前を呼びながら、僕を泥棒だ!と叫ぶ、

僕は、ちゃぶ台の上の瓶ビールを持ち、とっさに黙らせるために、その父親の頭にめがけて振り下ろした。


自分の腕にかかる負担の振動から、おそろしい骨の感触がした。

父親は、声も出さずに倒れた。



襖が開く。

女性と目が合った、

僕を見て、ビール瓶を確認し、自分の旦那であろう人間が倒れているのをみつけると、まるでサイレンの様に叫んだ。



その女性は、背中に赤子を背負っていた。

僕には不釣り合いに見えた包丁に、女性の腕の筋肉がギっと締まる。


普通なら、赤ちゃんを背負ったお母さんが包丁を持つのには恐怖心など感じないが、僕の今の状況からしたら、その包丁の使い道が自己防衛の道具に使われるのは容易に判断できる。

「そうじゃないんです!」と叫ぶと同時に、その母親は、僕に向ってきた『この、人殺しぃーーー!!!』



(う、わぁー!)と思った時には、僕は母親の腹部に強烈に踵を飛ばした。

ゲロを吐くような声を発しながら、母親は倒れ、赤子も泣き出した。


僕は、とっさに包丁を持ってしまい、もう仕方がない!として、母親の胴体に何度も何度も突き刺した。



転がる重い肉を何度も刺しているうちに、赤ちゃんの泣き声で(早く逃げないと!)と我に返った。



赤子は、倒れた拍子に母親から離れ、額を切り、大きく割れている。



倒れて死んだ父親を確認し、僕は包丁を床に捨てて、その家の玄関から、飛び出した。



飛び出して、振り返る。


(え?え?・・・)


僕が侵入した家には灯りがついていない、

冷静になれるはずがない、不可思議な事が起こり、人を殺した実感もある。

けれども、その家に、人がいる気配がないし、



この時間に、あれだけ、男が叫び、女が奇声をあげた、赤子も泣き喚いたが、近隣住民の家から、【何事か?】を確認する気配もない。

辺りを見回し、もう一度、その"空き家"に、玄関から忍び込んだ。


(え?・・・・)

灯りもついていない、人の気配すらない、それに、人が生活をしているニオイではなく、気持ち悪い腐臭しかしない・・・


僕は、何が起こったのか、判らないまま、その家を飛び出し、

全力で走って、家に帰った。







1978年9月9日、


間宮自動車の社員、土方正文さん(42)の妻・清美さん(38)が包丁で惨殺される事件があった。

お腹には、赤ちゃんもいたとの報道

夫・正文さんは、一命をとりとめるが半身不随

長男・一文君(2)は、額に大きな傷を残すも生存。











僕は昨日の人殺しを忘れられず、家に帰って来てから調べた事件だった

犯人は捕まらず、未解決のまま

何がなんだか解らない・・・。


僕の父親の名前は、土方正文、数年前にベッドで死んだ。

兄貴は、額に大きな傷のある、一文。

僕の四つ、上の兄貴だ。
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『本当に今日は、雨が降っているのか?』

2015-07-03 | 曼荼羅タイト
誰にでもコッソリ泣きたい日がある。

好きな音楽で泣くのがいい。

あの映画のワンシーンとか、言葉では例えられないその匂いでもいい、


何者でも、たまには泣く。


人間じゃなくても、なんでも、五月からポチポチ五月蠅かったハエでも小さな涙を流すんだろう。


僕ら人間は勝手にそれを見ないんだろう。

あまりにも小さな事を見ないんだろう。



でも、僕は騙されないぞ!

どうせお前だって、泣いているんだろう。



こんな風に雨が続けば、そう思う。


誰だって泣いていい、産まれた時点、自分が自分を見られるようになれば、既に自由。


嬉し泣きなら別だけど、どうも今回はそうじゃない。





結局、皆、他人の心配をよそに、優しく緩やかに曲がったステージの海に浮かんだ太陽を見て、『生きてて良かった』とか頭を白くする。


陳腐だけど、それでいい。

泣きたい理由

泣いちゃう理由


そんなものはみつからない。



人間は、言葉に出来ない事に直面したら泣く。

それは、産まれた時から、なんら変わらない。

知らぬ間に一年経ったら、同じ場所に戻って来ているらしいんで。
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『人生の愉しみの限界を、自分で決めない方が賢明』

2015-03-13 | 曼荼羅タイト
全てのジャンル。

全ての「それを好きな人」に語りたい。

解っているようで、解っていない、小さな事。


それは、【今の自分のBESTは、経験則によるもので、これから更新される】と言う事だ。


実際、更新されながら、【今のBEST】に辿り着いた訳で、これからの人生で【もう、これ以上のナニカはない!】と決めつけてしまうのは、あまりにも自分が可哀想。




高校生の頃に自分は、いつまで生きていないといけないんだろう?と言う不安な気持ちで秒針を睨み付けたあの日が、嘘のように

今の自分は、その秒針をジッとみつめて、「動くんじゃない!」、「時間よ、止まれ!!」なんて、無謀な願いに大切な時間を使う。


時と言うのは残酷な反面。

しっかりと使えば、自分の人生を『ほんの少しだけ』、楽しませてくれる。




高校生の時、部活の後にでも、仲間同士で食べたあのラーメン。

当時は、凄く美味しかった。

40歳の手前位になると、もう胃が受け付けない・・・・(笑)




あの時に一番旨かった、豚骨ギドギドはもう、自分の中の一番ではない。

確かに、たまに食べたくなる。


自分だって、そんな老人じゃない。

まだまだ、揚げ物も食べられる。



けれども、今の自分の好きなラーメンは、なんとなくアッサリした優しい、煮干の香りがする醤油ラーメンだったりする。



年齢や、『今まで体験したもの』で、自己ベストと言うものは塗り替えられる。





マジックを仕事にしていると、結構頻繁に『私の友達もマジックが出来るから、別にアンタのマジックは見なくてもいい!』と言う人がいらっしゃる。




そんな人にこそ、僕は、自分のマジックを見てもらいたい。

本当のマジックを見たことがあるお客様は、【今までに見たマジックがあるから、君のマジックは要らない】とは言わないと、僕は思う。



これは美的に解釈させようとしているかも知れないけれど、一部の人には理解してもらえると思う




【本当のマジシャン】を見たことがある人なら、『マジックが大好きになっている』

それが出来ていなければ、マジシャンではない・・・。



最初に見たマジックが、予想を超えなかった、だけの話しなのです・・・。








自分が好きな焼き鳥屋さん、

自分が好きなワインバー、


自分が愛した異性、


色々な事が、人生の中でアップデートされていきます。


その、アップデートを拒んだ時点で、人生は終わり。





人間は生きている間に、自分が許すなら無限に楽しめる。

色々な事を知れる。



聞いたことがない音楽に出逢えるし。

味わった事のない味覚を覚醒するかも知れないし、いつもの食べ物を新鮮に感じたりする。





少しだけ違った角度からみたら、その風景も素晴らしい自分だけの絵画になるかも知れない。





だからこそ、健康でいる限り【自分にとって、これが一番だぁ!!!!】なんてものは、決めない方がいい。

それを決めた上で、それを確信に掲げる為に他の物も許容範囲に許すなら別だけど。


自分の信じた物を壊されたくない為に、他の新しい刺激を排除するのは・・・、自分自信の時間を壊してしまう恐れがある。
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