北海道で生まれ育ったからといっても、雪だるまが上手く作れるとは限らない。
北海道で生まれ育ったからといって、寒さに強いわけでもない。
春だというのにレッグウォーマーをつけて、トレーナーの上からセーターを着て、足を湯たんぽで温めながら、今日も仕事をした。
そして北海道に生まれ育ったばかりに、学校で『君が代』を歌うこともなく大人になってしまった。
小学校教師の父とその仲間たちが酔っ払って、うちの二階でギターを伴奏に歌っていたのが『友よ』。
あと、『風』。
『バラが咲いた』。
父の十八番は『ダイアナ』。
そばで聞いていた僕も、すっかり歌えるようになってしまった。
近頃は思い出したように『The Rose』をカラオケで歌う。
組合運動に参加していた左翼の父は、平成の代替りの恩赦のおかげと周囲の応援もあって、小学校の校長になる事ができたという。
しかしその後、小学校で『君が代』が歌われたのかどうかは知らない。
息子の僕も薄情だ。
『愛』の歌は好きなのに。