日本人としてのアレ。

通りすがりで会ったなら、その出会いを大切にしたい

『午前2時57分の小学生』

2013-01-09 | オカルト
僕には霊感がない。

ある人は、霊感のない人間なんていないと言う。

それならば、僕にはもう少し霊的体験を話せる機会があってもいいものだと不公平ささえ感じる。

勿論それは、霊体と言うものを信じているからだ。


今まで、「簡単な金縛り」さえ体験したことがない。

怪談が好きな仲間が集まり、皆が怖い話を持ち寄って、お酒を飲む席に顔を出すのが、申し訳なくなる。

それは、僕が「ただ聞く事しか出来ない」という立場だからだ。


「えー?!」と身を引きながら驚き、怖がって、僕がその話しに興味を持てば、話してくれた人は、満足するかも知れない。

しかし僕は、自分でも怖い話をしたいのだ。


悪趣味と言われるかもしれないが、人を怖がらせたい。

怖がらせると言っても、例えば話しの途中で、大きな声を出したり、出来過ぎたオチを用意するつもりはない。


地味だけれども、忘れられずに、聞いた人が淡々と誰かに話したくなる様な、そんな静かな怖い話し。

そんな話しが出来る人に憧れる。


今から聞いていただく話しは、そんな風に感じてもらえれば有難いのだが、そこまでには至らないと自覚している。

もし良かったら、聞いていただきたい。


時間は夜中だった。

怪談が好きな人間の借りる映画は、だいたいがホラー映画だろう、僕もそう言った人間だ。

昼間ならお笑いのDVDで笑い、ストレスを解消する気になるが、夜中に一人でホラー映画を観ている時ほど、ストレスの解消にはならない。

その日観ていたDVDは、観終わったら、直ぐに返却する必要があった。

午前二時を少し過ぎたころ、その映画自体は特に印象のあるものではなかったが、夜中の暇潰しにはなった。


季節は、そう寒くない時期だった、家を出る時にジャンパーを着るか、迷った記憶がある。

車で移動しない限りは、ジャンパーを必要とする季節だったと思う。

時間も時間だ。


車を少し走らせて、到着した。

レンタルDVD屋の営業時間は終わっていた。

店の外に置かれた、青い鉄のポストの様な箱にDVDを投函する。

ガコン、と音がして返却を終える。

昼間では、近くに高校もあり、人通りのある道だが、夜中の二時ともなれば、簡単に人とはすれ違わない。

すれ違う人がいるならば、警戒するべき時間帯だ。


エンジンをかけたままの車に乗り込んで、後方確認もせずに車を走らせた。

直ぐに、十字路に差し掛かる。

左に曲がれば、自分の家に帰る方向、曲がった直後には、小さな個人営業の焼肉屋がある。

紫色の趣味の悪い看板に、薄汚れて古びだ中国風の店内、よくこんな所で肉を食べる気になるな、と思う。

無論、今は営業後だ。

そちらへ曲がって少し行くと、新築が立ち並ぶ住宅街になる。


しかし僕は帰宅方面には曲がらず直進した、少しお腹が空いていたので、牛丼でも買ってから帰ろうとしたのだ。

直進した先の左側は駐車場、右側は木の壁で囲まれた敷地の広い建物があり、実際そこが人家なのかは不明だ。

入口は見当たらない。


特に何も考えて走ってはいなかった。

だから突然だったのだ、左の歩行者に気付いたのは。

ランドセルを背負った短パン姿の少年。

表情はどことなく、寂しそうだった。

僕は、「何か、悪いことをして閉め出されたのか?」と思った。

昔、自分でも経験がある、今でこそ、自分の家の前で泣きじゃくる子供はそう見ないが、昔は玄関の前で「ママー!許してぇ!!」と言いながら泣いていた。


しかし、子供が閉め出されるような時間ではない。

車の時計を見た。

デジタルの数字がオレンジ色に「2:57」と示していた。


そこで、何秒か、思考が止まった様な、高速回転した様な、なんとも言い難い「胸騒ぎ」を感じて、車を急停車させ、サイドミラーを確認した。

確かにランドセルを背負った小学生だ。


どう言った事情があるにせよ、僕はその子に「何があったか?」聞きたくなった、場合によっては保護をして、警察に届けるべきだろう。

駐車場でUターンをする為に一瞬、小学生から目を離した。

そして、小学生の方に車を走らせてみても、彼の姿はなかった。


僕には霊感がない。

彼が、霊体の筈がない。

慌てて車を飛び出して、住宅地がある方に走った。

彼が無事に家に帰れれば、それに越した事はない。

しかし、言うまでもなく姿はない。

車をバックさせる為の一瞬、その一瞬の隙に隠れたのだろうか?

確かに、警戒をする時間帯だ。


僕の事を、誘拐犯などの類と判断して隠れたなら、その行動は正しい。

しかし、その駐車場の車の死角も僕は見た。

その小学生からしたら僕は「逃がさないぞ!」とでも言いそうな勢いで、彼を探したのだ。


違う方向に向かったのだとしたら、隠れる場所は一切ない。

木の壁に、開かれた道、もっと遠くにある住宅、小学生がランドセルを背負いながら到着する時間はなかったと思う。


ハッキリと見たランドセルを背負う小学生の姿、そして何故か寂しそうに見えた彼の表情。

しかし、彼の顔は、まったく思い出せない。




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2 コメント

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はじめまして… (おばびん)
2013-01-12 05:38:54
mixi経由で来ました。

すっごい怖いです

ご近所さんのようなので
レンタルビデオ屋さんの場所の見当はつきます。
例の場所まではわかりませんが
その辺りにはもう怖くて行けません。
返信する
Unknown (ボンクー)
2013-01-17 15:23:59
コメント有難うございます!
凄く嬉しいです!!

某レンタルDVD屋さんは、イニシャル『G』です(笑)

夜中は、気を付けましょうね♪
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